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第伍什弐話 何処の世界でも悩みは尽きない

「あ~いい湯だった。」

今は温泉から上がり、部屋のベランダで休んでいる。ここは、旅館の裏の森がよく見えて森の匂いをたっぷり含んだ風が心地良く吹いてくる。

「いやぁ…やっぱり自然は良いなぁ…日々の生活で疲れた心に癒しをくれる。」

と、そこに浴衣姿の士郎が帰ってきた。

「まだ起きていたのか。」

「士郎。」

「夜風に当たるのも構わんが、支障の出ない程度にして置けよ。」

「ああ。解ってる。じゃあ、また明日。」

「うむ。ではな。」

そう言って襖を開け、隣の部屋に消えた士郎。灯りが消える。と同時に辺りには暗闇だけが広がる。

正直、自然も好きだが、何も無い暗闇の方が好きだ。暗闇の中だと、誰からも認知されず、他人を気にして気を張り詰める必要も無い。

…いつからだろうか。他人とのコミュニケーションに疲れたら暗闇を探してしまうようになったのは…

しかし、ずっとその場所に留まっているわけには行かない。いずれ、誰かが入ってきて、光を灯す。そして、その灯りには人が自然と集まってくる。でも、その人の集まりを観察するのも嫌いではないのだ。

そんなことを思いつつ、ふと頭に浮かんだことを口に出してみる。

「…自分はこれからどうすれば良いのか。成り行きでここまで来てしまったが、これが終わったらどうなるのだろう…」

正直、この辺の不安は消える物では無いと思う。でも、一度死んでいるのにも関わらず、異世界に飛ばされてまで生かされてるんだ。やれるだけのことはやってみるさ。

「今日はもう寝るとするか。これ以上風に当たってると風邪を引きそうだ。」

今現在抱えている問題のことはいずれ解決するだろう。それまではこの変な世界で過ごすとしよう。

「お休み、三人共。」

それだけ言い、狼の声を子守歌代わりに眠りについた。

第伍什弐話 何処の世界でも悩みは尽きない 完

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