第伍話 村長と仕事
「なあ、シエル。」
「はい、何でしょう?」
「村長さんがいるのは村の奥と言っていたが、この村は大きいのか?」
シエルは手を広げ
「いや、王都に比べるとかなり小さい村ですよ。」
王都があるのか。さぞかし大きな街なのだろう。
「王都、とは?」
シエルは恐らく北を指差し、
「村の北にある街です!たまに野菜を売りに行ったり、行商の人が来ますよ!」
こっちの世界にも東西南北があるみたいだ。俺が最初に居た森は…王都と真逆だから南側か。
「あっ、村長の家が見えましたよ!村長さ〜ん!」
お、着いたか。
見えた先にはシエル家より少し小さいくらいの茅葺きの小屋が立っていた。
「おう、いらっしゃいシエルちゃん。ん?その御仁はどなたかの?」
すぐ隣の畑では見た目50歳ほどの老人が鍬を持って畑を耕していた。
「こんにちは。俺は荒神月斗。実は斯々然々で…」
今ここにいる経緯、シエルの家でお世話になることを話した。
「ふむふむなるほど。そんな理由が…」
村長さんは少し考え、
「よしわかった!君をこの村の一員として認めよう!」
よかった、村に住むことを許されたみたいだ。
「でも!」
…でも?
「この村に住む以上、仕事はしてもらうぞ。」
「仕事の内容は?」
「ふむ…それは君のスキルの内容で決めよう。」
スキ…あっ、スキルのことを完全に忘れてしまっていた。
「スキルってどうやって確認するんですか?」
「『魔力紙』という物があって、そこに自分の魔力を注ぎ込むとスキルが表示されるんですよ。」
長老は家の中から麻のような紙を取り出し持ってきた。
「これが魔力紙じゃ。」
「魔力はどうやって注ぎ込むんですか?」
「こう、力を流す感じで。」
「こうか?」
取り敢えず言われた感覚でやってみると――
第伍話 村長と仕事 完