第参什弐話 旅の道中でのこと
「お〜い。エリナ〜試合終わったぞ〜…って見てたから知ってるか。」
「お疲れ様なのじゃ♪」
「うわっ、いきなり抱きついてくるなよ。まだ風呂に行ってないから、汗でベッタリだぞ?」
タオルで拭き取りはしたが、まだ体が火照っており、少し汗は出ている。
「別にその程度のこと妾は気にしないのじゃ♪」
「…ん?今お前自分のこと『妾』って言わなかったか?」
「あわわ、い、今のは忘れるのじゃ!わ、我は我なのじゃ!」
耳を真っ赤にしつつかなり慌てて隠そうとする。
どうやら『我』は建前上の呼称で気が緩んでいるときは『妾』が出てしまうみたいだな。やはり王族か。
「そ、そんなことよりお主らは一体何をしに来たのじゃ?」
「ああ、旅の道中のことなんだが、さっき俺に剣を習ってみてはどうかってお前言ったよな。」
「んう?そんな事我は言ったかの?」
覚えてないんかい!確かに俺に公言した後、俺を突き飛ばしただろ…
「ま、まあ言ったとして、旅には誰か付いてくるのか?」
「ああ、東の国の出身の剣士を案内役として一人同行させようと思っておる。」
「じゃあ、そいつに旅の道中で剣を習うことって出来ないかな?」
「おお、それは良い。ただし本人に聞かないとわからんがな。我の方から相談しておこうか?少しは顔が利くはずじゃ。」
「ああ、それはありがたい。じゃあ、エリナに任せるとするよ。」
「任されたのじゃ♪」
「で、旅の準備はどれくらいで終わるんだ?」
「あと2日ぐらいじゃ。」
「じゃ、それまでのんびりするとしますか。」
「おう、のんびりしておれ♪」
◇ ◇ ◇
さて、のんびりする、とは言ったものの何をして時間を潰そうか…
「あの…月斗さん。ちょっと良いですか?」
「ん?どうしたシエル。」
「あの…さっきの試合を見てて思ったんですけど、旅をするってことは途中で戦闘があるかも知れないってことですよね?」
「ああ、そういうこともあるかもな。」
「そうなった時に私だけどうしても足手まといになってしまうかも知れないと思って…」
「いや別にシエルは回復が使えるからそんなことにはならないんじゃないか?」
「だから、私、弓を練習します!」
「え…?」
第参什弐話 旅の道中でのこと 完




