第参什話 手合わせの決着
「月斗〜。準備が出来たのじゃ〜」
「おう、今行く。」
手にガントレットとレザーの装備の支度を終えた時、エミリアが呼びに来た。
「大丈夫ですか〜?」
エミリアさんは俺の心配をしてくれるようだな。俺を期待の目で見るシエルとは違うな…
「う〜ん…結構自身がないけどやれるだけやってみる。」
「無理はしないでくださいね!」
「おいおい、焚き付けたのはシエルだろう…」
「ところで月斗。」
「ん?」
「お主、戦闘時は何を使っておるのじゃ?見た所何も持っておらぬようじゃが…」
「ああ、それなら俺が使うのはこの両手だ。」
「何?お主まさか剣相手に拳だけで対抗しようというのか!?」
「だって俺、剣とか槍とか使えないし…」
「ふむ…それでは怪我が多いだろう?この機会に剣を教わってはどうじゃ?」
剣か…確かに使える獲物が多いに越したことはないし…それに拳だと長柄や飛び道具、魔法とかのリーチの長い相手には不利だしな。
「わかった、ありがとう。この手合わせが終わったら少し習ってみるよ。」
「よし!その意気じゃ!行って来い!」
「うおっ!?」
ドスッ
「いてててて…」
激励されたと思ったら闘技場に突き落とされるとは…
「おい、危ないだろ!」
「すまんすまん。じゃ、頑張るのじゃ〜!」
おいおい…お転婆な王女だ…。
「話は済みましたか?」
声の方を振り向くと右手に盾を、左手に剣を持っているベリルが立っていた。
「ああ、待たせたな。」
「では…参ります!」
「ッ…!速い!」
掛け声と同時に高速で突っ込んできたベリル相手に俺は後ろに飛び退くことしか出来なかった。まるで悪漢を相手するかのようで先程までとは顔つきがまるで違う。
「ふッ!」「ぐっ!」
一撃を避けたと思ったら間髪入れずに次の攻撃が飛んでくる。前の盗賊なんかとはまるで違う。
「流石…だが、俺も負けっぱなしじゃ居られない!」
そう叫ぶと手を下に付き、逆立ちのような状態で足の装甲部分で剣を弾き、仰け反ったところにアッパーを叩き込む。しかし、ギリギリで盾の端で防がれてしまった。
「まだまだァ!」
「!?」
拳で剣を受け流しつつ、盾の隙間を狙って一撃叩き込むチャンスを探す。しかし、そこは騎士団長。
なかなかに隙がない。
「そろそろ終わりにしましょう!」
「何!?」
そう言うとベリルは一瞬で俺の目の前から消えた。
次の瞬間
「!?」
俺は地面に尻餅をつき目の前にはベリルの剣が突きつけられていた。
「…完敗だ。」
「有難うございました。久しぶりに楽しかったですよ♪」
そう言ったベリルの顔は試合前の楽しそうな顔に戻っていた。
第参什話 手合わせの決着 完




