第参話 村と姉
森を抜け小高い丘から見下ろした景色は
恐らく現代の日本ではほとんど失われてしまったであろうほどに優美であった。
少し見下ろしたところに集落らしき建物の集まりがある。
あれがモクラド村だろう。
シエルに案内され村に着いた。
「じゃあ、まず私の家に向かいましょう!」
そう言いながら彼女は村の半ばにある一軒の家に向かった。
「ただいま~」
「あら、おかえりなさい」
家の奥から声が聞こえた。一人暮らしでは無いようだ。
「誰かいるのか?」
「ああ、私はお姉ちゃんと二人で暮らしているんです。」
そんなことを言っていると家の奥から白髪ショートの年上であろう女性が出てきた。
「お帰り、シエル。あら、その方は?」
「この人は月斗さん。森の中で出会ったんです。」
俺は宜しくと言い自己紹介をして、ここにいる経緯と行く宛がないことを話した。
「あら、これはご丁寧にどうも。私はシエルの姉のエミリアです。」
その時ずっと何かを考えていたシエルが何かを閃いたように目を輝かせ手を上げた。
「はいはいは〜いっ!」
「どうしたの?シエル」
「月斗さんは行く宛がないんですよね?」
「あ、ああ、そうだな。」
「だったら私達の家に一緒に住みませんか?」
「え?」
俺が理解出来ない様子でいると、エミリアさんが
「いいわね、それ」
「ええ?」
「いやいや、ちょっとまってくださいよ。得体のしれない俺を泊めていいんですか?」
俺の頭の中には「?」←所謂クエスチョンマークが大量に踊っている。
「いいですよ。ぱっと見悪い人ではなさそうですし」
とエミリアさん。立て続けに
「ここに来るまで話してて悪い人じゃなかったですし」
とシエル。
その後五分ほど話してはみたものの諦める気はないみたいだった。
だめだ…口ではこの姉妹には勝てない…
そう思った俺は思いがけず住む場所を得たのだった。
第参話 村と姉 完