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第弐什捌話 王の頼み事

「お主らが我の気に入った芋を作った者か?」

扉が開き部屋に入るなり、そう問うてきたのは玉座に座っている王様…ではなく、その隣にいる身の丈に合った白いドレスを纏った見た目小学生の少女だった。

「え…?」

「これ、まずは言うことが違うだろう。済まなかった。我が娘の無礼を許してくれ。」

「む〜」

流石にこれは驚いた…一度に入ってくる情報量が多すぎる。

「あの…これは一体?」

「ああ、済まない。自己紹介が遅れたな。私はベルセリオスⅡ世。正式な名前もあるが…長ったらしいので覚えなくてもよいだろう。そなたらの名は?」

「あ、え、俺が荒神月斗で、月斗が名前です」

「私がシエルです。こっちが私の姉の…」

「エミリアと申します。」

「そうかそうか。月斗というのか。では月斗、一体どのようにしてあの芋を作ったのだ?なにかスキルを使ったのか?それとも…」

名前を言うなり唐突に質問攻めを仕掛けてくる少女。まだお前の名前すら知らないんだぞ…

「少し待ちなさい。ほら、お前も自己紹介をせんか。」

「は〜い。コホン。」何かを仕切り直すように咳を一つした後、自己紹介を始める少女。

「我の名はエリナ。ベルセリオスⅡ世の娘じゃ。騎士団団長の持ってきた芋を食したところ、大層好みだったのでお主らを呼んだ、というわけじゃ。」

「成程…」王様が一介の農家の芋なぞ気に入るわけがないと思っていたが…好まれたのは娘の方だったか…

てか、これが俗に言う『のじゃロリ』なのだろうか?というより、何か違和感があるな。

「で、本題は何なのでしょう?」

「おお、そうだったな。私もあの芋を食したのだがなかなかに美味で、もう一度食べてみたい、と思ったのが一つ。」

「はぁ…」

「もう一つがこのエリナの願いなのだが…」

「我は東の国の食物も好きなのだが、こちらではなかなか手に入れにくい。そこで、このような芋を作れる者たちならば簡単に作り出せるのではないかと思ってな。」

あっ、違和感の正体は俺たちは騎士団団長には会ったことなどないことと、芋を売ったのは酒場だけだったってことだ。

「成程…事情はわかりましたが、騎士団団長、とやらに芋を渡した覚えはないのですが…」

「ふむ、では確認を取ってみるか。おい、ベリルを呼べ。」

「はっ。」王が兵士に合図を出す。そこで、現れたのは…

第弐什捌話 王の頼み事 完

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