第弐什話 謎の少女との出会い
「ここがいつもお世話になっている酒場です!」
シエルに案内されて着いた酒場はかなり大きいとは言えないが、なかなかに繁盛しているようだった。
「じゃ、野菜を下ろして持っていこう。先に行っててくれ。」
俺は芋の入った木箱を持ち、酒場に入ろうとした。
「よっこらしょ…」その時、
「うわあああああ〜!」
酒場の左にあった坂の上から大きな声が響いてきた。
「何事d…」
ガシャ―――ン
「いてててて…またやっちゃった…」
ムニッ
「? 何かがおしりの下に…?」
「うーん…何なんだ一体…」
「うおおおおおお!?」「きゃあああああ!?」
「ごめんなさいごめんなさい!大丈夫ですか!?」
「落ち着いてくれ!気づかなかった俺も悪いから!」
「いやいや、貴方は悪くないですよ!坂の上から落ちてきた私が悪いんです!」
「とにかく!とにかく落ち着いて!」
「すいません!すいません!あっ、もうこんな時間!私もう行かなきゃ!本当にすみませんでした!」
「あっ、ちょっと…」
そう言うと謎の少女は城の方へ走って行ってしまった。
「名前も聞いていないのに…」
大きな音は酒場まで響いたようでシエルが酒場から出てきた。
「何かあったんですか?」
「ああ、坂の上から大きな音がしたと思ったら少女が落ちてきて、城の方へ走り去って行ったんだ。」
「へぇ〜、不思議なこともあるもんですねぇ。」
路上に散らばった芋を集め、かごに入れる。
「さて、さっさとこれを売ってしまおうか。」
「そうですね!先に運んだものはもう換金しましたし、後少しですね!」
芋の入った籠を持ち上げ、酒場の人に重量を測ってもらう。
「1.9キロですね。」
「あれ?なんか減ってないですか?最初は2キロでしたよね?」
「さっきの衝動で飛んでいったのかもな。」
「まあ、良いでしょう。たった100グラムですし。」
「よし、換金も終えたし帰るか。」
「はい!帰りましょう!」
俺の初めての王都訪問はこんな感じの騒動アリで幕を閉じた。
第弐什話 謎の少女との出会い 完




