第七十四話『別格』
「圧倒、した……」
「……これが、あやつの忘れ形見の力か……いい弟子を取ったものだ」
地の利を掲げ、強敵を相手に蹂躙したロイド。その姿は、まさしくカヴォイたちが求めた軍師の姿と合致していた。
「……これくらいで称えるなよ。お前たちを前に俺は一度無様なミスをしてるんだからな」
しかし、当のロイドは喜びを見せず、只淡々とそう答える。そこにあったのは、深い反省の念のように思えた。
「……ただ、師匠の教えを否定された。……俺が冷静に立ち返れたのは、それに対しての怒りで冷静になれたからってだけだ。理想の軍師……師匠の背中には、程遠い」
目を伏せ、ロイドは悔しげに唇をかむ。そんなロイドに、リベルは腕を組みながら、
「……いや、あやつも結構焦る時は焦って居ったぞ?」
「……は?」
「読み違いもするし、仕込み不足だってする。それら全て、あやつは焦りながら対処しておったな。……まるで子供のような、楽し気な笑顔とともに」
懐かしい記憶を掘り起こすかのように、リベルは軽く微笑みながらそう告げる。もういない軍師を見つめて、リベルは彼に最大の敬意を向けていた。
「……師匠と、知り合いなのか?」
「知り合いどころの話ではないな。あやつとは三十年を優に超えての付き合いだった」
「三十、年……⁉そんな、いや、まさかあなたは……」
リベルの発言に、ロイドが何かを気付いたような表情をする。信じられないような顔のまま、ロイドはその真実を問いただそうと、して――
「……はいそこ、静かにしようね?」
……背後で膨れ上がる魔力の気配に、この場にいる全員が総毛立った。
「なん、で……‼」
「……避けろぉッ‼」
事態を理解する暇もなく、カヴォイたちは横っ飛びで放たれた一撃を回避する。すべてを貫く光の刃……それを生み出せるのは、この場所に一人しかいない。
「……なんで、貴様が生きてるッ‼」
「なんで……か。いいよ、解決編をしてあげよう」
涼しげな顔をして、カヴォイたちにそう答えてみせる少年。その姿に、火傷の痕どころか炎が燃えた後すらも見つけることはできなかった。……そして、その腕には、気絶しているのであろう紫炎が担がれている。
「『スペル・ディスターブ』とやらは、特定の生命の魔力を認識してそれを阻害するようにできているようだった。……だからさ、強引にその対象を書き換えたんだ。紫炎の魔力をちょこっと拝借して、ね」
その理屈に、言葉が出ない。……他人の魔力を、利用?そんなこと、権能でも使わなければ不可能だ。それを、こうも簡単に……?
「僕らに不可能なんてないさ。なんたって、僕と紫炎は絆でつながれているから。絆の力に、出来ないことなんてないだろう?」
「……搾取と利用を、絆とぬかすか……」
「いいじゃないか。絆の力で悪は打倒される。そう聞けば、英雄譚もかくやの名場面だろう?」
「……腐れ外道が」
あくまでにこやかな少年に、リベルは強い嫌悪感を叩きつける。それは、普段見せない怒りの感情でもあった。
「……まあ、そんなにピリピリしないでよ。……絆の力、見せてあげるからさ」
枷から解き放たれた少年が、再び光の矛を構える。それは、絶対の再来。
――蹂躙劇が、再び幕を上げようとしていた。
だんだんと互いの力量が見えてきましたが、戦いもついにクライマックスです!どんな結末をたどるのか、どうぞ次回以降をお楽しみにお待ちください!
――では、また明日の午後五時にお会いしましょう!




