第五十七話『集結(1)』
――リヴィが動けなくなった後も軍の勢いが変わらなかったのは、半ば奇跡と言っていいだろう。
「進め進め‼リヴィの頑張りを無駄にするな!」
「ここで死なせたらアイツになんて言われるか分かんねえぞ‼」
怒号のような激励が飛びつつも、進軍するスピードは変わらない。足を止めず、むしろ加速していくその姿は、ロイドの手勢を威圧するのには十分だった。
「かなり上まで来た……これなら……‼」
どうやらあの男がカヴォイたちを仕留める算段だったのか、それ以降は特に強敵もなくカヴォイたちは敵本陣へと駆けていく。カヴォイの風のサポートもあって、もはやそのスピードに追い付ける者はいないといってよかった。
高台からの射撃をかいくぐりつつ、カヴォイたちは階段をひたすら駆け抜ける。リベルとの合流地点も、全ての難関を乗り越えたその先にあった。
「ロイド様の戦略が完成するまで時間を稼ぐのだ!あの方の覇道を邪魔させてはならぬ‼」
しかし、ロイドの手勢もタダでやられてくれるわけはない。今のところカバーできているとはいえど主戦力の一角を欠いたカヴォイたちが崩れるのには、些細なきっかけすらも必要ないだろう。
(あいつらの何かが変わるだけで、僕たちは簡単に行き詰まる……‼)
文字通り、今の快進撃は奇跡なのだ。ほんの少しの振動で崩れる、砂野の城ですらない薄氷の優位。しかし、それを取り落とすわけにはいかないのだ。
「……風よぉぉぉぉッ‼」
故に、カヴォイは吠える。この好機を取り落とすまいと、仮にやり直せたとしても二度とこないであろう今という奇跡に全力で寄りかからんと、風の衣で軍を包む。この戦況の流れは、確実に今カヴォイに向いているのだから。
「一度だって止まるな!……止まらなかった先に、僕たちの勝利はある!」
気持ちが逸るせいか、カヴォイはいつの間にやら先頭に立って軍を導いている。背中を押す風でいいと思っていたはずなのに、やはりそうしなければ将の器足りえないのかもしれない。将の器など、もともと自分にあるなどと思ってはいないが――
(……今だけは、思い上がらせてくれ)
カヴォイは将足りえる存在だと。かつてリベルを支えた右腕、その弟子を超えるなどという大言を実現できるだけの力があると、そう思わせてくれ。本当ならば、カヴォイはロイドと同じステージに立つことすら許されないのだから。
――だけど、今日だけは、並べると思い込む愚行を許してほしい。そう思わなければ、奇跡すらも起こりはしないのだから。
――ありえないと誰もが考えていた奇跡の戦況は、今ここに生み出されているのだから。
「……皆、もう少しだ‼」
勝利の足音を聞きながら、カヴォイは叫ぶ。その足を止めることなく、一歩一歩、ロイドのいる本陣へと駆けだしていく。
奇跡を奇跡のままで終わらせてもいい。百万分の一が今だったとしてもそれでいい。欲しいのは今の勝利で、優秀な軍師で、そして――
「……いずれ誰もが覚えることになる、逆襲譚の第一歩だ‼」
そう叫ぶカヴォイの正面に、ついに大仰なつくりのドアが目に入る。カヴォイたちの新たな栄光は、きっとその先にある。そう確信して、カヴォイは皆の先陣を切る――
「……悪いけど、その歴史はありえざるものなんだよな」
けだるげな言葉とともに、カヴォイの眼前を白い光が覆った。
ついにカヴォイとリベルの戦いも最終局面です!第三勢力の介入も相まってさらに混とんと化する戦場、最後に笑うの果たして誰なのか!
――では、また明日の午後五時にお会いしましょう!!




