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この部活は何かがおかしい!  作者: 高坂あおい
8/60

このバーベキューは何かがおかしい! 2日目

「お前らー! 起きろぉー! もう九時だ!」


 「自由部キャンプ」2日目。

 俺たちは部長の大声によって無理矢理起こされた。


「なんなんですか、もう。朝なんだから静かにしてくださいよ」

「この馬鹿野郎! 昨日の夜に『明日は山を散策する』って伝えてあっただろ!?」


 そういえばそんなことを言っていた気がするが、正直面倒くさいし、朝はゆっくり寝ていたい。


「まったく、朝から何をしているのかしら? テントの中まで由宇の声が響いてきたんだけど」


 俺と同じく部長の大声の犠牲となった彩乃先輩がテントから出てきた。

 というか、この人も昨夜部長と今日の予定を練っていたはず。  何故、予定を決めた本人が後から起きてくるんだ。

 それはさておき、一様にダラダラとテントから出ようとしないメンバーに痺れを切らした部長が再度叫ぶ。


「この馬鹿犬ぅ! この散策は自由部のキャンプをキャンプたらしめるものとして、とても重要なものだ。だから、早く顔を洗ってこい!」


 俺たちがいつから部長の使い魔になったのかは気になるところだが、今はこの無意味な散策を阻止する方が先決だ。

 一旦俺と彩乃先輩はそれぞれのテントから出て、部長の元へと向かう。

 そこで俺は気づいてしまった。


「部長、あの太陽の位置って……」

「ああ、今は九時だ」

「部長寝坊してるじゃないですか!?」

「仕方ないだろ! 昨日はいつもよりも寝るのがだいぶ遅かったんだ!」


 確か、昨日寝る前に時計を確認したら十時を少し過ぎたぐらいだったはず。


「あの……部長っていつもは何時に寝てるんですか?」

「九時だ」

「そうそう、由宇は背を伸ばすために朝は必ずセ○ビックを飲んで、夜は早寝なのよね」

「あっ! おい、それは誰にも言わない約束だろう!?」

「あれ? そうだったけ?」

「そうだよ! 翔真、今の話は忘れろ!」


 効果が出ているのか、というのはさておき。

 部長の努力が垣間見れたところで、彩乃先輩が締めに入る。


「話がだいぶ逸れたから戻すけど、今日の散策は無しでいいわね? そもそも、高校生三人で山の中を歩くなんて危険すぎるわ。行方不明になったりでもしたら、それこそ大変よ?」

「むぅー。わかったよぅ」


 俺たちの平和が守られて一安心……はできない。


「ちょーっと待ったーー!」


 長らく聞いてなかったような気もするこの声。

 声の発生源らしいテントへと視線を向けると、寝ぐせのついたザ・寝起き遥がこちらをにらみつけていた。


「私のことを忘れないでよ! なんで誰も起こしに来てくれないの!?」


 昨日は早いうちに寝てしまった上に、部長のあの大声で一人起きてこなかったから完全に忘れていた。

 遥の怒りは加速する。


「もう、しかも三人って! 私はどこに消えたのよぉ!」

「ご、ごめんなさいね……でも、わざとではないのよ?」

「ぐぬぬぬ。こうなったら、本格的にヤンデレになるしか道はないのか」


 お願いだからやめてください。なんでもしますから。

 遥のヤンデレ化は俺の土下座と謝罪によって防がれた。


「さぁ、みんな起きてきたことだし、片付けでもするか」

「「「おー…………」」」


 予期せず始まったキャンプだったが、楽しかった。

 今度はもっと予定を立ててから、来てもいいかもしれない。


「ちょっと待て翔真。何か早とちりしているようだが、キャンプはまだ終わってはないぞ?」

「えっ?」


 俺の思考を読んできているのがすでに早とちりような気もするが、今度は一体何を言い始めるのやら。


「家に帰るまでがキャンプだ。帰りもいろいろなところに寄っていくぞ」


 聞き慣れたテンプレのような言葉だが、間違ってはいない。

 たまにはまともなことを言うんだな、と少し部長を見直す。


「ところで部長。お金を持っているんですか?」


 部長は得意げな顔で――――


「持ってるわけないだろ」

「は?」


 なぜ言い出しっぺが金を持っていないんだ。

 もはや見直したことを見直さなければならないのか。


「は、ってなんだよ。なんでたかがキャンプに金を持ってこないといけないんだよ?」


 いや、こっちのセリフだよ。


「じゃあ、由宇はいろいろなところに寄って何をしようと思ってたの?」


「何かを食べてる人を観察したり」

「「「迷惑っ」」」


「とりあえず、水を飲んで居座る」

「「「もはや嫌がらせの領域」」」


 部長がやろうとしてたことって店員が嫌う客の典型的な例じゃん。

 俺が店員だったら、速攻で出禁にするレベルだ。


 こうして意見を出しているうちに何かを思い付いたらしい。


「金を持ってる誰かがあたしたちに奢れば良くね?」


 この流れはよくない、と直感的に感じる。


「彩乃は?」

「帰り電車代しかないわ」


 が、どうしようもできない。


「遥は?」

「私も電車代しか残ってませんよ」


 退路が一つ、一つと潰されていく。


「翔真は?」

「……帰りの電車代を引いて残り四千円くらいですかね」


 結局はこんなもん。

 あらかじめ覚悟をしておいた分、精神的なダメージは少ない。

 財布のダメージはとてつもなく大きいが。


「これはもう、翔真で決定だよなぁ」

「ええ、そうね」

「さすが翔真! 太っ腹!」

「…………まったく、今回だけですよ?」

「「「やったー!」」」

投稿ペースが遅いのはいつものことですけど、今回は仕方なかったんですよ、すいません。

少しでもいいなって思ったら、この小説を広めてやってください。お願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 部長と主人公が好印象。部長が残念すぎる(笑)。主人公が不憫すぎる(笑)。楽しそうな部活の雰囲気が伝わってきました。 [気になる点] 部長と主人公以外の人物の印象がやや薄い気がしました。
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