好みの認識はどこかおかしい!
「熟女って言葉があるだろ?」
「その言葉から始まる会話ってあるんですね」
本日の部室には遥、彩乃、由宇という珍しいメンバー。
翔真は妹の凛と夕飯を食べに行くらしく、この場には居ない。
この場にいない人間のことはさておき、遥にまでこんな話題を提供する由宇は今日も絶好調である。
「まぁまぁ、落ち着いて聞いてくれ。あたしは昨日風呂に入っている時にふと思ったんだ。『実は熟女というジャンルは過小評価されているのではないか……?』と」
「そうなんですか?」
これからの会話の展開をあまり予測できていない遥が反応してしまったことにより、この話題が続くことが決定。
ラノベを優雅に読んでいる彩乃も思わずため息を漏らしてしまう。
その様子が視界の端に映っていたはずなのに、由宇は全く気にすることなく、大袈裟に頷いて続ける。
「ああ。例えばなんだが、熟したイチゴと実になりたてのイチゴだと、どっちが甘い?」
「それは……熟したイチゴ……です」
「だろ? 若いと酸っぱいんだよ。逆に歳を取ればとるほど甘く、味が出てくるんだ」
「はぁ……? てことは、部長は歳を取った人が好きなんですか?」
「いやっ……あ、あたしはど、同年代……前後ぐらい? が好きなんだが……」
一時、遥の質問に崩されかけた由宇だったが、すぐに「コホン」という咳払いで体勢を立て直す。
「つまりだな。あたしが言いたいのは、熟女趣味というのはもっと広まっててもおかしくないのに、何故かロリコンよりも少し上ぐらいの立ち位置に置かれているということが納得いかないんだ」
「そうですか……」
由宇の一方的主張にそう相槌を打つことしかできない遥。
そして、それを横目で見ながらまたため息をつく彩乃。
「特に、あたしたちの身の回りにも熟女趣味、もしくはロリコンなやつがいるかもしれないということが言いたいんだ」
「身の回り……? え、まさか……」
そう呟いた遥の表情はまるで探偵が事件の真相に辿り着いた時のよう。
一方で彩乃は、白けた目で由宇と遥の方を見ている。
「そう……その『まさか』があるかもしれない」
「っ!? すいません! 私用事が出来たので帰りますね! さよなら!」
「おう。気をつけてな」
慌ただしく部室から飛び出て行った遥の足音が完全に消えてから、スっと彩乃が立ち上がる。
「今日はやけに静かだったな彩乃。どうした? お前も翔真のところに行くのか?」
「はぁ……行かないわよ。というか、次翔真くんと会った時に何されても知らないわよ」
「大丈夫大丈夫。あいつ意外と寛容だから」
まるで他人事かのように語る由宇は予想もしていなかった。
彩乃の警告が本当のことになるとは。
ちなみに、私に熟女趣味はないです。
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