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この部活は何かがおかしい!  作者: 高坂あおい


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旅行の終焉はどこかおかしい!

「と、言うわけで到着しました! 我らが長野市!」

「ふふふ。中部地方の核は名古屋。つまり、中部の他8県は名古屋を有する愛知県の植民地県みたいなものよね」


 失礼極まりない発言を現地で堂々と発していく、うちの先輩方。

 と、恐らく話を半分も理解できなくて、虚空を見つめている遥。


「そのうち誰かに殴られても文句は言えませんよ。というか、そんなこと言ってるから愛知県じゃなくて『名古屋県』とか言われるんですよ」

「それは教養がないだけよ」

「赤福が名古屋名物だと思ってるヤツらと同じだな」

「はぁ」


 そこまで間違ったことを言っていないのは分かるのだが、偏ったことを言っているかのように聞こえる。

 実際、言葉自体はかなりきつくはあるが。

 

「あのー、話をするのはいいと思うんですけど、とりあえず駅から出ません?」



 虚空に意識を飛ばしていたはずの遥に優しく注意された俺たちは、途中部長の切符が飛ばされるという事件を乗り越えながらも、長野市の地を踏むことに成功した。


「ここが長野市か……」

「部長来たことないんですか?」

「ん? あぁ。野沢、妙高、渋……あと、草津とか奥の方は行ったことあるんだけどなぁ」

「全部温泉街じゃないですか。それに、妙高は新潟、草津は群馬ですし」


 というか、名古屋からそこら辺の地域に行くのに、長野市を通らないことなんてあるだろうか。

 電車でも車でも通ることになる気がする。


「その四つってどうやって行ったんです?」

「東京の方から行ったのよ、きっと」

「そうなんですかねぇ」


 少し遠回りではあるが、関東観光を中心で行ったのならば納得はできるし、草津ならむしろそっち回りで行った方がいいかもしれない。


「いや、東京なんか行くわけないだろ?」

「え?」

「もちろん福井、石川方面から行った」

「部長。『もちろん』の意味って知ってますか?」

「部長様を舐めるなよ? 『論じる必要がないほどはっきりとしている様のこと』だろ?」

「しっかりと論ずるべきだと思うんですけど」


 早まるな、翔真。

 ここで一方的に部長を責めるのは早計だ。

 もしかしたら、石川とかで観光する予定があれば、そちら側から回っていくのも特段おかしな話ではなくなる。


「まぁ、北陸にそこまで用があったわけでもないんだけどなー」

「非効率の極み! 非効率オブザ非効率!」


 あまりにも行き方が回りくどすぎる。

 生き方はこれ以上ないぐらい真っ直ぐなのに。

 あまりにも酷すぎると、俺が部長に説教をかまそうとしたまさにその時、俺の肩に一つの手がかけられた。


「長野観光、話、進めろ」


 「読」と達筆に書かれた紙袋を被った男か女かもわからない人に言われた俺たちは、それがまるで神の意志であるかのように善光寺へと歩みを進めた。


 夏休みなだけあって、かなりの賑わいを見せている善光寺に到着した俺たち。

 遥は店に何かしらの食べ物を買いに行き、彩乃先輩はいつの間にか姿を消しており、俺は部長と四人分のチケットを買いに行く。


「翔真。確か、あの暗いやつって……」

「あの本堂の下の廊下のことですよね?」

「行く……よな?」

「部長。怖いんですか?」

「い、いやぁ? 別にぃ?」


 なんて強がりを言ってくる部長だが、明らかに手が震えているし、目もマグロのごとく動き続けている。


「まぁ何かあっても俺か遥がいますから」

「だから、怖くないって!」


 その後、いつの間にか合流していた他二人と先にお土産屋を見たり、「御守りを端から端まで!」とバチあたりなことを堂々と言ってのけた部長を皆で叱ったりと、いつも以上のはしゃぎっぷりを披露した。


「そして、ついにこの時が来てしまったのか……」

「別に怖いなら入らなくてもいいのよ?」

「そうですよ、部長。腰が抜けて出られなくなっても困るので」

「お前らあたしのことなんだと思ってんの? 特に翔真」


 めっちゃ真顔でツッコんでくるじゃん。

 さっきまで全力で怖がっていた部長を返してくれ。


「ほ、ほら。部長が怖がっていたから、俺たちは和ませてあげようとしたんですよ!」

「な、なるほど?」


 俺の言葉と、それに追随してきた彩乃先輩の首肯に押されて、完璧に騙されてくれた部長。

 なお、遥は器用に立ち寝している。


「さぁ、行くか! 床下探索!」

「由宇。床下探索じゃなくて、お戒壇めぐりと言うのよ」

「へぇ」

「へぇ」

「トリ○アの泉?」


 こんなふざけたことを喋りながら、俺たちは暗闇の中へと足を踏み出した。

 一応、念の為、予防として、俺は遥の腕を掴みながら出発している。


「暗いね……」

「一寸先も見えないっていうのは本当だったんだな」

「いっすん、って何?」

「距離の単位だよ」

「おい翔真あ? 暗くて見えないからって、遥の変なとこ触ったりすんなよー?」


 着実に歩みを進めていた俺たちだったが、何故か元気になった部長からの謎の煽りが飛んでくる。


「しませんよ、そんなこと」

「私は翔真に触られても気にしないけどねー」

「ダメだぞ、遥。翔真はケダモノだから、直ぐに襲われるぞ」

「だから触りませんよ!?」


 暗くて姿が見えないからって言いたい放題だな、うちの部長は。

 いつもから言いたい放題ではあるけど……。


「というか、部長こそ足元に気をつけてくださいよ? 暗くて転んだら危ないですから」

「あ? あたしには彩乃がいるから大丈夫だよ」

「そうね。私がいる限り転ぶことは無いわね」

「目に暗視スコープでも搭載してるんですか……」


 その後、俺たちは暗視スコープ搭載型の彩乃先輩のおかげもあって、苦戦することなく「極楽の錠前」に触れることに成功。

 そのまま盛り上がりが落ち着くことなく、名古屋への帰還を果たした。

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