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この部活は何かがおかしい!  作者: 高坂あおい


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就寝前の俺たちは何かがおかしい!

「急に静かになったな……」


 風呂上がりの余興とは思えないような、白熱した卓球をした女子三人組は、汗をかいたからと再度温泉へと向かった。

 対してそれを側で見ているのみだった俺は、一人部屋へと帰って彼女たちの帰還を待ちつつ、仲居さんが敷いてくれたであろう布団の上でボーッと天井を見つめている。

 一番窓側の布団なので、隣が壁という謎の安心感を味わいながら、呟いてみる。


「にしても……」


 卓球をしている時の彩乃先輩の凛々しさ、部長の真剣な目や表情、遥……はあまり見せ場はなかったな。

 そして、何より。


「俺めっちゃ恥ずいこと言ったじゃん!」


 ちょっと思い出しただけでも耳がジンジンに熱くなって、顔も赤くなるのが分かった。

 ノリと勢いとテンションで後先考えず、なりふり構わず叫んだはいいものの、今となっては自然と浮かび上がってくる彩乃先輩と遥の引き顔に心が傷つけられる。

 それ以上に心配しているのが部長のことで、あの時はお互いにアドレナリン全開だったから許されたが、平常の部長に戻ったらもう何をされるかわかったもんじゃない。


「…………っ!?」


 ふと自分の下半身に目が行った途端、嫌な想像をしてしまい、キュッとうちのムスコが引き締まるような感覚に囚われた。

 まるで「このままでは危険」だと俺に警告を発しているかのように。


「いっそベランダで寝てみるか?」


 しかし、今は夏。

 名古屋の夜と違い、かなり涼しいとは思うが、起きた頃には全身虫刺され跡が残っていることだろう。

 遥のカバンの中に虫除けスプレーが入っていたはずだが、幼なじみとはいえ、異性のカバンを漁るのは憚られる。


「あぁぁぁぁぁっ! もうちょっと他の言葉あっただろ! あれじゃあ、部長の胸が小さいって言ってるようなもんじゃないか!」


『俺は部長の小さな胸も好きですから!』


 いや、言ってたわ。

 包み隠さず、堂々と言い切ってたわ。

 これはもう、ゲームオーバーかな。


「いやダメだろ!」

「やっほー翔真! 私たちが帰ってきたよー」

「まさか二回も入ることになるとは思ってもなかったけど、いいお湯だったから良かったわ」

「うっす、ただいま……どうした翔真? 初期装備の状態で隠しボスと鉢合わせたかのような顔しやがって」


 俺がグズグズしている間に三人が温泉から帰ってきてしまった。

 このままでは逃げ場が……


「あっ! 翔真もう布団にいるじゃん! しかも、一番端っこ!」

「仕方ないわね、ここは私が翔真くんの隣に――――」

「いやいや、私は翔真の幼なじみだから、ここは私が翔真の隣に行きますよ」

「まぁ落ち着け、お前ら。あたしは翔真と積もる話があるから、ここはあたしが翔真の隣に行くわ」


 何故か三人ともが俺の隣を所望するというこの状況に、少し困惑してしまった。

 ただ、これだけはしておかなければならない。


「あ、部長だけはとりあえず却下で」

「は? 逆だろ」


 強制バッドエンドへの選択肢を断ち切るということ。

 まぁ当然と言えば当然なのだが、やはり部長はご不満な様子。


「おーけーおーけー。簀巻きにされて部屋から放り出されるか、『部長は巨乳です』と300回書くか選べ」

「やっぱりめっちゃ気にしてた!」

 

 恐怖心から思わず立ち上がってしまう。

 しかも、いつもは高い声なだけに、ドスの効いた重低音がやけに怖く感じる。

 場所、時に限らず、部長相手に胸タ(胸のネタ)は禁止なんだ。


「よくもお前あれだけ堂々とバカにしてくれたなぁ!」

「いや、マジでバカにはしてないです! 本気で言ってたんですよ!」

「それはそれで嫌だわ! この粗チ○が!」


 ななななっ!?


「おおお、俺は粗チ○じゃないです! というか、温泉で『立派だと思う』って言ってくれたじゃないですか!」

「あんなんお世辞だろ。もっかい見たらちゃんと小さかったよ」


 そこで俺は部長の言葉にひとつ違和感を感じた。

 というのも、お世辞までのくだりはまぁ分かるのだが、「もっかい見る」というのはどういうことだろうか。

 まさか…………。


「俺が失神してる間に浴衣を剥いで……」

「いえ、大丈夫よ、翔真くん。私たちはそんなことしてないわ」

「彩乃先輩……」

「翔真くんが倒れてた時に、はだけた浴衣の間から翔真くんのショーマくんが見えてたから、観察していただけよ」

「アウトォォォォォォォ! え? 遥は?」


 まさか信頼している遥まで俺のオレを見てたわけないはず。


「私は昔から翔真と一緒にお風呂入ってたからねー」

「遥お前のことだけは――――」

「どれくらい成長してたのかちゃんと確認しないと」

「信じてたのに!」


 そういえば遥はこんな節があったなと思い出す。

 つまり、ここに俺の味方はいないというわけだ。

 そこにポンッと誰かの片手が置かれる。

 誰だろうと振り向くと、いつの間にか彩乃先輩が俺の背中側にいた。


「えっと……」

「安心して。私たちが見たのはパンツ越しのショーマくんよ」

「安心できない言葉来た!」


 その言葉を聞いてどう安心しろというのか。

 俺が「直接じゃなくてよかったー」なんて言うとでも思ったのか。


「あの……ちなみになんですけど、彩乃先輩たちは俺のオレを見てどう思いましたか?」


 我ながらに変態を極めたような質問であるのは理解している。

 だがしかし、見られたからには訊いておかなければいけないし、これぐらい訊いても罰は当たらないだろう。


「うーん……」

「あはは……」

「え? いや。え?」

「「ノーコメントで」」

「ノォォォォォォン」


 その夜、俺はあの部長に慰められるほど泣いたのは内緒の話だ。

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