俺らの温泉入浴はどこかおかしい! 後編
雲がひとつも流れていないせいか、漆黒の夜空に浮かぶ、小さいながらも明るく輝く星たち。
「おい! どこ触ってんだ!」
「ちょっとだけですから……」
「遥ちゃん……そ、そこは……」
ただ、周りピンク色の雰囲気に包まれていて――――
「ぶ、部長たちは何をして……ん?」
真上に向けていた顔を本来そうあるべき向きに戻す。
が、視界に入ってきたのは部長たちの乱れた姿などではなく。
「あっつ〜」
「だから言ったろ?」
「あら、翔真くん。どうしたのかしら?」
「い、いやぁ。その……」
温泉のお湯が出てくる口の部分に集まって、戯れている至極健全な姿だった。
「穢れていたのは俺の頭……?」
あまりにも衝撃的な事実に俺が呆然としていると、ちゃぷちゃぷと近づいてくる人影が一つ。
「翔真ぁ。珍しく静かに星を見てるなと思ってたら、見てたのは頭の中に居るあたしたちのお星様だったとはなー」
「いや、マジで、その」
謎の罪悪感から「違う」とは言い切ることが出来ない辛さ。
そして、そんな俺を見て、部長のニヤニヤはさらに加速していく。
「おいおい、本当は想像しちゃってたんだろ?」
「想像は……」
気づけば、部長の圧に負けるようにして、端の方へと追い詰められていた。
そして、ついに背中に硬めの岩が当たる。
「ふへへへへ。もう逃げ場はないぞ翔真ぁ。さぁ! 白状してもらおうか!」
もう常人の笑い声ではなくなってしまった部長は、顔を紅くしてジリジリと俺ににじり寄ってくる。
その上、手をワキワキさせて、顔は悪人顔。
「長月せんぱーい。部長たちは何してるんですかー?」
「遥ちゃん。今から面白いことが起きるからちゃんと見ておくのよ」
「そんなこと言ってないで部長を止めてください!」
こっちは色々なものが危機に晒されているというのに、高みの見物で何やら怪しげなことを言っている他二人。
「背中には岩! 前にはあたし! 頼みの彩乃も遥も助けには来ない! どうする翔真……おわっ!」
「どうするもこうするも……ちょ、部長!?」
滑ったのか躓いたのか、バランスを崩した部長が倒れ込んでくる。
そんな部長をなんとか支えようとしたものの、ワキワキしていた手と水面がぶつかったことで生まれた水しぶきに視界を遮られる。
その後は俺も体勢を崩したために、何が起こったのか全く分からなかったが、この騒がしさはいつの間にか消えて、後に残ったのは驚くほどの静寂だった。
「…………いっ……たくはないが、翔真は大丈夫か?」
「俺は大丈夫です。痛くも痒くも……ん?」
確かに痛くも痒くもないが、下半身に変な感覚があった。
それも、誰かに俺のナニかを掴まれているような……。
「ん? なんだこれ?」
ちょうど同じタイミングで部長は部長で何かに気がついた様子。
そして、モニュモニュとされる感覚と同時に、身体が真っ二つに切り裂かれたかのような衝撃が迸った。
「あ? え? うん? あっ……」
俺の不自然な体の動きと、手の感触から一つの真実へとたどり着いたらしい部長。
ボッと赤ウィンナーのごとく顔を染めると、スススと静かに俺から距離をとる。
「なんか……その……ごめん」
「いえ、俺の方こそ……」
それだけ言葉を交わして、俺も部長も口を閉じる。
完全に彩乃先輩たちが来る前の雰囲気に逆戻りしてしまった。
その上、こういう時に限って遥も黙ってしまっているので、空気ブレイカーが不在。
ここは俺が――――
「由宇、翔真くんのはどうだったの?」
「えっ!? えっと…………すごく、大きかったです…………」
俺は無言のまま男子側の入口近くまでお湯を掻き分けながら進んで行き、人生で最も俊敏に立ち上がった後、早歩きで露天風呂から出ていった。
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今回は少し短めでしたが、楽しんでいただけたなら幸いです
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