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この部活は何かがおかしい!  作者: 高坂あおい


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合宿の始まりはどこかおかしい!(合宿一日目)

「まずはなぜ俺がここにいるかを教えて欲しいんですよ」

「ならば、まずは自分で考えてみることだな」


 今日は爽やかな目覚めで一日が始まるはずだった。

 朝は凛と一緒にゆっくりと朝ごはんを食べるつもりのはずだった。

 正直一日中ダラダラと過ごすつもりのはずだった。

 「はず」だったのに、なぜ俺は電車に乗ってるのだろう。

 

「やっぱり分からないんですけど」

「ダメだな」

「はい?」

「そんなことじゃダメよ? 翔真くん」

「いや、彩乃先輩まで何を――――」

「…………すぅーすぅー」

「……遥?」


 いつもなら、この後に何か言ってくる遥にツッコんで俺が三人へのツッコミを達成するという流れなのだが、隣の席に座っている遥から聞こえてきたのは安らかな寝息だけ。

 俺としてはツッコミに使うはずだった労力を使わずに済んでよかったのだが、ここまで気持ちよく寝られていると毒気を抜かれたような気分になるな。


「わかる…………あたしにはわかるぞ、翔真が今考えていることが。どうせ『遥にツッコもうとしたのに、寝られてるせいで毒気抜かれたな。物理的にツッコんでやろうかな』なんて考えてるんだろ」

「途中まで完璧だったのに、最後で台無しにしていきましたね」

「認めたくないものよね。自分自身の、若さゆえの過ちというものを」

「先輩、それは完全に事後のセリフになってしまいますから、一旦黙りましょう」


 相向かいに座っている二人の先輩から交互に放たれる弾丸を処理するだけでも大変だから、これでよかったかもしれない。

 これに遥が加わったら、俺の口が潰れる可能性もありえてくるレベルだ。


「話は最初に戻るんですけど、本当にこれは何ですか?」

「おまっ! マジで言ってんのか?」

「ええ…………まぁ」

 

 俺が肯定すると、少し悲しそうな顔を見せてくる部長。

 忘れてたら、この部長が落ち込むほどのイベント…………。


「合宿! 合宿ですか⁉」

「はぁ……」


 今度は重々しいため息をついてくる部長。

 このままだったら最悪、電車の窓から放り出される未来が見えてきたんだけど。


「ったく、気づくのがおせーよ。遅漏は笑えないっていう話を聞いたことがねぇのか、お前は」

「聞いたことありますし、別に俺は遅漏ではないんですけど、俺の荷物はどうしたんですか?」

「翔真くんの荷物は私たちと凛ちゃんで用意したのよ」


 なるほど。

 遥が寝てるのは俺の荷物準備のせいだったのか。

 感謝の気持ちを込めて、遥の頭に手をゆっくりと伸ばす。


「まぁ、遥ちゃんが暴走したせいで――――」

「おい彩乃。それ以上はやめといた方がいいだろ」

「あ! 確かにそうよね」

「いやちょちょちょ! そこ結構大事な部分だと思うんですけど!」


 伸ばしかけていた手を引っ込めて、本能的に遥から少し距離を取る。

 しかも、何やら重要なことを言いかけた彩乃先輩を部長が制止したせいで、その内容が気になって仕方ない。

 

「おい翔真。遥は疲れて寝てんだから静かにしろ」

「その疲れは絶対に暴走したからですよね! 分かりました。承知しました。静かにします」

「うむ、よろしい。あと、このことは遥が起きた時に絶対訊かないようにしてくれ」

「は、はい」

 

 「絶対」という言葉だけ異様に力強く、部長からの圧に負けるようにして、俺は頷いた。

 

「……むにゃむにゃ」


 少し騒ぎすぎてしまったせいだろうか、それまで静かに寝ていた遥がモゾモゾと体を動かす。

 それを鋭く察知した部長と彩乃先輩が素早く身構える。

 つられるようにして、俺も軽いファイティングポーズをとった。


「部長、なんで身構えてるんですか?」

「喋るな。そのうるさい口にシュールストレミング突っ込むぞ」

「翔真くん、これは戦いなの。邪魔するなら電車のトイレの手洗い場のお水を飲んでなさい」

「シュールストレミングはともかく、水の方は絶対にダメなやつですよね!?」


 俺の真面目なツッコミに二人は反応することなく、ただ遥の方を見つめている。


「うーん……翔真ぁ。翔真のパン――――」

「せいっ!」

「むぐっ!」


 遥が俺の名前を呼んだかと思うと、次の瞬間にはその口が部長の手によって塞がれていた。

 しかも、塞ぎ方は口を抑えるではなく、口の中に手を突っ込むという荒々しいやり方。


「ちょ! 何をしてるんですか部長!」

「これでひとまず安心……いっだだだだだだだだっ! 痛い痛い痛いっ! こいつ、あたしの手を噛んでやがる!」

「ナイスよ! 由宇!」

「ナイスなんですか!? これが!?」


 そんなこんなで騒いでいるうちに、車内アナウンスが流れ始めた。


『今日も特急しなの号をご利用頂きまして、ありがとうございます。次は松本〜松本〜。まもなく松本に到着致します』


 色々なことが起きすぎて行き先を気にしていなかったが、どうやら長野に来ていたらしい。


「翔真くん、降りる準備をしましょうか」

「分かりました」

「え? あたしの手は? ねぇ! あたしの手は!?」


 若干一名、降りる準備も手伝わずに騒いでいる人がいるが、自由部はついに長野へ降り立った。

お久しぶりです!

申し訳ない話なんですが、しばらく投稿意欲が薄れていたせいで投稿できていませんでした! 申し訳ありません!

やる気は全快したので、また投稿再開していきます。

どうぞよろしくお願いします!


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