部室の備品はどこかおかしい!
「部長! ひどいです。私も自由部の宣伝をしたかったよー!」
今日も騒がしい自由部の部室には、前回の部活動の時に用事で休んだ遥の声が響いていた。
「おい、耳元で大声をだすなよ。ってかしょうがないだろ、この前お前は休んだんだから」
まぁ、遥が怒るのも分からなくはない。
俺たち三人は会議が終わってすぐに、放送室を占拠。部長が自由部の魅力を台本なしで数分間語り続けるという、新たな宣伝をしたことによって、学校内でかなり話題になっている。
なおも文句を垂れる遥に対して部長は「また今度宣伝するから」と言って話を締めくくった。
「それに、今日はお楽しみだぞ」
部長は不敵な笑みを浮かべてそう告げてきた。
しかし、肝心の「お楽しみ」が何かわからず、遥と俺はそろって首を傾げる。
ちょうどそこに彩乃先輩が部室に入ってきた。
「由宇、もうちょっとで例のモノが届くって」
「りょーかい」
どうやら彩乃先輩は「お楽しみ」の内容を知っているらしい。
「先輩、部長、『お楽しみ』って何ですか? 教えてくださいよ」
「あとちょっとで分かるから黙って待ってろよ」
聞いてもはぐらかして答えてくれない二人にもやもやしてると、部室のドアがノックされる。
部長が「はーい」と言ってドアを開けると、そこには緑色の生地に黄色のラインが少し入っている服を着た大人の人が立っていた。
「お荷物を持って参りましたー」
「ありがとうございまーす」
配達員の人が運び込んできた物は俺の頭の中に思い浮かんでいたものをはるかに超える大きさのものだった。
最初に部屋に入ってきたのは棚らしきもの。
「部長、これなんですか?」
「見りゃわかるだろ、本棚だよ」
「いや、それはわかるんですけど、何で本棚を買ったんですか?」
「ラノベを整理するためだよ」
別に運び込まれてきたのが本棚だけだったら俺も何も言わない。しかし、部屋に運び込まれてきたのは本棚だけではなかった。
まずは――――
「……扇風機ですか」
「おう、もうそろそろ暑くなり始める頃だからな」
そして、次に――――
「テレビは既にありますよね?」
「今ウチにあるやつはちょっと古いんだよ。いい機会だし新しくしようと思って」
さらに――――
「もうこれは完全に関係ないですよね」
「パソコンは重要だぞ。今の時代にパソコンは必要不可欠だ」
計四つ。自由部の部室に運ばれてきた。
俺が運ばれてきた家具を見ながら呆気に取られていると、部長が椅子にゆったりと座りながら俺に命令してきた。
「なぁ翔真。今運ばれてきたやつを配置してくれ」
「ふざけんな」
思わず暴言を吐いてしまった。ていうか、命令が抽象的過ぎるだろう。どこに運ぶとか、どう配置するとかを言ってくれないと困るのだが。
「あやのぉ、翔真がいきなり反抗的になったんだけど、どうしよう」
「由宇、翔真くんはきっと配置する場所や配置の仕方を具体的に言って欲しいんだと思うわ」
「なるほど」
さすが彩乃先輩だ。俺の言いたいことを理解してくれている。しかも、大人っぽいし、美人だし。
などと考えていると、遥がサササと俺の後ろに移動してきて、少し低めの声で俺に囁いてきた。
「翔真、いつの間に私を差し置いて、長月先輩と以心伝心の関係になっていたの?」
「べべべ別にそんな関係になんてなってナイトオモウヨ」
そうだ。今回は彩乃先輩が勝手に俺の言いたいことを理解してくれただけで、決して以心伝心などという関係にはなってない、と思う。
「前々回に私がいなかった間や、前回私が休んでいた間に、部長や長月先輩と少しだけ仲が良くなってない?」
「それはほら、一緒に過ごしていれば誰だって仲は深まるさ」
「もう……私がこの部活に入った理由は半分が好奇心で半分があんただからね」
そこまで素直に言われると照れるな。
俺は自分の顔がだんだんと赤くなっていくのが分かった。そして、そんな俺につられて遥も同じように顔を赤くし始める。
二人で顔を赤くしてモジモジしてると部長と彩乃先輩が睨みつけてきた。
「おい、お前らあたし達がいるところやいないところでイチャイチャするな」
「盛り上がっているところ悪いけど、そこでイチャつかれるとブーメラン○リオスをしたくなるわ」
二人とも目が本気だ。さすがに、ブーメラン○リオスをくらいたくはない。
「わかりましたよ、とっとと家具を運んじゃいましょう」
俺はそう言って家具の一つに手をつける。俺が遥から離れたことで部長たちの機嫌は直り、俺と一緒に家具を運び始めた。
こうして、自由部室はまたひとつ進化することとなる。
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