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この部活は何かがおかしい!  作者: 高坂あおい
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この部活の職業シミュレーションは何かおかしい! 前置き編

 体育祭も無事終わり、平穏な日常が俺たちの元へと戻ってきた。

 千円は目の前でゴミに変わったが、それを差し引いても充実した体育祭だった。


「とはいえ……」


 もう神頼みの域に達している、俺の「今日は何も無いでくれ」という願いと、平穏な日常とやらは既に灰燼に帰した。

 部室の前に着いた時点で、中から聞こえてくる物騒な音。


「これは絶対に何かある」


 しかし、ここまで足を進めたら最後、必ずこの中へと引きずり込まれる。というか、どうせ振り向いたら都合よく彩乃先輩やら遥がいるんだろう。

 そう考えると、抵抗する気も失せた俺はもう躊躇うことなく扉を開いた。


「こんにちはー…………で、今日は何をしでかしてるんですか?」

「おっ! 翔真! やっとできたかぁ。もうちょっと早く来て欲しかったんだけどなぁ……」

「遅いよ! 私なんてこんな重いもの運ばされたんだよ?」


 俺だって、部長の我儘にはとことん付き合っていきたいし、そういう覚悟なんだが。


「これはダメだろ……」


 部長たちの輪の中心には、この部活には異質すぎるほどの木製の机があった。

 その机の右下には収納バッチリな四段の引き出し。座った時に、正面に来るであろう場所にも一つ引き出しがある。

 どことなく見覚えがある、というか全国民が知っているのではないかというくらいのデザインの机。

 中から青色の何かが出てきそうな雰囲気を醸し出している。


「やっぱ翔真は驚くよなぁ」

「そりゃ驚きますよ。むしろ、この驚き具合で済ませていることを褒めて欲しいぐらいですけどね」


 俺からすると、彩乃先輩と遥が何故そんなに平然としているのか知りたいぐらいだ。


「にしても、このレプリカなかなか再現度高いですね。値段張ったんじゃないですか?」


 某机のレプリカでは無いにしても、これほどの物ならば、どちらにしても高いだろう。

 心配半分、興味半分の俺の質問に、部長は首を傾げる。


「レプリカ? あぁ、この机は安かったからメ〇カリで買ったんだけど、なかなかいいだろ」

「メ〇カリで買ったのはどうでも……良くはないんですけど、これ引き出し開けたら変な空間に繋がってたりはしないですよね? そんなことがありえないのはわかってるんですけど……」

「あっ……」


 今このタイミングでの「あっ……」はシャレにならないだろ。


「え、今の誰が言った? これレプリカだよね?」

「「「…………」」」

「黙らないで! お願いだから、なんとか言ってください!」

「…………遥、この机は裏の倉庫に運んどいてくれ」

「ラジャー」


 俺の言葉に反応することなく、部長の指示を受けた遥が机を外へと持ち運んでいく。

 「その力はどこから出ていのか」だとか、「結局あの机はなんだったのか」だとか、気になることが多すぎて、もうどこから突っ込んでいいのかすら分からない。


「さ! 今日は特別な活動をしようと思う!」

「…………今ならなんでもできる気がしますよ」

「ほほう。今日はやけにやる気があるじゃないか」


 部長が感嘆の言葉を送ってくるが、それすら素直に受け取っていいのか分からなかった。

 とにかく、俺は部長が変なことをしないように見張ってなければいけない。

 もうここには、俺しかストッパーがいないんだ。


「それで? 由宇は何をしたいの?」

「あぁ。あの机があったことからもう予想はついてると思うけど、今日は将来について考えていきたいと思っている」

「部長にしては案外まともですね」

「確かに。私、『未来に行こう』とか言われると思っていました」

「お前らってつくづくあたしに失礼だよな」


 そんなこと俺たちに言われてもな。

 それはそうと、今日の活動はいつになく真面目なものらしいので、俺は張っていた気を抜く。

 恐らくだが、部長と彩乃先輩はもう高二で、もうそろそろ自分たちの行き先を決めていかなければならない時期だから、こんなことを言い出したのだろう。


「部長は何になりたいと考えているんですか?」

「あたし? あたしはまだ全然決めてないからなぁ……」

「どんな職業に就きたいとか」

「楽に金を稼ぎたい」


 最もダメな職業の選び方第一位を迷うことなく即答してくるわれらが部長。

 一年半後とはいえ、この人の卒業後が心配でたまらない。そこら辺の詐欺に引っかかってそう。


「そんなことはいいんだよ! とりあえず、一人ずつやっていくぞ!」

「え? 何をですか?」


 部長の急な宣言に頭が追いつかない。

 それは遥も同じようで、頭の上にはてなマークを浮かべている。

 恐らく理解出来ているのは、額に手を当てたまま言葉を発しない彩乃先輩だけなのか。

 そんな俺たちの様子なんて気にかけることなく、部長は部長で、まるで今の状況が理解できないかのような声音で答える。


「何って、職業シュミレーションに決まってんだろ?」

「…………は?」

この後は由宇編、彩乃編、遥編、翔真編と続きます。

由宇の将来に関しては本当に心配ですけど、なんとかなるでしょう! とりあえず今は高校生活!


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