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この部活は何かがおかしい!  作者: 高坂あおい


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体育祭昼休みもやはりおかしい!

「やっぱり体育祭は昼休みまで楽しくないとな!」


 睦月さんに頼み込んだ結果、昼休みの間だけ部室の解放を許可してもらった自由部。


「じゃじゃーん! 翔真のために弁当作ってきたよ!」

「えー、私もお兄ちゃんと食べるお弁当作ってきたのに」

「ふふふ、私は食後のデザートの頂点にして至高であるシュークリームを持ってきたわ!」

「「「おぉぉぉぉぉぉ!」」」

「あたしは牡蠣にアボカド・オクラ・ショウガのサラダと、ブロッコリーとほうれん草を和えたやつ。納豆にブルーベリー、レバー、バナナ、オートミール、チョコレートまで揃えてきたぞ!」

「「「おぉぉぉ…………お?」」」

「おい、なんであたしのはそんなに反応が薄いんだ?」


 最後だけ妙な組み合わせだったが、それ以外は体育祭にふさわしい豪華なものばかりだ。

 とはいえ、彩乃先輩のは必然的に最後に食べることになるだろうから、凛か遥のどちらを先に食べるべきか。


「さぁお兄ちゃん! どうぞ食べてー……ん?」

「翔真、早く食べてよねー……む?」


 俺の心を読んだかのように同時に弁当を差し出してきた二人が目線を交わらせて、火花を散らす。

 というか、危ないから弁当どうしをぶつけ合わないで。


「食べるから! どっちも食べるから!」


 これはベストアンサー。

 だったのだが、笑顔で満ちているはずの二人は何故かキョトンとしていた。


「ん? 何言ってんの? お兄ちゃん?」

「え?」

「いや、翔真。食べるのは当たり前だよ」

「へ?」

「「どっちのを先に食べるのかが問題なんだよ?」」


 またもやバチバチと視線で火花を散らす二人。

 仲がいいのやら悪いのやら。

 にしても、どちらを先に食べるべきか。妹である凛の方か、幼なじみである遥の方か。

 争い続ける二人の前でそんなことを考えていたが、不意に肩が叩かれる。


「翔真君。これはセーブポイントよ」

「もう彩乃先輩が何を言いたいのか分かりましたよ」

「ふふふ。これは凛ルートか、遥ルートかに進む分岐点」

「ほらやっぱり」


 アニメにラノベ、漫画にギャルゲまで手を広げているこの先輩こそ本当に救いようがない気がしてきた。

 というか人の人生をギャルゲ扱いすな。


「でもね翔真君。この世界は二択だけじゃないの。三択、いや四択、五択までもあるわ」

「え? つまりどういう……」


「こういうことよ」


 そう言って俺の視界外から何かをスっと取り出す彩乃先輩。

 その何かは止まることなく俺の口に入り込んできた。


「――――ふごっ!」

「今言ったことは忘れないでね? 翔真君」


 人差し指に付着したシュークリームの生地を舐めとるように取り、微笑む彩乃先輩はまるで小悪魔のようだった。

 

 混乱した頭のままシュークリームに歯を突き立てた時、俺の脳内処理は限界を突破した。


「かっらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「どうした翔真!?」

「お、お兄ちゃん?」

「翔真、何が?」


 弁当を食っていたり、争っていたりしていた面々が心配の声を掛けてくるが、それどころではない。


「……水……水を……」


 俺は口の中の辛さを洗い流すために水を求めて歩き回ったが、生憎俺の水筒は教室に置き忘れてしまった。

 どうしようも出来ず、凛のお茶でも飲もうかと伸ばした手にコップが渡される。

 俺は本能的にそのコップに入っていた液体を迷わず飲み干した。


「――――っが…………っ!」


 次に出た声は、もはや声とは呼べるものではなかった。

 喉が焼けるような痛みと、口の中に巨大なハリセンボンが入ってるかのような痛み。


「お兄ちゃん! これ!」


 そう言って凛から渡されたお茶は知らぬ間に無くなっていた。


「はい、次!」


「もういっちょ!」


「まだまだ!」


「え? そんなに飲んで大丈夫?」


 もうこれだけで腹が膨れるほど水を飲んで、やっとで痛みが少しだけ和らぐ。


「もう私の水筒空っぽ…………」

「ところで翔真は何があったんだ?」

「そうだよ、急に大声を出すからびっくりしちゃったじゃん」


 まだ痛みの残る喉に鞭を打って声を絞り出す。


「……あ、彩乃先輩……から……げ、激辛……シュークリームをっ」

「あー」


 どうやら、これだけの説明で部長は納得したようだった。


「彩乃、今日持ってきたシュークリームってのはどうせ『激辛ルーレットシュークリーム決定版』だろ?」

「正解よ、由宇。よくわかったわね」

「お前なぁ……」


 一体二人はなんの話をしているんだ。


「で、翔真に飲ませたあの液体は?」

「名古屋名物台湾ラーメンのスープよ」

「お前は翔真に恨みでもあんのか?」


 彩乃先輩の恨み…………。


「ふふ。私も構ってもらいたいお年頃なのよ」

「構ってもらうために人の喉を破壊すんな」


 珍しくツッコミ側に回っている部長。

 なんてカッコイイんだろうか。


「まぁ、あたしもあえて精力増強の食べ物しか持ってこなかったけどな」


 結局はこんなもん。

 

「お兄ちゃん、もう食べよー」

「そうだよ翔真。私の弁当早く食べてよー」


 音もなく忍び寄っていた二人が弁当を催促してくる。

 両手に花はもちろんのこと、片手に弁当ならまだ良かったが、両手に弁当は半分拷問のような気がしなくもない。


「わかった。わかったから、卵焼きをほっぺたに押し付けてくるのはやめてくれ」


 昼休みが始まってだいぶ経ってから昼食を開始した俺たち。

 喋り、笑い、怒り、苦しみ、和気あいあいとしていた自由部室に呼び出し放送を知らせるチャイムが鳴る。


『自由部! 自由部! 早々にグラウンドまで出やがれください! 集合時間である昼休み終了十五分前です。リレーの準備を早くしてください! 早く! 早く!』


 そして、放送はプツリと切れた。


「あたしたちの扱い雑じゃね?」

「まぁ、集合時間に間に合ってないのは本当ですし、妥当じゃないですか?」

「いや、途中とか無理やり敬語使って誤魔化してたじゃん」


 慌てて残っていた昼飯をかき込んで部室から出ようとした時、再度チャイムが鳴る。


『午前の紅茶部と、牛乳の練乳術師部も早くグラウンドまで来てください。リレーの準備をしなければなりません。せめて自由部よりは先に来てください』


 放送が切れるのと同時に部長がこちらを見てくる。

 もう何を言われるのか想像がつく。


「なぁ、やっぱり――――」

「早く行きましょうか、部長」


 雑には扱われていない…………はずだ。

結局、由宇が持ってきた食べ物は誰が食べたんでしょうね。


次回はついに自由部出陣です!


「こんなつまらない駄文をよくもぬけぬけと投稿することができるなこの恥知らず」

なんて思った人も是非ブクマ登録や評価、コメントをお願いします!


ところでなんですけど、Twitter始めました!

「高坂あおい」と検索すれば出てくるはず……はず……

特に何かをするつもりはないんですけど、細かい報告などはちょくちょくするつもりです。

是非ご確認ください!

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