表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この部活は何かがおかしい!  作者: 高坂あおい
27/61

体育祭序盤が終わってもおかしい!

「世の中は理不尽だ!」

「部長、往生際が悪いですよ。いい加減諦めてください」


 わざわざ一年のテントまでやってきて暴れる部長を宥める。

 「自由部だから」という謎理論を無理やり押し通した部長率いる自由部だったが、あまりの惨状に強制退室を命じられた。

 

「分かるわ。というか、追い出すのはちょっと早計よ」

「と、言いますと?」

「アニメのキリが悪いのよ。モヤモヤするわ」

「あなた方のせいで俺は居心地が悪いんですけどね」


 正直、周りの奴らから「なんて化け物を連れてきたんだ」と目で見られているのはすぐ分かる。

 こう見えてというか、当然の如く自由部はある種生きる伝説のようなものであり、この学校に通っていて知らない生徒はいないほどだ。


「そういえば、遥はどこに行きました?」

「あー、あいつならお前の妹のところに行ってるんじゃねぇか?」

「なら大丈夫そうですね」


 俺の妹である凛はたまに理解し難い行動をとることがあるが、親が親なので、基本的には常識があって几帳面な性格だ。

 遥も自ら好んで問題を起こすような性格では無いし、恐らく何も起こらないだろう。

 

 しかし、災害や問題というのは安心した頃にやってくるもの。ここでもやはりそうだった。


 地面が裂けるような音がなったかと思えば、その直後には大きな何かと何かがぶつかったような爆音が聞こえてくる。

 音の方向は観客席の方。


「…………大丈夫かな?」


 それから少しして遥と凛が姿を見せる。


「いやぁやりすぎちゃったー」

「念の為に聞くけど……何を?」


 遥に恐る恐る聞いた俺だったが、答えたのは興奮気味の凛だった。


「お兄ちゃん! 聞いて驚いてね? 遥ちゃんが地面をドーン! って割ったかと思ったら、ガーン! ってくっつけたんだよ!」

「は?」

「いや、暇だったし、ちょっとやって見よっかなぁーって思ってやったんだけど、予想以上に上手くいっちゃってさ」

「上手くいっちゃってさ、じゃないんだよ。常人には絶対に出来ないんだけど、いつから人間やめた?」

「なるべく力を抑えるようにはしてるんだけどね」

「いつしか力が暴走しちゃうかのような話ぶりだな。頼むから制御してくれ」


 ポリポリと頭をかきながら「あはは」と笑っている遥だが、俺は引き笑いで精一杯だった。

 いつしか、海を割ったモーゼと高校のグラウンドを割った遥として語り継がれるだろう。


「まぁモーゼ・如月のことは置いとくとして――――」

「ストップ! ストップ! 色々渋滞してますよ。なんですか、モーゼ・如月って。しかも、あんなことを置いとく方が難しいですよ!」

 

 あと、無駄に俺と思考が被ってるのが腹立つ。


「あたしに対して腹を立てるな。死刑にするぞ」

「いちいち俺の心を読むのやめてくれませんか!?」

「読んでないぞ、勝手に読めちゃうんだ…………なぁ、彩乃?」

「ええ、その通りね」


 え、俺の心ってそんなに簡単に読めちゃうものなの? というか、勝手に読めちゃうって何?


「あ、もちろん私も読めるからね!」

「お兄ちゃんの心ならよゆーだから!」


 嘘でしょ? 俺泣いちゃうよ?


「で、さっきから後ろで会話に参加したそうにあたしたちの方をずっと見つめていた風紀委員さんはどうなんだ?」


 部長の声に驚いて振り向くと、テントの骨組みに手を置いてこちらを覗き込むように見てきている睦月さんの姿があった。

 もちろん、バレて動揺する彼女の姿が目の前にある。


「なななななななな…………なんでわかったの!?」

「なんでも何も人間の視線察知能力を舐めたらダメだぞ」

「部長って人間だったんですね」

「翔真はとりあえずそのうっすい煽りをどうにかしてから出直してこい。桜の木の下に埋めるぞ」


 この人めっちゃキレてんじゃん。しかも、罰は桜の木の下っていう指定付き。

 案の定、隣の彩乃先輩に「由宇、落ち着いて」と諭され、やっとで荒らげていた声を抑えた。

 深呼吸を何回かして、「んっん」と咳払いをする。


「……まぁ、あたしの視界にチラチラというか堂々と映ってたんだよな」


 俺からして背後、つまり、部長からすると睦月さんは正面に見えるというわけだ。


 「はわわわ」なんて未だに落ち着く雰囲気を見せない睦月さんに部長は続ける。


「もうお前はあたしたちの仲間なんだから遠慮するなよ」

「仲間になるのは遠慮しておくわ」

「お? こっちが丁寧に慰めてやってたら調子に乗りやがって。戦争するか?」

「待ちなさい。あなたも周りの生徒の声に耳を澄ませてみなさいよ」


 それまで黙って話の成り行きを見守っていた俺たちはもちろんのことながら、今まで喋っていた部長も急に静かになる。


「ねぇ! 今の聞いた!?」

「聞いた! 睦月さんがあの自由部の仲間って……」

「違うわよ。睦月さんは自由部のネカマって言ったのよ!」

「睦月さんが…………ネカマ?」

「いいえ、高菜って言ったのかも……」

「睦月さんは高菜!?」


 噂が噂を呼び、広がっていく現場を俺たちは目撃してしまった。

 なるほど。こうやって噂は広まっていくのか。


「…………睦月が高菜て……ぷぷぷ」

「笑い事じゃないわよ! 何をどうしたら私が高菜になるわけ? というか、高菜そんなに好きじゃないし」


 一応、少し離れた場所では「睦月さんも堕ちたな」だの「睦月さん、自由部入部か」だのと小さい声で聞こえてきたが、ご乱心中の睦月さんの耳には入っていないようだ。

 というか、俺というまともな人間もいるので、自由部を完全な魔境みたいに言うのはやめて欲しい。


「まぁ、諦めて見回りでもしてこいよ、風紀委員さん?」

「くっ……私は自由部の仲間じゃなーい!」


 そう捨て台詞を吐いて走り去ってしまった睦月さんだが。


「睦月先輩の顔がちょっと笑っているように見えたのは気のせいかな?」

「きっと恐らく大方想定されるところでは多分そうだと思う」


 俺もそう見えたから。


 体育祭はまだ続く。

体育祭編はまだ続きます。

体育祭編のくせに体育祭の種目全然書いてないじゃん! って思ったそこのあなた。そうです。あなたです。

基本的に自由部視点で書いてるので、種目がまともに書かれることはありません。彼らは競技をちゃんと見てないので。

それでも、読んでくれた方々はもれなく下の星を光らせてください!

コメントもお願いします!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ