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この部活は何かがおかしい!  作者: 高坂あおい


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体育祭序盤もやはりおかしい!

 ついに体育祭がスタートして、各クラスはしのぎを削って戦った。

 一年の短距離から始まり、綱引きや玉転がしと次々に種目はこなされていった。


「次は、『クラス対抗リレー』です」


 放送委員の声が聞こえるのと同時に俺と遥は顔を見合わせた。

 今、俺たちはゼッケンを着ている。


「翔真、頑張ろうね?」

「なんで俺まで出なきゃいけねぇんだよ」

「仕方ないじゃん、風邪は」


 元は陸上部のやつが走る予定だったが、風邪で休んだため急遽俺が代走として出ることになった。

 正直、代走は誰でもよかったのだが、遥の薦めで決まった。

 俺は昔から遥のランニングに付き合わされてたこともあって、足はそれほど遅くないし、大丈夫だと信じたい。

 偶然か必然か。俺は遥の前の走者で、アンカー・遥にバトンを渡すことになる。


「翔真。手は抜かなくていいからね」

「抜く暇なんてねぇよ」


 最後に軽口を叩いて二手にわかれた。

 各組のトップランナーがそれぞれスタート位置についたのを確認して、スタータ役の体育委員がピストルを上にあげる。

 一瞬の間の後に、グラウンドに飛び合う声援の中でピストル音が響いた。

 一斉にスタートした走者が、既に位置についている第二走者へ全力で駆ける。各組が一番走者に足の速い奴を置いているので、ほぼ全員が同時にバトンの受け渡しを終えた。

 そうして、次から次へとバトンがつながれていく。

 気づけば、俺の前の走者のやつがスタートラインについていた。

 ここまで来ると、流石に差がつき始めていて、上からB、A、C,D、Eという順番となっている。

 前の走者も無事ミスすることなくバトンを受け取り、B、A組を追いかけて走り始める。

 しかし、ここで先頭を突っ走っていたB組の走者が態勢を崩してそのまま前のめりに倒れた。そのB組の真後ろを走っていたA組も転んだ走者を避けるために少しスピードを落としたために、一気にB組は最下位まで落ちた。また、C組は二位に浮上した上にA組との差が急に縮まったことで、かなり勝機が見えてきた。

 俺はA組のやつと一緒に一足先に線の前に立つ。

 赤いハチマキと白いハチマキをそれぞれなびかせて走る前の走者がコーナーを曲がりきった。

 それを確認して、隣にいたA組の生徒が走り出したのとほぼ時を同じくして、俺も全速力では無いながらもそれなりの速さで走り出す。

 俺の背後につく気配と、手にバトンが触れる感覚。

 俺はそれを失わないようにしっかりと握りしめて、少し前に出ていた赤い敵を追いかけ始めた。

 

「翔真ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ちゃんと走れよ!」


 いつもうるさい部長のいつも通りの声が聞こえる。

 その声に答えるように俺は加速する。

 コーナーを曲がり始める頃にはA組に並んだ。そのまま俺は勝負を決定付けるように、視線をコーナーを曲がった先に定めて走る。

 視界には遥しかいない。

 歓声も、無駄に大きい生徒の話し声も聞こえなくなった。

 俺から逃げるように走り始める遥。

 そんな遥に追いつけるように俺も最後のラストスパートをかける。

 遥が後ろを向くことなく手をこちらへ差し出す。

 俺はその手にバトンを押し付ける。


「あとは頼んだぞ! 遥!」


 やけくそに叫んだその声に、遥が頷いた気がした。


 

 結論から言うと、俺らC組は大差をつけて大勝利を収めた。


「翔真! お前速いじゃん!」

「そうだよ! びっくりしちゃった」

「翔真からの遥リレーはエグかった」

「おう。ありがとうありがとう…………けど、ちょっと痛いな。痛い痛い痛い! 誰だ全力で背中叩いてきたやつは!?」


 なんて褒めながら、全身を叩いてくる労る気のないクラスメイトの包囲網から抜け出して、俺は同じく鬼畜クラスメイトの輪から脱出してきた遥と合流する。


「翔真速かったね」

「誰かさんのせいで魔改造されたからな」

「へーたいへんだったねー」

「おい、目をそらすな。こっちを見ろ」

「あ、次は部長たちの番じゃない?」


 絶妙な話題の逸らし方をされた気がするが、部長の走るところを見ていないと、後で何をされるかわかったものじゃない。




――――正直、見どころがあると言えばある。ないと言えばない。というくらい圧倒的な展開だった。

 

 体の小さい部長が「遠心力なんて知らない」と言わんばかりの華麗なコーナリングを見せ、最後は彩乃さんの安定した走りでゴールという単純ながらも、知り合いがしっかりと活躍したレースだった。


「やっぱり部室は最高だなぁ」


 エアコンや扇風機を働かせ、冷蔵庫に入っているハー○ンダッツを味わう部長と俺たち。

 体育祭中は基本部室には立ち入り禁止なのだが、部長が「私たちは自由部だから!」とゴリ押して、例外として使っている。

 

「体育祭中に見る『ひ○らし』は最高ね」

「時期としては少しズレてますけどね」


 しかも、みんなが楽しんで運動をしている一方で見るものではない気がする。


「やっぱり運動って最高だよね!」

「とりあえず、この部屋から出てグラウンドに行ってから発言しような」


 少なくとも、ソファーでくつろぎながら言ってはいけないと思う。

 というか、いつの間にソファーが追加されているんだ。


「あれ? もうアイスないのか。もうちょい買っとくべきだったかな」

「あーーーーーっ! 俺たちのアイスが! なんでなりふり構わず全部食べちゃうんですか!? てか、普通に腹壊しますよ!?」

「わかった。わかったから、お前は私を責めるのか、心配するのかのどっちかにしような。ありがとう?」


 互いに何を言っているのか分からなくなったので、これ以上この話題に触れるのは止めた。

 そして、アイスを一人で食べ切る、という特別任務を達成した部長は本棚からラノベを数冊ほど取ってくると、椅子に座って読み出した。

 

 ……。

 

 ……………。


 ……………………。


「これいつもの日常と変わらないじゃないですかっ!?」


 そんな俺の叫びに被せてくるように、ドアが勢いよく開く。


「そうよ! 私を差し置いて…………体育祭中にこんなことをするなんて言語道断よ! 体育祭が終わるまで部室の使用は禁止!」


「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」」」


 今日もそれぞれの思いが木霊する自由部室は素晴らしい場所です。

すごい! 2週連続の投稿です! 拍手。

この勢いで連続投稿目指します。善処します。

体育祭中はちゃんと観戦しましょう。

良ければ、ブクマ登録もしくは下の星を5つ輝かせておいてください!


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