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この部活は何かがおかしい!  作者: 高坂あおい


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22/61

この特訓はどこかおかしい! Take2

 野球部の掛け声が響き渡るグラウンドに、今日も運動部兼文化部である自由部プラス睦月先輩は集まっていた。

 いい意味などなく、ただただ悪い意味で目を引く俺たちは周りの視線も声も気にせず準備体操をこなした。

 ふと、部長が思い出したようにバトンのパス練習を始めようとしていた俺に小走りで近づいて来た。


「そういや、翔真と遥は何色なんだ?」

「何色?」

「体育祭の組み分けだよ」

「あー」


 俺たちの通う湯京高校の体育祭は全学年のクラス対抗で、各クラスは色によって組み分けされる。例えば、A組は赤。B組は青と言った感じに。


「俺も遥も白ですよ」


 俺と遥は共にC組のため、同じ白組だ。

 確か、部長と彩乃先輩と睦月さんは3人とも同じクラスだった気がするけど……。


「私も彩乃も睦月もみんなCで白組だから同じだな……あっ」

「どうしたんですか、部長?」


 何やらよからぬ事を思いついた様子の部長は俺の言葉が聞こえていたのか、いなかったのか。


「白ってつまり、せー……むぐっ!」

「マジでアウトなんで黙っといてください。最近下ネタを言っていなかったからって無理に言わなくていいですから!」


 部長の口を咄嗟に塞ぐことで、爆弾発言を防ぐことに成功した俺は既に体育祭のMVPなのではないだろうか。

 と、部長も流石に息が苦しくなってきたのだろう。必死に手足をジタバタと動かして俺にギブアップだと伝えてくる。


「もう下ネタを言いませんか?」


 俺がそう聞くと、部長はコクコクと頷く。

 仕方なく俺は部長の口から手を離した。


「ったく、翔真は強引だなぁ」

「部長が下ネタを言わなければいいんですよ……ほら、こんなことしてると商品券を逃しますよ」

「……お前、女子の口を触っていながら、よく堂々としてられるよな」


 前を走ることになった遥とのバトンパス練習をするために一歩踏み出した俺に部長がそんなことを言ってくる。


「どういうことですか?」

「いや普通、『うわぁ、俺女の子の唇触っちゃったよー。やべぇ、めっちゃ柔らかったな。めっちゃドキドキするわ……もしかして、これが恋っ!』みたいに思うもんじゃないの?」

「いや、どこの少女漫画ですか……」


 この部長の再現を少しでも「上手いな」と思ってしまうのが悔しい。

 ただ、俺としてもリレーの戦犯になるの絶対に避けたいので、これ以上部長のおふざけに付き合っている暇はない。


「……はぁ。俺はもう行きますよ?」

「ったく、翔真はつれないなぁ」

「部長も練習しないと、また睦月さんと遥の練習に引きずり込まれますよ」


 先日の練習で相当嫌な思いをしたらしい部長はグラウンドを見渡して彩乃先輩がランニングしているのをその目で確認してからほっと一息をつく。


「……翔真」

「今度は何ですか……?」

「私はお前を信頼している」

「は、はぁ?」


 唐突に「信頼している」などと言ってくる部長の意図が分からない。

 混乱する俺をよそに部長は顔を寄せてくると、小声で続けた。


「今日は駅前のパフェ屋がオープンする日なんだ」

「そうなんですか」

「ああ。で、私が甘党なのは翔真ならもちろん知っていると思うが、私はどうしてもそのパフェ屋の『祝開店記念プレミアムパフェ』とやらをなんとしてでも食べたいんだ」

「なら、今日学校帰りに行けばいいじゃないですか。別に『学校帰りに寄り道をしてはいけない』なんて校則なかったはずですけど」


 湯京高校は基本厳しい校則は設けておらず、むしろ自由部なんてものを創部できるぐらい生徒の主体性を尊重している学校だ。

 特に問題はないと思うのだが……

 しかし、部長はわざとらしく俺の目をチラッと見ると、これまたわざとらしく大きくため息をついた。


「……考えろ。考えるんだ翔真。ぼーっと生きていてはダメだ」

「好奇心旺盛な五歳の女の子が言いそうなセリフですね」

「……誰の背が低いだって?」

「言ってないです」

「……誰の胸が小さいだって?」

「いや、それも言ってないです」

「まぁいいか」

「いいんかい!」


 さっきから部長に振り回されている気がする。

 休憩に入った遥と睦月さんが何やら話しながらこちらを見ている気がするし、彩乃先輩は……寝ているからほっとけばいいか。というか、あの人いつも寝ている気がする。


「話を戻すけど、私が行きたいパフェ屋は六時半で店を閉めちゃうんだ」

「つまり、練習が終わってからでは遅いということですか」

「そういうこった」

「でも、それを信頼している俺に言ってどうするんですか?」

「私は今からトイレに行ってくる」

「は?」


 相変わらず意図をつかめきれずにいる俺の質問が聞こえていなかったのか、はたまたわざと聞き流したのか。どちらにせよ、部長の俺に対する返答が返答になっていなかったのは事実だ。


「私はトイレに行ってくる。いいな?」

「え、いや、どういう……」


 同じことを繰り返して言った部長は俺が訊き返す時間を与えることなく、まだ半分以上残っているポ○リを片手に持って体育棟へと入っていった。


 この日、部長が再度グラウンドに帰って来ることはなかった。

明日、投稿します。

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