俺たちの特訓はどこかおかしい!
体育祭練習のとある1日の話です。
いつもよりも短めです。
「も、もう……無理です限界です帰りたいです」
「弱音を吐くな、翔真! 遥はまだ頑張ってるぞ!」
「いや、あいつと比較しないでください。あと……」
呼吸が乱れに乱れていた俺は、少し大きく息を吸って呼吸を整えた。
「なんで部長はくつろいでるんですか!?」
そして、グラウンドにビーチチェアとパラソルを置き、わざわざサングラスまでつけてセレブを気取っている部長に向かって俺は叫んだ。
「人の頂点に立つ者、心身共に余裕を持つべし」
「心に余裕を持っても、体まで完全に休めてしまうのはいかがなものかと!」
「いいじゃん別にー。ほら、彩乃だって寝てるんだし」
そう言って部長が指差した先にはグラウンドで寝てる、否、倒れている彩乃先輩の姿があった。
「あれはただ気絶してるだけ……気絶!? 大丈夫かあれ!保健室に連れてかないと!」
俺は悲鳴をあげている体に鞭を打って彩乃先輩の元へ駆け寄った。
「大丈夫ですか、彩乃先輩! 今すぐ保健室に……って」
「すぴー」
「……」
グラウンドで倒れ込んでいる、否、寝ている先輩は放っておくことにした。
俺の体力と心配を返して欲しい。
「だーから言ったろ? 彩乃も寝てるんだって」
得意げな顔で語る部長。
しかし、俺は見逃してませんよ。「彩乃先輩が倒れている」と俺が言った時、自分も駆け寄ろうと立ちあがろうとしていたことを。
それはともかく。
「あれはどう説明するんですか」
「あれは……」
今度は俺が指差した方を部長が見る。その先には、グラウンドを囲う塀の間をずっと走り続ける遥と、体力の限界を迎えたものの、なんとか遥について行こうと匍匐前進をする睦月さんがいた。
「あいつら人間じゃねぇ」
「遥や睦月さんはもちろんですけど、未だにビーチチェアでくつろいでる部長もある意味同じですよ」
部長は聞こえないふりをして明後日の方向を見始めたが、タイミング的にバレバレな上に、頬を伝う汗がとどめを刺した。
「あたしは……ほら、部長だからセーフというか? なんというか、部長だから免除というか。ま、まぁ、な? ほら、一念通天というか、石の上にも三年というか、精神一到というか、そんな感じよ!」
ブラジルに到達しそうな勢いで墓穴を掘った部長。その肩に左右から「トン」と、手が置かれた。
部長が恐る恐る振り向くと、そこには汗によって滝行をした後のような姿の遥と、土まみれになった睦月さんが。
「え、えと……お疲れ様っす。うす」
部長の労いの言葉とも取れない言葉にも二人は笑顔のまま。
……俺は彩乃先輩を教室に連れて帰るべく立ち上がる。
「あのー、お二人とも無言は怖いんですけど。あと、遥の汗が染み込んできて……」
「「……」」
さぁ、今日の活動はここらへんで終わりかなー。
部長が何やら泣き出しそうな顔でこちらを見つめてくるが、心当たりがないので、そのまま放置することにした。
「……部長」
「ふぁ、ふぁい……」
今まで俺が見たこともないような圧を見に纏っている遥は有無を言わさぬ声音で。
「一緒に走りましょうか?」
部長を練習へと誘った。
「……あ……あ……」
次の日、部長は学校を休んだ。
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久しぶりに2週連続投稿なのでは!?