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この部活は何かがおかしい!  作者: 高坂あおい
17/61

この部室はどこかおかしい! 一部目

「今度は一体何なんだ」


 今日も今日とて放課後の部室へ向かうと、部室の扉にはルーズリーフが貼ってあった。


『部室改造中につき、関係者以外立ち入り禁止』


 少し前にも貼り紙が貼ってあるときがあって、その時はまんまと面倒ごとに巻き込まれた。

 つまり、少しでも長居すると、また巻き込まれる可能性が高い。

 そもそも、「部室改造中」やら「関係者以外立ち入り禁止」とかいう言葉がある時点ですでに怪しいのだ。

 考えれば考えるほど入る気をなくした俺は、体を反転させ帰ることにしたのだが。


「うわっ! あ、あのー……何してるんすか?」 


 振り向くと、あと数センチで顔がぶつかるところに彩乃先輩の顔があった。

 驚いた俺はギリギリまで後ずさり、とりあえず無難な質問を投げかけてみる。


「私? 私は今から部室に入るところよ。ところで、翔真君は部室の前で何をしているのかしら?」


 やましいことは何もない。ないはずなのだが、嫌な予感がして頬を一滴の汗が流れる。


「俺は今から帰るところっす。うっす。それじゃ、おつかれさまっす」


 昭和の体育会系のノリで返答し、そのまま彩乃先輩の横をすり抜けて……。


「ねぇねぇ、翔真? どこに行くつもりなの?」


 すり抜けたその先には遥が仁王立ちで立っていた。

 あれ、おかしいな。一瞬前までは彩乃先輩の後ろに誰もいなかった気がするんだけどな。


「お前どっからでてきて……じゃなくて、俺は今から自分の家に向かうところだが?」


 俺はこの後に何が起こるのかなんとなく想像がつく。

 「どうやってこの危機を回避しようか」と考えていると、急に遥がクスクスと笑い始めた。


「何言ってるの翔真? 記憶喪失?」


 遥から 


「えーと、遥さん? 申し訳ないんだけど、何を忘れてるのかお聞きしても?」


 遥は今までの笑い顔とは一転して、スっと真顔になる。

 何を考えてるのか、そもそも感情というもの失っているかのような顔。


「もう忘れたの? 今日から()()が私たちの家だよ?」

「は?」


 遥が言ってる「ここ」って自由部室のことだよな?

 部室が家になるような話をしていないのはもちろんのことながら、「私たちの家」なんていう単語も聞き覚えはない。

 

「ごめんな遥。俺はここまで言われてもここが俺の家になった経緯が思い出せないんだ。教えてもらってもいいか?」

「一昨日の深夜零時三十五分に翔真の部屋に行って、『明後日から自由部部室が翔真の家になるけど、いい?』って翔真の耳元で囁いたら、翔真が『んん』って言ってくれたんじゃん」

「いやそれは、寝言だよね!? あと、寝言には答えたら絶対だめだからな! 寝ている人の睡眠が浅くなって、睡眠不足を引き起こしてしまうからな!」

「え……ああ……うん。私が答えたというより、翔真が寝ぼけて答えてきただけだからいいんだけどね」


 少し遥がたじろいでいる。今のうちに逃げれるかもしれない。


「さ、いつまで部室の前で長話をしているんだ? やることが山積みだから、さっさとやっていくぞ」


 自由な世界へと足を踏み出そうとしたその時。

 制服の襟が何者かに捕まれる感覚と共に、背後から聞こえてくるもう聞きなれた声。

 後ろを見なくても誰かわかる。


「ついに現れたラスボス……がふっ」


 主人公ぶろうとした矢先に俺は部室の中へと放り込まれていた。

 そうか、ここもある意味自由な世界か。


「さて、全員集まったことだし、今から『自由部室改造計画』を開始するぞ」

「えっと、すいません……今なんて?」


 俺の聞き間違いでなければ、「改造」とかいう単語が聞こえてきた気がするんだけど。

 そんな俺の考えをよそに、部長は大きくため息をつくと、もう一度その活動内容を口にした。


「はぁ、全く、これだから翔真は……。いいか? ケツの穴をかっぽじってよく聞けよ? あたしたちが今からやるのは『自由部室改造計画』だ。というか、ドアに貼ってあっただろ?」


 どうやら聞き間違いではなかったらしい。


「にしても、どう改造するんです? 改造って言ってもこれ以上オリジナリティを追加するところないと思うんですけど」

「確かに、あたしたちは今までにないぐらいオリジナリティ、独創性を追い求めてきた。だから、次にやるのは部室の拡張だ」

「すいません、よくわかりません」


 逆に彩乃先輩と遥は理解できているのかと思い、見てみると二人とも大げさなくらい頷いてた。

 この意味不明な方針についていけてないのが俺だけという異様な空間がそこにはあった。


「翔真、お前は一体何が理解できないんだ?」

「全てにおいて理解不能ですけど……強いて言うならば、どうやって拡張するんですか? 業者でも呼ばない限りできないと思うんですけど」

「それだからお前はまだ四分の一人前なんだよ」

「えぇ……」


 四分の一人前なんて初めて聞いたんだけど。

 理解できないことが次から次へと出てきて、俺の脳が全く追いつけていないが、それでも部長は止まらない。

 いうならば、ブレーキの利かない新幹線と言ったところだろうか。


「よーく見とけよ? ここを……こうして……こうすると……できた! これで部屋が少し広くなっただろ?」


 部長が何処かをなんとかすると、壁が全体的に外側に移動して部室内がかなり広くなった。


「こうすることで、中は広くなるが、外見は全く変わらない」


 「こうすること」とか言われても動きが全く見えなかったので、相変わらず何を言っているのかはわからない。


「ん-、まぁ一回で見真似しろって言うのは無理があるからな……。次は彩乃のやつを見てみるといい」

「次は私の番ね」


 彩乃先輩は一回髪をかき上げると、不敵な笑みを浮かべて、部長と同じくよくわからない動きをし始めた。

 すると、壁はまたもや徐々に後退していき、さらに部屋が広くなった。


「うまくいったわね」

「おお、流石彩乃。まぁ、あたしの方がまだまだうまいがな」

「やっぱり彩乃先輩はすごいですね! 私も頑張ります!」


 三人が何やら言っているが、やっぱり理解できない。というか、物理法則すら超越している気がする。


「私も二人には負けていられないですからね」


 今度は遥が壁の前に立って、手を構える。


「ここをこうして……ええと、こうやって……できた!」


 遥も同様に……もういいか。


「みんながやってること難しすぎて俺にさっぱりだから、やっぱり帰ってもいいよね?」


 俺は近くに転がっていた自分の制鞄を肩に掛けて、遥に尋ねる。

 もちろん、その返答は――――


「うん、だーめ」


 デスヨネー。



区切る場所に困った……

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