この部活の奉仕はどこかおかしい! 二部目
「で、なんで俺はこんなことをされてるんですか?」
「なんでって言われても、逃亡防止用としか言えないんだが……」
面倒ごとを勝手に集めてくる部長から逃げるために廊下に出たが、野次馬の壁に阻まれて逃亡失敗。
現在は両手首を縄で縛りあげられて、部室に監禁されている。
ちなみに、野次馬は部長が「これ以上ここに留まるなら、お前らにもメイド服を着せるぞ」と言って脅すと帰っていった。
それを聞いた途端頬を赤く染めて尚も留まるどころか、詰め寄って来る数人の変態が居たが、無事全員追い払うことに成功したようだった。
「まずですね、部長。なんでわざわざ俺の名前を出すんですか? ほかにも説得する文句ぐらいあったでしょうに」
俺の疑問点は何よりもそこだった。
自分が着たい。もしくは、遥たちに着せたいだけなら、別に俺の名前を出さなくてもいいはずなのだ。
「あぁ……確かにあたしだって色々な説得材料を用意してたよ。けどな? どれもこれも無反応で、こいつらが一番食いついたのが……むぐっ」
最後まで言わせないと言わんばかりに部長の背後を取ったメイド二人がギリギリと部長の首を締めあげているが、なんとなく事情を把握することはできた。
「んまぁ、とりあえず理由が知れたんで良しとしましょう。……てなわけで、この縄を解いてくれませんか?」
やっとのことで二人から解放された部長は首をさすりながら呆れたかのような視線でこちらを見てくる。
「お前……まずは首を締められてたあたしのことを心配しろよ。窒息死してたらどうするつもりだったんだよ」
「部長は窒息ごときで死ぬような人ではないですからね。それに、自業自得ですし」
「いや、確かにそうだけどさぁ」
俺と部長が小競り合いをしていると、ヌルッと横に新たなメイドが現れた。
「言い合いは好きにしてもらって構わないけど、こんな格好で放置するのだけはやめてよ……」
「え」
「な、何よ」
「いや、何でもないです……」
新たなメイドこと、風紀委員長の睦月さんは腕を組んで高圧的な姿勢を取っているが、如何せん服装のせいでパッとしない。
「さっきまで部室の端でうずくまって涙目になってたやつが何を言ってるんだ……。お前が『やめて、私のことは放っておいてよ』って言うから、放っておいたのに」
睦月さんの訴えに対して、部長が抗議するが、睦月さんは耳をふさいで聞こえないふりをする。
「うるさいうるさいうるさい! 女の子が『やめて』って言ったら、それは『やって』って言ってるのと同じなの!」
あまりの言い草に流石の部長も呆れてしまったようだった。
「女って面倒くさい生き物だな」
「あんただって女でしょうが……」
そんな時、にわかに廊下が騒がしくなった。
扉の隙間から見える生徒だけでもかなり数が居て、皆こちらを見て何やら話している。
「なんか、睦月さんまでメイド服を着てるらしいよ」
「えぇー、うそぉー」
「しかも、何かヒステリックになってるぽいし」
「睦月さんてそんなキャラだったけ?」
「いや、私の記憶ではこんなんじゃなかったんだけどなぁ」
どうやら、俺達自由部が変なことをしてることで騒ぎになってるのではなくて、その変なことに風紀委員長である睦月さんが参加してることが騒ぎの原因らしい。
「おいおい、また騒ぎになってるよ……」
「ちょっと、これ以上は先生たちがやって来るわよ」
「万事休す……ですか」
廊下にたむろしている大量の生徒に諦めて座り込んでしまったメイド服姿の三人。そして、ヒステリックになってしまったメイド風紀委員長が一ヶ所に集中しているというこのカオスな状況を打破するために強力な助っ人がやってきた。
「おーい、お前ら。用のない生徒は早く下校しろよー。それ以外の生徒はとっとと用事を済ませるか、部活に行けよー」
自由部顧問の天滿月先生がやってきたことで、今まで廊下で自由部のやり取りに聞く耳を立てていた生徒たちは散らばっていった。
相変わらず普段は役に立たないのに、こういう時だけ役に立つ人だ。
当事者以外の最後の生徒がその場からいなくなると、天満月先生はこちらに向き直り、説教を始めた。
天満月先生曰く、メイド服はギリギリアウトだとのこと。服は当分の間、先生が預かって、ほとぼりが冷めたころに返却するとのことだった。
「まーた没収かよー」
制服に着替え終わった部長がそんなことを呟く。
「前にも没収されたことがあるんですか?」
「実は、チャイナドレスを持ってきたことがあってだな……」
それは流石に……
「アウトだよ!」
先週は私用で投稿できず、すいませんでした。
今週からは毎週投稿できるように頑張ります。
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