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この部活は何かがおかしい!  作者: 高坂あおい
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この部活の顧問は何かがおかしい!

「さっきからお前らはうるさいぞ。何か探し物をしているから部活の活動時間延長の許可を出してやっているというのに……なんで倒れている奴が二人もいるんだ?」


 入ってきたのは今まで学校内で見たこともない先生らしき女性だった。

 その人は一般的に先生と言われている人たちよりもラフな格好をしていて、上は白シャツに下はジーンズという服装。長く少し茶色がかった髪は後ろで括られている。

 

(先輩、先輩、あの先生はなんて名前なんですか?)

(あー、翔真はまだ知らないのか。あの先生は『自由部』の顧問である天満月(あまみつつき)先生だ)

(あの先生がうちの部活の顧問だったんですか!?)

(ああ、自由奔放すぎてなかなか部活には来ないが、この部活にぴったりだろう?)

(た、確かに)


 俺が小声で彩乃先輩に先生のことを訊くと、今まで一度も姿を現さなかったこの部活の顧問だったらしい。


「……ところで、君たちは一体何を探しているんだい?」

「それが、部長が本を失くしたらしいんですよ」


 小声で会話をしていた俺たちに代わって先生の質問には遥が答えた。そんな遥の頬が少し膨らんでいる様に見えたのは気のせいではないだろう。

 最近俺との会話が減ってしまったことに不満を覚えているのだろうか。

 少し嫉妬している遥のケアをどうしようかと悩んでいると、俺はあることに気が付いた。


「先生、右手に持っているのは何ですか?」


 先生の右手には持ち運びに便利そうな、カバーの掛けられた文庫本らしきものが握られていた。

 先生は俺たちに見せるように本を少し持ち上げる。


「ああ、これか。これは、ある生徒が落とし物だと言って、職員室に持ってきた物なのだが、確認しようと思って読んでいる内にすっかりハマってしまってな」


 俺たち三人はハッと顔を合わせ、先生に「本の中身を見せてくれ」と頼んで見せてもらう。


「こ、これはっ……」


 まさかのラノベだった。


「ぶ、部長! 起きてください!」

「あ? なんだよぉ。あたしは今ふて寝をして……そ、それはっ」


 少しダルそうに起きた部長に先生が持っていたラノベを見せつける。

 すると、予想通りの反応を部長は示した。


「あたしのラノベだあああああああああ!」

「うわっ、うるさっ」


 いきなり部長が叫びだすと思っていなかった俺たち一行は揃って耳を防ぐが、部長は意に介した様子はない。


「おお、天満月先生! ありがとう!」

「お、おおそうか。役に立てたのなら光栄だ」


 天満月先生は未だに状況が呑み込めてないらしい様子だが、部長が喜んでいるのでよしとしたらしい。


「普段はからっきしだけど、たまに役に立つなぁ」

「え?」

「いやぁ、授業は遅刻してくる上に変な雑談をはさんでくるわ、テストをすれば、採点ミスを連発するわで悪いイメージしかないけど、今回は本当に感謝してます!」


 褒められつつ、貶されていることで先生の中では感情が複雑に絡み合っていることだろう。

 

「……文月。その本はお前のもので間違いないのか?」

「もちろんです!」

「よし、没収だ」

「ええっ! なんでぇ!」

「気分だ」

「職権乱用だ! どうせ、先生が読みたいだけでしょ!」

「そ、そんなことはっ……ええい、早く寄こさないか!」

「地球の果てまで逃げてやる!」

「あっ! 待てっ」


 年甲斐もなく部長を追い掛け回す先生と、器用に逃げ回る部長。

 一分ほど二人は鬼ごっこをしていたが、さすがに二人とも疲れたらしく、どちらも座り込んでしまった。


「……はぁはぁはぁ」

「……はぁはぁ……やりますね、先生」

「お前もだぞ、文月」


 そうして、ニヤリと笑って握手を交わす自由すぎる教師と生徒。


「いいわね。ジャ〇プみたいで。私は結構好きよ?」

「俺としてはこんなことしてるより早く帰りたいんですけど」

「私も早く帰ってご飯食べたいよー」


 俺たちの文句が聞こえたのか、聞こえてないのか、先生がパンパンと二回手を叩く。


「さぁ、もう遅いし、もう帰るぞ。私も今日はなるべく早く帰りたかったんだ」

「何があるんです?」

「ランキング走らないとな」

「本当に早く帰ってください」


 思わぬ形で目標を達成した俺たちは、それぞれ荷物を持って部室から出る。

 鍵は先生に職員室に返してもらって、他愛ない話をしながら校門を出た時。


「そういえば睦月さんは?」

「「「……あ」」」


 どこまでも不憫な睦月さんだった。

やっとで一段落ついたぁ

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