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この部活は何かがおかしい!  作者: 高坂あおい
13/61

部長の本は何かがおかしい! 三部目

「まず、歴史教室からですかね」

「ああ」


 俺と部長は東棟の歴史教室にやってきていた。


「一応見に来ましたけど、歴史教室にラノベなんて持ってきます? 持ってきても、見る時間なんてないですよね?」


 部長は苦笑しながら「チッチッチッ」と、人差し指を左右に振る。

 無性に腹が立つのはなんでだろう。


「わかってない。わかってないよ翔真」

「な、何がですか?」

「真のラノベ好きはな……授業中にも読むのさ……」


 無駄にカッコつけて少し赤く染まった窓の外に目を遣る部長。

 かっこよさそうなことをしても、言っていることがかっこよくないので全て台無しだな。

 

「授業中はちゃんと先生の話を聞きましょうよ」

「なんでこの空気をぶち壊すんだよ」


 どうやら、俺が今ツッコんだのが気に食わなかったらしい。


「いや、さっきの空気はいずれ壊れる運命だったんですよ。主に会話の内容のせいで」

「私は真面目に話してたんだがな」


 二人で無駄口を叩きながらも、一つずつ机の下の網棚まで見ていく。


「ないっすね」

「ないな」


 まぁ、ないのが当たり前な気がするけど。


「次は化学教室ですかね」

「いや、化学教室にはラノベ持ってってないんだよ……というか、持ってけない」

「あー……あの先生ですもんね」


 湯京高校の化学教師は既に六十を超えているのにも関わらず、現役バリバリ。しかも、内職をしていると秒で見つかってしまうので、自然と内職をする生徒はいない。

 ちなみに、内職が見つかったら最後、没収されたものが返ってきたことはないのだとか。


「とりあえず、あたしたちは部室に帰るか」

「この様子だと、他の所も怪しいですね」

「どこに忘れてきたんだろうなぁ……」


 俺たちは他のメンバーが見つけてることを祈りながら、少し足早に部室へと戻った。

 部室のドアを開けると、彩乃先輩と遥の姿があった。

 二人ともの顔はやはりどこか浮かない。


「翔真くんたちの方はどうだった?」

「あたしたちの方にはなかったよ」

「ということは、やっぱり彩乃先輩の方も?」

「ええ、なかったわ」

「遥もか」

「うん」


 部長が行った場所にはない。そして、部長が落し物ボックなどを既に確認しているとすると、誰かに盗まれたとしか考えられないんだよな。


「部長が最初から持ってきてない説は?」

「ないな。あたしは確かにラノベを持ってきた。朝の電車で読んでたんだから間違いない」

「英語の追試にかかってたのにね」

「おい、彩乃! それは、言わない約束だろ!」

「あれ? そうだっけ?」


 そう言って、ペロッと舌を出す彩乃先輩を表すとしたら、小悪魔という言葉がピッタリだろう。


「で、部長は受かったんですか?」

「あー、翔真君。そこは察しなきゃ」

「あっ」


 俺が彩乃先輩からの忠告を受けて、気づいた頃には時すでに遅し。部長は大きく息を吸い込むと……


「ああああああああああああああああああああああああああああああ」


 頭を抱えて地面に這いつくばりながら、まるでゴ〇ラかスーパーで大泣きしている子供のように叫び始めた。


「ちょ、ぶ、部長。俺が悪かったので、叫ぶのだけはやめてください」

「うううう、だって仕方がないじゃないか。まさかあそこで主人公がメインヒロインだと思われていた女の子を振るとは、あたしですら予想してなかったんだよ。しかも、主人公は余命半年だと! 嗚呼、この先が気になって仕方がない、あたしはこの先を今すぐに読まないと死んでしまう! そんな状況でラノベを読まずに、追試をするほど私は落ちぶれてはいない!」


 何を言ってるんだこの人は……。


「いや、どちらかというと、追試を捨ててラノベを読みふけっている方が人間として学生として落ちぶれてますよ?」

「や、やめろぉ……正論を言うな……」


 そう言って部長は床に這いつくばったままピクリとも動かなくなった。

 頼みの綱の部長も睦月さんも倒れ、俺たちはどうしたものかと悩み始めたちょうどその時、部室のドアが開いた。


部長のラノベはなかなか見つかりませんね

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