回避不能
義弟夫妻の目論見はただ一つ、豪遊を維持する為に親族の人員削減を行うことだ。
その中で真っ先に削減する者として、私とその娘達が狙われたのだった。結納金を得られ、食い扶持も減らせるとの考えだろう。
娘と別々に縁談を取り付けようとしていたが、偶然にも、娘も連れて再婚が可能な相手を見つけたらしく、すぐに話をつけ、約束を取り交わして帰ってきていた。そして、結納金が相手方より納められた後、私を含め親族は初めてこの計略を知らされたのだ。
私の夫であり、義弟夫妻にとっては兄である彼が居なくなった今、義父は嫁ぐ前に既に他界している為、他の親族が私を擁護しようとも当主権限で打破されてしまうだけであった。義弟夫妻の跡取りにと大事な息子を人質にとられ、もう抗う方法が見当たらなかった。貴族階級の女性が外で働くことは良くないとされている為、ここでは女が1人で生きて行くことは出来ないのだ。
せめてもの償いにと、身の回りの物全てを持ち出せるよう計らってくれた義母は社交界の情報網をもって次の嫁ぎ先について調べてくれた様で、お相手は柔和な方で、親族は死別した奥方との間に授かった娘が1人いるだけらしいと教えてくれたのだ。
泣く泣く息子の無事を義母に頼み、新たな嫁ぎ先へ2人の娘と共に向かう道中、この先何があっても娘達を守り抜くのだと私は決意した。実父亡き今、息子は世継ぎとしての地位がまだ守ってくれるが、娘達にはそれが無いのだ。自身を守れるくらいに成長するまでは私が絶対に守り抜かねば、いつ厄介払いされても不思議ではないのだ。
悲しんでいる場合ではないのだと、自分を奮い立たせ、持ち出した大量の荷物の中から1番のドレスを身に纏い、より丁寧に化粧を施し、私は女として武装したのだ。