そして
処分が撤回されたからと言って、祖国に帰るつもりも貴族に復帰するつもりも毛頭なく、自力で手に入れたこの暮らしの中で生きていくつもりだ。
ただ、この撤回によって、祖国へ立ち入る事ができる様になった事だけは感謝したい。離れて暮らす息子にも実母にも最初の嫁ぎ先の義母にも会えずに一生を終える可能性は気にかけていたのだ。間違っても祖国で事業展開はしたくない。あの国でも私の事業は未開拓ゆえ利益は見込めるが、目をつけらた場合のデメリットが過大な上に、面倒な親類縁者が寄り付く方が遥かに不利益である。
ここに至るまで本当に長かった。
明日、この家に娘達を迎え入れる。ようやく、この長らく願った日がきた。
どんなに忙しい日が続こうとも、欠かさず毎週会いに行った。要らぬ苦労をかけてしまったが、娘達は修道院に来てからの数年で、穏やかに暮らせる環境に馴染み、本来の優しさを表に出せる様になっていた。教養も身につけている。これからは、一緒に事業を進めて、将来独立して生きていける様にするという娘達との約束を果たさねばならない。
暮らしが落ち着いたら、娘達を連れて祖国へ墓参りに行っておきたい。その時には息子も一緒に行けたらと願うが、まずは明日からの暮らしを安定させることが大切だろう。
明日からの暮らしを少しでも平穏なものにする為にも、今日までを鑑み、今後に活かしていく必要があるのだ。
この先何が起ころうとも、同じ過ちを犯さぬ様、自身の反省を忘れぬ様、今度は自分自身を見失わぬ様、そして私が私らしく在れる様に、一先ずここに記録を残しておく。
誰かの一人勝ちは気にしないこととして、誰かの一人負けは何とかならぬだろうかと思い書き始めました。(もう少し内容も更新期間も短いつもりで書き始めましたが、予想外の長引き様で…恐れ入ります。)
「彼女の聡明さを損なわず、結果をひっくり返すには」と迷走し、駆け足な終わり方になった事に、連載ならではの難しさと、至らなさを身をもって知りました。
これに懲りず、気が向きましたら、また頑張ってみたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。