今の私が思うに
0時。私にかかっていた呪いは解けた。
訳あって祖国を追われ、貴族の身分を捨てて平民としてこの国にやってきた。何も無いところから私は再出発する。
これまでの暮らしとは真逆の極貧生活を味合わせない為、そして再教育を施す為、最愛の娘2人を修道院へ預けることにした。
祖国を出るときに生家の母がこっそり持たせてくれた支度金のほとんどは、修道院への寄附に使ってしまった。
最安値の物件に住み、すぐ仕事に就くことにした。平民と言えど、外で働く女性は少なく、あまり受け入れられていなかったが、寡婦だと伝えれば理解され、教養があると判れば身を売らずに良い仕事を得られた。元々貴族であったから、素養はある。比較的高給な職を得て、週に一度、娘達に会いに行くことを楽しみに、思い切り働いた。
それから数年、ある程度財を成し事業を興した。貴族向けと平民向けの二本立てで女性向けブランドを立ち上げた。自身の経験に基づき化粧品と服飾品をプロデュースしたのだが、予想を上回る速さで流行した為、事業はすぐに軌道に乗った。
そして娘達も学びを修了し、基礎的な教養と善悪の理解を身につけた。こちらも生活の基盤も整えてある。これで心配なく一緒に暮らせる。これまでの苦労を全て結果に繋げ、やっとこの日を迎えた。
娘達を迎える前に、1つやっておくべき事がある。同じ過ちを犯さぬ様、自身の反省を忘れぬ様、ここで私の半生を記録として綴っておかねばならない。