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意地悪45(二人三脚)

「続いての競技は二人三脚です。参加する方は後方スタート地点近くにお集まり下さい」



放送が入ったので、指定された場所へと向かう。



指定された場所に着くと、すぐに見慣れた姿を見つけた。



「お、雨宮。二人三脚の準備はもう出来たのか?」



俺と目が合いパッと顔を輝かせる雨宮。だが話しかけると、なぜか頬を膨らませムッとした。



「先輩、なんで名字なんですか?せっかく名前で呼んでくれたのに…」



雨宮はポツンと呟くとどこか悲しそうに眉をへにゃりと下げる。



「いや、それは…」



落ち込む雨宮の様子に、少しだけ心が痛む。



屈辱を与えるために呼び捨てにしたというのに、そんなに呼ばれたいのか?



子供扱いされるのが嬉しいなんてほんとドMだな。



「はあ、分かった。えり、これでいいだろ?」



俺はえりがドMだから仕方ないと納得して、呼び捨てにする。名前を改めて呼ぶとどこか気恥ずかしく、少しだけ顔が熱くなる。



「はい!ありがとうございます!」



おれが名前を呼ぶとえりは満面の笑みを浮かべた。その柔らかい嬉しそうな笑みは脳裏に焼き付いてしばらく離れなかった。



「それで準備はできたのか?」



「はい、もうバッチリですよ!あとは誰が相手になるかだけですね…」



そう言ってそわそわし始めるえり。どこか緊張したような面持ちになる。



「そうだな。くじ引きで決まるみたいだし、さっそく引きに行こうぜ」



「そ、そうですね」



緊張して顔をこわばらせるえりを連れて俺たちはくじ引きの場所へと向かった。 



「やあ、神崎くん」



「ああ」



案の定、くじの箱を持っていたのは、不敵な笑みを浮かべる東雲だった。



「あ、あっちに華がいるから雨宮さんはそっちに行ってくれる?」



「?はい」



東雲がそう言うと、首を傾げながらもえりはそっちへと向かっていった。



えりが離れるのを見て、東雲は口を開く。



「はい、これが今回のくじだよ。雨宮さんと同じ番号が書いてあるから」



「わかった、ありがとな」



東雲が渡してきた紙切れを受け取りながら礼を言う。



「それにしても二人三脚でどうやって意地悪するつもりなんだい?」



にやにやと楽しげな表情で尋ねてくる。



「やっぱり、身長で負けると精神的ダメージがくるだろ?だからあえてペアになって隣に並ぶことで、その現実をつきつけてやろうかなって」



くくく、我ながら素晴らしい作戦だ!!!



雨宮が悔しくて涙目になる姿が目に浮かぶ。しっかりと俺より低いことを知らしめてやろう。



自分の作戦の素晴らしさに笑いが止まらない。俺は心の中でほくそ笑んだ。



「あはは、確かにそれは最高だね。雨宮さんの精神は確かに追い込まれると思うよ」



さすが、分かっているな。



雨宮の反応を期待する俺たちは二人三脚が始まるまで、2人で笑っていた。



♦︎♦︎♦︎



「あ、先輩!き、奇遇ですね。お、同じ番号なんてすごい奇跡ですね」



挙動不審なえり。ところどころ噛みながらそう言って番号を見せてきた。



大方華に誤魔化すように言われたのだろう。だがあからさまに怪しすぎる。


そもそもまだ俺の番号教えてないしな。本当に嘘をつけないやつだ。



えりの素直すぎる反応が面白く、少しだけ笑ってしまった。



「ああ、そうみたいだな。よろしく」



「はい!」



えりはとても嬉しそうに微笑んでいた。



「じゃあ、紐で足縛るからな」



そう言って俺は渡された紐で自分の足とえりの足を結んでいく。



「ほら、出来たぞ」



「あ、ありがとうございます」



えりはぺこりと礼をしてきた。



「そろそろスタート地点にお願いします」



係人から声がかかり、俺たちはスタート地点に移動する。



「よし、えり、頑張るぞ」



スタート地点に着くと俺は雨宮の肩を抱いた。



「ひゃ、ひゃあ!?ちょっと先輩!?」



俺が肩を抱くとえりが素っ頓狂な声を上げる。



「なんだよ?」



「ち、近くないですか?」



えりは顔を赤くしながら、上目遣いに小さく尋ねてくる。



「そんなこと言われても二人三脚なんだ、しょうがないだろ」



俺はさらにえりに身長差を見せつけるべく、ぐいぐいと身体を寄せる。



くくく、さあ、俺との身長差に絶望するがいい!



「だ、だから近いですって!」



俺が身体を寄せるとさらに顔を真っ赤にしながら慌てふためくえり。



「それに…」



耐えきれないっといった表情で小さく呟く。



「なんだよ」



「その…先輩の体が……私の胸に当たってます……」



顔を朱に染め耳まで赤くしながら、消え入りそうな声を零してきた。



「なっ!?」



思いもよらない指摘に一気に顔が熱くなる。



言われて確かに身体に当たる柔らかい感触を自覚し、パッと慌てて離れた。



「……先輩のエッチ……」



雨宮はチラッと涙目で上目遣いに見てくる。



羞恥に染まった表情で、身体を隠すようにしながら甘く囁いた。



俺は二人三脚が始まるまで熱くなった顔を冷ませず、固まったままだった。


長らくお待たせしました。

ここまで待ってくださり本当にありがとうございますm(_ _)m


返信出来ていませんが、感想は全て読ませてもらっています。

これからまた返信させてもらいます。ぜひ感想を貰えると嬉しいですヽ(*´∀`)ノ


あと今更ですが、この作品のクリスマスデートを短編で公開しています。ぜひ読んでみてください٩(>ω<*)و

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コミカライズは↓↓↓から

https://manga.line.me/product/periodic?id=Z0002280
― 新着の感想 ―
[良い点] 相変わらずの勘違い神崎君 [一言] 頚を長く長くして待ちわびたかいがありましたよ、身長差など雨宮ちゃんにとってはご褒美かもしれないのに
[良い点] 更新ありがとうございます。大変嬉しく思います。いやー、甘いですね。うん、この甘さはほどよいですね。次の更新も楽しみにして待ってます。
[一言] 久しぶりの更新首を長ーく長ーくしてお待ちしておりましたよ、これからも我々読者に気を遣わずマイペースで更新お願いします
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