反撃44(次に向けて)
先輩に手を引かれてなんとかゴールし終えた私は、先輩と別れ、1人でクラスの所へと戻りました。
はぁ、やっと落ち着きました。
先輩と離れたことで、鳴り止むことのなかった心臓がやっと収まり、ゆっくりと呼吸できるようになりました。
乱れた呼吸を整えながらクラスに戻ると、クラスメイトからものすごく注目を浴びます。
チラチラと私の方を見て、何かを話し合っている姿が散見されました。
絶対、先輩と手を繋いでいなくなったことを噂していますね…。
こんなに注目されると恥ずかしいです…。
まったくもう、先輩は離れても私を恥ずかしがらせる気ですか?
やっと落ち着いてきたのに、また顔が熱くなってきました…。
火照った顔を見られないように俯いて隠します。
はぁ、本当に先輩は困った人です。
私はクラスでもドキドキさせて恥ずかしがらせてくる先輩に少しだけため息を零しました。
次の自分の競技までしばらく待っていると、仕事を終えた華が戻ってきました。
私に黙ってあんな仕事に就いていたなんて!
借り物競走で私達をからかってきた華に少し文句を言おうと思い、近寄りました。
「ちょっと、華!さっきのあれはなんですか!?」
私の声に反応した華は楽しげな表情を浮かべて振り向きます。
「どうしたの、えり?そんなに不満げな顔をして。あんなに顔を赤くしていたし、満更でもないでしょう?」
私の文句に華は全く反省の色を見せません。それどころかどこか満足そうです。
「そ、それはそうですけど…」
まさか、先輩に好きな人って言われるとは思いませんでした。
ああ、今思い出すだけでもまたドキドキしてきます…。
「なら、いいじゃない」
あ、危ない、危ない。先輩との会話で忘れるところでした。
嬉しい思いをさせてもらえたのは良かったですが、それとこれは別です。
華には少し反省してもらわないと…!
そうじゃないと私の心臓が保ちませんし…。
「せ、せめて、事前に言ってください。急に現れたから驚いたじゃないですか」
「え〜?えりの反応を楽しみたいもの。それは約束できないわ」
文句を言いますが、ふふふ、と不敵な笑みを浮かべる華。
その姿に私は文句を言うのを諦めるしかありませんでした。
「それより、えり。随分とクラスの注目を集めているみたいね?」
私が黙ったことをいいことに、華は続けてそんなことを聞いてきました。
「それは華が…!」
まったくそんな惚けたような顔をして何を聞いてくるんですか…!?
華が仕組んだから、先輩に手を繋がられてみんなの間を歩く羽目になったですよ!?
分かりきったことをわざわざ聞いてくる華が恨めしく、少しだけ睨んでしまいました。
「まあまあ、そんな睨まないで。注目は浴びたけれど、それ以上に普段経験できないようないい思いができたんだから。それにこんなことで恥ずかしがっていたらこれからが保たないわよ?」
そんな私の睨み顔に臆することなく、平然と華が衝撃的なことを言い出しました。
「…え?え!?な、何する気ですか…!?」
もう既に十分ですよ!?これ以上一体何を仕掛けてくるつもりなんでしょうか…!?
「ふふふ、それは秘密よ。きっとますます注目を集めるだろうけれど頑張ってね?」
にやりと口角を上げる華の姿に、二人三脚への期待と不安が心の内に広がるのを感じるのでした。
急な更新停止申し訳ありませんでした。
理由は色々ありますが、一つは用事が重なり執筆時間が十分に確保できなかったことです。
もう一つが主な理由ですが、筆者の執筆意欲が落ちていたことです。毎日更新に囚われるあまり、義務感でこの作品を書いていることが多くなり、楽しんで書くことが出来なくなっていました。
この作品は筆者にとって大事な作品で、中途半端な状態で更新したくはなく、楽しんで書きたい作品です。今後も更新していきますが毎日ではなくなります。理解していただけると嬉しいです。




