反撃34(頭撫で2)
こ、これいつまで続けるんでしょうか?
先輩が顔を真っ赤にしたまま固まっています…。
そんな顔を観れるのは嬉しいのですが、それよりもお姫様抱っこされていることが気になりすぎて、先輩の顔を楽しむ余裕がありません。
うう、もっと先輩の顔見たいですが、恥ずかしくて見れません。
なんとか悶えそうになるのを抑えて、先輩の腕の中に収まり続けますが、もう限界です…。
さすがに胸が苦しいです…。
「せ、先輩、そろそろ…」
私が声をかけると、先輩がビクッと肩を震わせました。
どうやら先輩やっと意識を取り戻したみたいです。
私を少し睨むように見てきました。
ふふふ、照れさせられたからってそんな表情をしちゃって。可愛い先輩ですね。
これまでは一方的にやられてきましたが、今日は相討ちです。
恥ずかしかったですがこうやって結果が出ると頑張ってよかったです。私もだんだん成長していますね。
これからもっと頑張りますから覚悟していてください。先輩!
睨みつけてきた先輩に、少し余裕そうに見せつけます。
すると先輩は私を抱えたまま、ベッドの方へ歩き出しました。
わ、わぁ!?
な、なんていうんでしょうか?
お姫様抱っこのまま運ばれるなんていう、あまりに非日常な感じのせいでむず痒い嬉しさがあります。
そのままベッドに運ばれ、あと一歩でベッドの元に着くとなった時でした。
「あっ…」
「きゃ、きゃあ!」
先輩が床につまづいてしまったらしく、私と先輩はベッドに倒れ込みました。
「くそ、雨宮、大丈夫か?」
「せ、先輩…!?」
私に覆いかぶさるように先輩が倒れ込みました。
ち、近いです…!
先輩の顔と私の顔がくっつきそうなほどの距離です…!
どうしましょう、どうしましょう!
昨日のキスを思い出してしまい、顔が熱くなります。
もしかして、倒れたのわざとなんでしょうか!?
さっきの私みたいに狙って倒れたのでしょうか?
まさか、昨日私がキスをしたからって、先輩もキスを狙って…!?
い、嫌じゃないですが、まだ心の準備が…。
先輩の方を見上げると、先輩と目が合いました。
先輩の目はいつもより優しげで、ドキリと胸が高鳴ります。
ああ、心臓がうるさいです…。
ドクン、ドクンと心臓の音が耳の中で木霊します。
吸い込まれるように先輩の目を見続けていると、だんだん先輩の顔が近づいてきました。
え?嘘!?私キスしちゃうんでしょうか…!?
でも……、まだ早いです…!
するなら付き合ってからじゃないと…!
「せ、先輩!?」
まだキスをする覚悟がなかった私は、先輩に呼びかけます。
「…わ、悪い」
先輩はパッと身体を起こし、すぐに私から離れました。
あ、危なかったです…。
す、すごいドキドキしました…!
あんなに顔が近いなんて!好きな人の顔があんなに間近にあったら、もう見ているだけで限界です!
キスした方がよかったんでしょうか…。でも、やっぱりそういうのは、先輩の気持ちが分からないと…。
するべきだったのではないかとほんの少しだけ後悔が私を襲います。
そんな後悔が頭の中で渦巻いていると、
「雨宮も元気そうだし、もう帰るわ。身体お大事にな」
先輩がそう言って帰ろうとし始めました。
キスしそうになったことを気にしているのでしょうか?
確かに少し気まずいですが、それでもせっかく先輩に会えたのにこんなすぐに別れてしまうのはもったいないです。
もう少しだけ一緒にいたいです。
「ま、待ってください!」
帰ろうとする先輩をなんとか引き留めます。
「なんだ?」
「もう帰っちゃうんですか?」
もうちょっとだけでいいから一緒にいたいです。
「帰るぞ。それとも何か用事があったのか?」
「何もないですけど…」
「けど?」
「もう少しだけ一緒にいたいです…」
うう、やっぱりこういうことを言うのは恥ずかしいです…。
何回言っても慣れません。
引き留めて迷惑だったでしょうか…?
先輩が黙っているこの沈黙の間が怖いです。
嫌がられてしまったのでしょうか?
もしかしたら先輩が勇気を出してキスをしようとしてくれたのかもしれません。
そんな勇気を無碍にしてしまいました。キスした方がよかったのでしょうか…。
さっきキスをしなかったことの後悔がまた私を襲ってきます。
ああ、なんで私しなかったんでしょう…。
「じゃ、じゃあ、頭を撫でてやるから。それが終わったら帰る。それでいいか?」
「は、はい…!」
わ、わぁ!よかったです!もう少しだけ一緒にいてくれるみたいです!
やっぱり私の気にしすぎだったみたいです。
まったく、先輩の一挙一動に振り回されるんだから、恋というのは大変です。
まあ、こうやって振り回させるのが悪くないと思ってしまうんですから、私は重症ですね。
先輩の撫で方は気持ちいいから好きです。
普段冷たい先輩でも撫でている時は、私を優しく大切にしてくれている感じがするんですよね。
「じゃあ、触るからな?」
「は、はい…」
先輩に声をかけられると、先輩は私の頭に手を伸ばしてきました。
うう、やっぱり触られるこの瞬間は緊張しますね…。
今日は風邪でずっと寝ていましたし、髪がベタついていないか少し心配です…。
そんなことを考えていると先輩の手が私の頭に乗る感覚がしました。
さらさらと私の髪を梳いているのが分かります。
ちらりと先輩の方を見ると、優しげな目で手を動かしていました。
こういう姿が見られるから撫でられるのは得なんですよね。
「やっぱり先輩に撫でてもらうのは気持ちいいです…」
何度も撫でられ、あまりの気持ちよさについ正直に自分の気持ちを話してしまいました。
「そ、そうかよ」
私の言葉を聞くと、先輩は少し顔を赤くしてぶっきらぼうに言ってきました。
ふふふ、先輩また照れてますね?
そんな照れて顔を赤くしている先輩はもっと追い込んであげましょう…!
「疑っているんですか?本当に気持ちいいんですよ?先輩の撫で方は優しいですし、好きな人に触って貰えるのはそれだけでドキドキするんです」
今度はわざと正直に思っていることを先輩に伝えます。
私が自分の気持ちを口にするたび、先輩の顔はますます赤くなっていきます。
ふふふ、少しずつ余裕を失っていますよ、先輩?
余裕をなくしている先輩を見るのは新鮮で楽しいですね〜。
こんなに私のことを意識させられましたし、最後は私の勝ちですね!
勝利を確信した時でした。
急に先輩がわしゃわしゃと強めに頭を撫でてきました!
「ちょ、ちょっと、先輩!?そんな雑に撫でないでください!女の子の髪なんですからもっと大切にしないとダメです!」
もう、急になんなんですか!?髪がボサボサになっちゃうじゃないですか。
少しだけ先輩の方を見て睨みました。すると、
「うるさい、俺のことをドキドキさせてくるお前が悪い」
先輩は頰が赤いままそう言い残して出て行ってしまいました。
「え?先輩!?ドキドキしてたんですか!?」
ちょっと最後になんてことを言い残しでいくんですか!
もう、それはずるいです…!
最後にそんなことを言われたら、こっちだってドキドキしちゃうじゃないですか…。
私のことを意識してくれているとは思っていましたが、まさかドキドキしてくれていたなんて…。
んーーー!!!もう、想像するだけで悶絶してしまいます。
ああ、結局、最後は先輩にドキドキさせられてしまいました。
こうしてまたしても私と先輩は相打ちで終わったのです。