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被害26(家訪問)

「それにしても止まないですね」



先輩に見られて火照った身体は徐々に冷め、なんとか冷静に戻ります。



「そうだな」



すぐに止むかと思いましたがまったく止む気配はありません。



この後どうしましょうか…。まだ先輩と一緒にいたいですが、濡れたままでは風邪を引いてしまいますし…。



くしゅんっ。



今後を考えていたら、思わずくしゃみが出てしまいました。



やっぱり少し寒いです。冷えた二の腕あたり擦って温かくなろうとしますが、どうにも効果はありません。



はぁ、せっかく先輩と一緒にいられる大事な時間でしたのに、こんな雨なんて最悪です…。



もうお別れしなければならないんでしょうか…?冷えた体とともに心まで冷たくなっていきます。



「寒いのか?」



「少しだけ…」



寒さに耐えられず、体がブルッと一瞬震えました。



「俺も寒い。このままだと雨は止まなそうだし、俺の家行くか」



「…え?え!?」



え?今、先輩なんて言いました?私の聞き間違いでしょうか…?先輩の家に行く!?



想像しただけで心臓がもちそうにありません!いつも以上に近い距離に先輩がいるということですよね?そんなの無理です!



ドキドキと激しく脈打つ心臓に、身体の体温が戻り始めるのを感じます。



「そ、それって私も行くんですか?」



い、いいんでしょうか?私なんかが行って。家に入れてくれるってことはそれだけ信頼してもらっているということなので嬉しいです。ですか、男の人の家です…。なにかあったらどうしましょう!



べ、別に期待しているわけではありませんよ?た、ただ心配しているだけで…。



「当たり前だろ。このままここにいても風邪をひくだけだろ。それとも風邪をひきたいのか?」



「い、いえ!行きます!」



「じゃあ、もう行くぞ、走るからな」



「は、はい!」



ああ、もう!先輩は本当に突然です!もう少し心構えを作る時間を下さい!でも、もうここまで来たんですから、後はなるようになるでしょう!



私は半分やけくそになりながら、先輩の家に行くのにドキドキするのでした。



★★★



「ふぅ、着いたぞ」



「はぁはぁ、こ、ここですか…?」



息を切らしながらなんとか走って先輩の後を追い続けました。久しぶりに激しく動く運動に、力尽きて思わず手を膝に置いて呼吸します。



どうやら着いたようで、先輩の家は一人暮らしのアパートでした。



「そうだぞ、早く入れ」



「お、お邪魔します…」



先輩に促されるまま、中へ入ります。



入るだけで緊張します。自分でもわかるくらい心臓が激しく動いています。



入った瞬間、私の好きな先輩の匂いがふわっと香りました。思いがけないことで、キュンと小さく胸が締め付けられました。



やっぱりこの匂い、落ち着きます…。



「ちょっと、待ってろ。タオル取ってくる」



「は、はい!あ、ありがとうございます」



先輩の家の匂いに包まれて、幸せを感じていると声をかけられ、つい変な声を出してしまいました。



危なかったです…。先輩がいるのを忘れてました…。



「ほらよ」



奥の部屋の方へ行き、物音がしばらくしていると、こっちに戻ってきてタオルを渡してくれました。



「あ、ありがとうございます」



まだ香る先輩の匂いを気にしつつ、貰ったタオルで服の水気を取っていきます。



「ある程度拭いたら、シャワー浴びてこいよ。バスタオルと服はこっちで用意しておくから」



「…え?」



今、なんて言いました!?お風呂って言いましたよね!?それって……。



「おい、タオル落としてるぞ」



「…あ、すみません…って、え!?え!?」



タオルを渡され、自分が意識を失っていたことが分かりました。



せ、先輩の家で裸になるってことじゃないですか……!



お風呂に入る、その意味をやっと理解します。恥ずかしすぎます!例え、扉を隔てていようとも、同じ建物に先輩がいるなんて……!



理解すると同時に 顔に熱が集まりだし、どんどん熱くなっていきます。



「タオルで拭いても服は濡れたままだろ。そのままだと風邪引くぞ。シャワーで身体温めて、俺の服貸してやるから着替えてこいよ」



「わ、分かりました…。こっちでいいんですよね?」



もう、照れてばかりはいられません。先輩に意識してもらわないと!



お風呂上がりなら少しは色気が出るかもしれません。出なくても普段とは違う姿なんですから少しはドキッとしてもらえるかもしれません。



せっかく先輩の家に入れてもらえたのです。こういう機会でも生かしていきます!



華に背中を押され、これまで照れてばかりでまったく何も出来なかった私は少しだけ積極的になる覚悟ができました。



「ああ、そこ入ると中に着替えるところあるから。あとこれがバスタオルと服な。じゃあ」



案内され浴室に入ります。



「あ、先輩!」



部屋に入ろうとする先輩に、浴室から顔を出して声をかけます。



「どうした?」



「お風呂ありがとうございます。でも覗いちゃダメですよ?」



「覗かねえよ。とっとと入って来い」



「ふふふ、先輩ならそう言うと思ってました!でも本当は少しなら先輩に覗かれてもよかったんですよ?」



恥ずかしいですが、際どいセリフだってなんだって言います。それで少しでも先輩にドキリとしてもらえるなら、どんなことでもします。



告白で好きと伝えました。頑張って距離を詰めました。あと私に出来ることは、行動を変えることぐらいです。



先輩から少しでも信頼を得ている今こそが積極的になる時です。



浴室に引っ込み、頬を触るとやっぱり顔が熱くなっていました。



でも、今のセリフは私にしては頑張ったと思います!



上手くいったと自分の成果に満足して、シャワーを浴びる準備を始めます。



や、やっぱり、異性、それも好きな人がいる空間で脱ぐのは恥ずかしいです…。



ドキドキしながら、上、下と全部脱いでいきます。



シャアアア。



シャワーを使ってお湯を流し、浴びはじめました。



雨で冷え切った身体がじんわりと芯から温まるのを感じながら、この後のことを考えます。



この後は何をしたらいいんでしょう…。



先輩のことを意識しすぎてまともに話せる自信がありません。



一体なにについて話したらいいんでしょうか?これまでどうやって話していたんでしょうか?



緊張と期待のドキドキで集中できず、考えがまとまりません。



考えすぎていたら、若干のぼせてしまいました。



ぼうっとする頭を動かして、浴室から出ます。



奇跡的に下着はそこまで濡れていませんでした。なのでそのまま着直します。下着を着ながら、目の前に置かれたジャージに目を引かれていました。



こ、これってもしかして普段先輩が着ているジャージなんでしょうか……?



い、いいんでしょうか?これを私が着て。



好きな人のジャージを着るなんて、なんかいけないことをしている気分です。



恐る恐る手を伸ばして先輩のジャージを手に取り、被ります。



わぁ!ものすごいいい匂いがします!絶対、これ先輩がいつも着ているジャージです!



先輩に抱きしめられているみたいで、着ているだけでドキドキします。



火照った体がさらに熱くなっていきます。



もう、先輩はいるだけで私をドキドキさせるんですから、困った人です……。



それにこんなに大きいのを着ているなんてやっぱり先輩は男の人なんですね…。



着替え終わり、大好きな先輩の匂いに包まれたまま、私は部屋の方へ移動しました。



「先輩、お風呂ありがとうございました!」



幸せすぎてつい、テンション高く挨拶してしまいました。先輩が少し驚いています。



「やっぱりこのジャージ大きいですね。こんなジャージを着れるなんてやっぱり先輩も男の人なんですね。ちょっとドキッとしちゃいました」



恥ずかしいですが、少しだけ本音を見せてしまいます。どれだけ先輩のことを意識しているのか知ってほしいです。



「あ、そう。それよりトイレ行ってくるわ」



ちらっと私の言葉に対する反応を伺うと、まったく動揺を見せずに、スタスタとトイレに行ってしまいました。



「ちょっと先輩!?『あ、そう』はないですよ!反応してください!そこはドキッとして私にときめくところでしょう!?」



こんなに恥ずかしい思いをしてまで頑張っているんですから、少しは意識してください……!



ムッと頰を膨らませ、抗議をしますが先輩にはまったく通用しませんでした。






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