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被害22(膝枕)

「ふぅ、美味かった。雨宮、作ってくれてありがとな。ごちそうさまでした」



「こちらこそ、お粗末さまでした。先輩が喜んでくれたようで嬉しいです」



結局、先輩を意識させるはずが私がドキドキしただけでした。少しはドキドキして欲しかったです…。



まあ、喜んでくれたようなのでそこは満足なのですが。



「明日も頼むよ」



「え!?明日もですか!?い、いいですけど…。で、でも、作ってくるだけですからね?」



やりました!先輩と明日もまた一緒にお昼ご飯を食べれます!とても嬉しいのですが、またあーんをするのはさすがに恥ずかしいです…。



「なんだ、食べさせてくれないのか…」



「も、もう!分かりました、また食べさせてあげますから…」



そんなしょんぼりした顔しないでください!私が悪いことしてるみたいじゃないですか…。



そんな顔されたら、あーんするしかないです。



明日のことを考えると恥ずかしくて、先輩の顔が見れません…。



「そうか、ありがとう」



そう礼を言って先輩は静かになりました。



私と先輩の間に沈黙が漂います。ですがこんな沈黙は慣れたもので、不快ではなくむしろ心地いいです。



先輩が心を許してくれている感じがするので私はこの雰囲気が好きです。



それにしても、静かです…。あれ?先輩?



あまりに静かすぎるので先輩の方を見ると頭を揺らして今にも寝てしまいそうです。



時節、眠そうに目をしぱしぱさせたり、目を擦ったりする姿は普段の達観した冷たい感じからは想像もつかないほどあどけなくて、見ていて癒されます。



ふふふ、とても可愛いです。こんな姿を私だけしか知らないと思うと嬉しくなります。



「先輩、眠そうですね。教室に戻りますか?」



眠そうにしているのに無理に起こしているのも悪いので、そろそろ帰りましょうか。



帰るために立ち上がります。



「ああ、そうだな…。いや、待て!」



「ひゃい!?な、なんですか?」



立ち上がった途端、急に手を掴まれました!



もう!なんなんですか!?そんな突然手を掴まないでください!ドキッとしちゃったじゃないですか!



本当に先輩は私をときめかせる天才です…。先輩のそばにいるとすぐドキドキしてしまいます。



「眠いからここで寝る。だから膝枕をよろしく」



「ひ、膝枕ですか!?」



膝枕ってあの膝枕ですよね!?私の太ももに先輩の頭が乗るんですよね!?



「ほら、早く来いよ」



私が躊躇っていると先輩は移動してベンチに座り隣をポンポンと叩いて私を呼んできます。



「えっと…。わ、分かりました…」



は、恥ずかしいですが、頑張ります。先輩にドキドキしてもらうためにはやっぱりくっつくことが1番だと思いますし。



膝枕をするとは決めましたが、やっぱり恥ずかしいです。変に緊張して歩き方までおかしくなってしまいました。



ああ、もう!心臓がうるさいです。先輩に聞こえてしまわないでしょうか?こんなに意識していることがバレたら、恥ずかしすぎます。



結局、ぎこちない動きを治すことができず、そのまま先輩の隣に座りました。



さすがに先輩も気付いたのか話しかけてきました。



「緊張してるのか?」



「当たり前じゃないですか。好きな人に膝枕するのはとてもドキドキするんですよ?」



好きな人に触られただけでもドキドキするのに、膝枕なんて恋人っぽいことなんかしたらなおさらドキドキするに決まっています。想像している今でさえうるさい心臓が鳴り止みません。



でも、こんなこと誰にでもするわけじゃないんですからね?大好きな先輩のお願いだからしてあげるんです。



大好きな先輩が喜んでくれると思うからしてあげられるんです。他の人だったらしていません。たった1人の先輩という男の人に私のことを意識して欲しいからしてあげるんです。



声に出せない想いが心の奥底で募ります。



「…っ。知らねえよ。なんて言おうとも膝枕してもらうからな」



私の言葉にぶっきらぼうに返事が返ってきました。



少しは意識してもらえたのでしょうか?



先輩の目線が左右にわずかに揺れました。



もしも意識してもらえたなら嬉しいです。もちろん、今の先輩の動きも私が都合のいいように捉えているのは分かっています。



でも、それでも私は先輩がドキッとしたという事実が欲しいのです。好きな人には意識されたいんです。



「は、はい。ど、どうぞ」



自分の太ももに寝られる空間を作ると、スッと先輩が私の太ももに頭を乗っけました。



じんわりとした温かさがスカート越しに太ももに伝わってきます。



私の膝枕、気に入ってくれるでしょうか?覚悟はしましたが恥ずかしいですし、好きな人に触られるのは緊張もします。



こんなに近くに先輩の体温を感じるなんてドキドキします。身体が熱くなってきました…。ああ、もう!今頃顔は真っ赤です…。



「ど、どうですか?」



「いい感じだ」



「そ、そうですか…。なら、よかったです…」



もの凄い満足げな表情でしたのでよほど気に入ったのでしょう。そんな先輩の姿に緊張が解け、ほっと息を吐きます。



それにしても寝ている先輩は本当に可愛いです。こんなこと言ったら絶対嫌な顔をしそうですが。



先輩が寝ているのをじっと眺めているとふさふさと風に揺れる髪に目を惹かれます。



前から思っていましたが先輩の髪、凄いサラサラしてますよね。とても触り心地が良さそうです。



だんだんと触りたくなってきてうずうずします。



「あ、あの、先輩…!」



「どうした?」



「あ、頭、撫でてもいいですか?」



「頭?いいけど…」



「じゃ、じゃあ、撫でますね…」



許可貰ってしまいました!これで遠慮なく触れます!



恐る恐る先輩の頭に手を伸ばします。



わ、わあ!先輩の髪の毛、想像以上に柔らかいです。スルスル指の間を抜けていく感じか気持ちいいです。



これは癖になります。何回も撫でたくなります。



それに撫でるたび先輩が目を気持ち良さそうに細めるので、見ていて凄い癒されます。



ふふふ、本当に可愛いです。



「どうですか?」



「ああ、気持ちいいぞ…」



先輩からは落ち着いた柔らかい声で返事が返ってきました。



本当に寛いでいるようで嬉しいです。ああ、もう!本当に大好きです!



私は自分の太ももで寝る愛しい先輩の姿をずっと眺め続けるのでした。

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