被害21(お返し)
先輩からお弁当をもらった次の日、いつも通り先輩の教室へ向かいます。
はぁ、昨日の先輩のお弁当は本当に美味しかったです!
それにあんなにたくさんあーんしてもらえるなんて夢のようなひと時でした…。
ま、まあ、知り合いに見られながらというのはとても恥ずかしかったですが…。
先輩達と別れた後、華には散々弄られてしまいました。
『先輩にあーんしてもらっている時のえりは幸せそのものだった』って言われましたが、そんなに緩んだ顔をしていたのでしょうか…。
顔を引き締めようとしてもあんなにドキドキするようなことされたら顔は赤くなりますし、にやけが抑えられるはずがありません。
いちゃいちゃといえばいちゃいちゃなんですが、先輩のあの感じを見ると、多分いちゃいちゃしている意識はないんでしょうね…。まったく困ったものです。
そんなことを考えていると先輩の教室に到着しました。
「せ〜んぱい!昨日のお弁当は本当にありがとうございました!」
「それで、先輩!」
「ん?どうした?」
お弁当のお礼に私もお弁当を作るのを提案しても大丈夫でしょうか…。全然不自然じゃないですよね?
先輩なら受け入れてくれると思いますが、それでも緊張します…。
「よかったらでいいのですが…その…、お弁当のお返しに私も先輩のお弁当を作ってきましょうか?」
緊張のせいでつい早口になってしまいました。どうでしょうか?
先輩の反応が気になりちらっと先輩の方を見ます。
「本当か!?ぜひ頼む!」
わ、わぁ!先輩が凄い食いついてきました!心なしか顔が輝いている気がします。
こんなに喜んでくれるのは嬉しいです!ですが…
「そ、そこまで喜んでくれるのは嬉しいのですが…、先輩の料理ほど美味しくはないですよ?」
先輩のお弁当は本当に美味しかったですし、私の作るお弁当でも味を期待しているのではないでしょうか…?
全然作り慣れていないですし、不味いとか思われたらどうしましょう…。だんだん不安になってきました…。
「そんなことはどうでもいいんだよ。雨宮のが食べたいんだ」
「!?せ、先輩がそこまで言うなら作ります…」
その言い方はずるいです。キュンとしちゃいます。本当に不意打ちでかっこいいことを言ってくるのはやめてほしいです。心臓に悪すぎます…。
そんなに楽しみにしてくれるなら私としてもやる気が出てきました!
「ああ、頼むよ」
「ふっふっふっ。せ〜んぱい?一生懸命作って先輩の胃袋をがっちり掴んであげますから覚悟していてくださいね!」
絶対先輩が満足するようなお弁当を作って、また作って欲しいと言わせてみせます!
そしたらまた屋上で2人で一緒に過ごせますし、成功させないと!
こうして私は気合を入れてお弁当作りに取り組むのでした。
★★★
次の日、私はかなり早めに起きて弁当の準備に取り掛かっていました。
先輩には美味しいと思って欲しいですし、出来る限りのことはしておきたいです。
そして笑顔になってくれたらもう最高です…!まあ、流石に先輩が笑うことはなさそうですが…。
そんなわけで慣れない包丁を使いながら、色々料理を作っていきます。
トントントントン
台所に包丁の音が響き渡ります。
「いたっ」
指先に痛みが走り、血がつぅっと流れ出てきます。
はぁ、これで3回目です。慣れていないのは分かっていましたが、ここまで来るとやっぱり私は不器用ですね。
痛いけれど、先輩に喜んでもらうためなら頑張ります!あんなに嬉しそうな顔を見せられたら誰だって頑張りたくなるもんです。
こうして怪我を負いつつもなんとか無事お弁当は完成し、運命の昼休みに突入しました。
前回と同じように屋上へと移動します。
「せ、先輩。お弁当をどうぞ」
早速、座り鞄からお弁当を取り出します。先輩どんな反応をするでしょうか…。少し不安で手が震えてしまいます。
「おう、ありがとう」
そう礼を言ってくれた先輩の目は弁当に添えた私の手を見ています。
「…っ、弁当を開けるぞ」
私の手をじっと見ていた先輩は、少し動揺した声を出してお弁当の蓋を開けます。
一体どうしたんでしょうか?変な先輩です。
「じゃあ、頂きます」
弁当の前で手を合わせて挨拶をし、お弁当の具材を一つ箸で取りパクリと食べました。
「ど、どうですか…?」
美味しいって言ってくれるでしょうか?それとも不味いって言って嫌がられてしまわないでしょうか…?
不味くはないと思いますがやっぱり不安です…。
先輩がどんな反応をするか、じっと見守ります。
先輩はもぐもぐと口を動かしゴクンと飲み込むと口を開きました。
「めっちゃ美味い」
「…っ!?そ、それならよかったです」
なんですか、その笑みは!?初めて見ました!この前見せてもらったいたずらっ子のような笑い方と全然違います!
柔らかくて普段からは想像もつかないほど優しい笑い方です。そんな優しい笑みを浮かべられたら、ドキドキしちゃうじゃないですか…。
ああ、もう!顔が熱いです…。首まで熱くなってきました…。
そういう不意打ちはずるいです。私ばっかりドキドキさせて…。
絶対先輩もドキリと意識させてみせます!
「先輩、もうお返しは終わったと思っているでしょう?でもまだお返しは終わってないんですからね?」
そう言って、先輩の箸を奪ってお弁当から具材を一つ取り出し、口元に差し出します。
「先輩も昨日してくれたんですから、私もしてあげますね?」
さあ、どうですか、先輩!あーんは流石に意識するでしょう?こんなに私をドキドキさせた責任とってもらいますからね!私と同じ感覚を味わってください!
やっぱりあーんする側というのも恥ずかしいですが、それよりも先輩にやり返せた自信でついにやにやしてしまいます。
さあ、あーんにドキドキして下さい!
「うん、上手いな。もう一回、よろしく」
「え!?またですか!?わ、分かりました…」
え?あれ?思ったより普通に食べてしまいました。全然意識しているように見えません。
ですがあーんは気に入ったようで、もう一回と急かされました。気に入ってもらえたのは嬉しいのですが、少しはドキッとして下さい…。
あーんしているこっちだって恥ずかしいのに…。
丁寧に具材をもう一度食べさせてあげますと、
「もう一回、頼む」
先輩はパクリと食べ、もう一度お願いしてきました。
「またですか!?わ、分かりました…。食べさせるの結構恥ずかしいのですが…」
もう何回お願いしてくるのでしょうか…。さすがにこんなにあーんをするとは思っていませんでした。
何回もしていたらさすがに恥ずかしくなってきます…。
まあ、先輩が食べるたびに満足げな表情を浮かべるのでそれを見れただけで満足です。
結局、私は仕返しをしたはずが顔を赤くしながら何度も先輩に弁当を食べさせることになるのでした。
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