意地悪1(お手伝い)
どうも、俺は神崎裕也。
最近、後輩に懐かれて眠れなくなってしまったのが悩みだ。
俺はこの悩みを解決する方法を思いついた。
『後輩に意地悪をして嫌われる』という方法だ。
何度無視しても話しかけてくる人は初めてだ。
だが嫌われれば向こうから話しかけてくることはなくなるはずだ。
そんなわけで雨宮に意地悪するため、彼女を探しに一年生フロアに来たわけだが、なかなか彼女の姿が見当たらないな。
キョロキョロと見回していると見慣れた後ろ姿を見つける。
お、あの後ろ姿はあいつだな。やっと見つけたぞ。
目的の対象人物に話しかけようと後ろから近づいてみる。
ん?あいつプリント持たされているのか?
雨宮は重そうに沢山のプリントを抱え、ヨタヨタと足元がおぼつかない状態で歩いていた。
なるほどな。あいつは大方プリントを職員室に運ぶ仕事を任されているのだろう。
くくっ、意地悪を思いついたぞ。
あいつのプリントを奪って俺が運んでやるのだ。
そうすれば先生は『雨宮さんはまともに仕事をこなせないで、しかも他の人に仕事を押し付けるような最低な人』と思うに違いない。
よし、早速実行だ。
「おい、雨宮」
「え!?先輩!?なんでここに!?来るなら先に言ってくださいよ。もう少し髪とか整えたのに…」
目を大きく見開き驚く雨宮。驚きの声を上げた後、髪をしきりに気にしながら小さく呟く。
確かに俺とこれまで会っていた時よりは、少し髪の毛が乱れているかもしれないが気にしすぎだろ。
「たまたま一年生フロアに用があってな。それよりそのプリント重そうだな。俺が持ってやるよ」
「え!?あの…」
なにか言いたげだが有無を言わせず、ひょいと雨宮が持っていたプリントを奪い持つ。
「どこに持っていけばいいんだ?」
「えっと…。職員室です」
「オッケー、じゃあ行くぞ」
俺は作戦が上手くいったことに満足して、隣で俯きながら頰を赤らめている雨宮に気づくことはなかった。