意地悪14(あーん)
映画を観終わり外に出た。
「結構面白かったな。どうだった雨宮?」
見るのは2回目だったが面白い作品は何回見ても面白いものだ。
「……」
返事がないので雨宮の方を見ると、雨宮はポーッと頰を少し赤らめながら、遠くを見つめていた。
「おい、雨宮」
「…ひゃ、ひゃい!何でしょう先輩!?」
肩を叩いてやると、ビクッと体を震わせこちらを振り向いた。
「なんだ、聞いてなかったのかよ、映画面白かったか?」
「え、映画ですね!えっと…。あっ!あの爆発のシーンとか死んでいる人がゾンビとして復活するシーンとかは良かったですね!」
「そうか」
やたらと前半の部分しか言ってこなかったのは気になるが、まさか映画を楽しむ余裕があったとは。
俺の意地悪が足りなかったらしい。あんなに顔を赤くしていたから結構追い詰めていたと思ったんだがな。
だが、これから意地悪を畳み掛けるのだ。最後には追い詰められ激怒しているに違いない。
くくく、雨宮、お前は俺の意地悪に耐え切ったと思っているだろう。
そんな安心して腑抜けているところに意地悪を畳み掛けてやるからな。楽しみしておけよ。
次の作戦の場所に移動するか。
「よし、雨宮。そろそろいい時間だし、お昼にするか」
「そうですね!どこ行くんですか?」
「ああ、一応△△△ってところなんだが、そこでいいか?」
「すごい!要予約のお店ですよね!?まさか予約までしてくれていたなんて…」
「まあな」
俺の計画が狂わないよう予約の店を選ぶのは当然だ。
「ふーん。それにしても先輩〜?予約してくれるなんてそんなに今日私と出かけるの楽しみにしてくれていたんですね〜?」
ニヤニヤとからかう表情で見てくる雨宮。
その顔ほんとに腹立つな。さっさと予約した店に向かうとするか。
雨宮の質問に俺はぶっきらぼうに言い放って移動しようとする。
「ああ、楽しみにしてたぞ。それより早く店行くぞ」
楽しみなのは当たり前だ。上手くいけば明日から学校での安眠が戻ってくるのだから。
「え?え!?えー!?」
俺の返事を聞いた雨宮から余裕な笑顔が一瞬にして消え去り、だんだんと顔が赤く染まっていく。
「何そんなに赤くなってんだよ。早く行くぞ」
未だ立ち尽くして動こうとしないので、俺は雨宮の手を引いて店へと歩き出したのだった。
結局迷うことなく無事、店に着いた。
中に入ると席へ案内されそのまま座る。
「先輩!噂に聞いたとおり、凄いお洒落な店ですね!」
「お、おう、そうだな」
雨宮は目を輝かせ、楽しそうにキョロキョロと周りの装飾品を見ている。
くくく、まさかここが俺の作戦の舞台だとは思うまい。せいぜい、今のうちに楽しんでおくんだな!
「あ、先輩!メニューありましたよ。どれにしますか?」
よほどワクワクしているらしい。まさかメニューの存在を忘れていたとは。
「お前が先に見ろよ」
雨宮に先に選ばせてやる。これも作戦のためだ。
「ありがとうございます!」
そう礼を言ってパラパラとメニューをめくって眺めている。
しばらく眺めていたが、何やら悩んでいるようで、むーと口を尖らせて唸っている。
そんな姿でさえ可愛いのだから美少女とはお得なものだ。
「何と何で悩んでいるんだ?」
「えーと、これとこれのどちらにするか迷っているんです」
「じゃあ、両方頼もう。片方は俺が食べるから。少し分けてやるよ」
「いいんですか!?ありがとうございます!」
満面の笑みでお礼を述べてくる雨宮。
くくく、これが作戦とも気付かないでお礼を言いおって。
雨宮が2品で悩めばいいなとは思っていたがまさか理想通りになるとは。2品が残れば雨宮が注文しなかった方も食べる理由になりやすい。
神はやはり俺の味方だ。
注文し終え、しばらく待っていると料理が運ばれてきた。
雨宮が頼んだのはほうれん草のクリームパスタであり、俺が頼んだのはきのことベーコンの和風パスタだ。
「わあ!!」
運ばれてきた料理を前に雨宮は歓声にも似た声を上げる。
「先輩!早く食べましょう!」
「わかったわかった」
「「いただきます」」
雨宮はクルクルとフォークを使い一口サイズにパスタをまとめると、口に入れた、
「んーー!!先輩、凄い美味しいですよ!」
その姿はまさに幸せそうで見ているこっちまで温かくなってしまうほどであった。
もぐもぐと頬張る姿は小動物的で非常に愛らしい。愛でたくなる欲求がむくむくと湧き上がってくるがなんとか抑え込む。
危ない危ない。こんなことに気を取られている場合ではない。早く作戦を実行しなければ。
「随分美味しそうに食べるな」
「それは料理が美味しいからですよ!」
「そうか。こっちのパスタも食べるか?」
「あ、そうでした!パスタが美味しすぎてすっかり忘れてました」
「まったく、あんなに悩んでたのに忘れるなよ。ほら、やるよ」
「え?せ、先輩!?」
くくく、狼狽えているな。
俺は今、雨宮の目の前にフォークに巻きつけたパスタを差し出しているのだ。
このまま食べれば、俺の前で口を開けその間抜け面を見せることになる。そんな姿を見せるのは屈辱以外のなにものでもないはず。これが俺の作戦だ。
さあ、雨宮!お前の無様な姿を俺に晒せ!
「どうした?食べないのか?」
「た、食べます!」
顔を真っ赤に染め、おそるおそるゆっくりと差し出したパスタをくわえてフォークから抜き取る。
「どうだ、美味しいか?」
紅葉より真っ赤な顔でもぐもぐを口を動かしている雨宮に問いかける。
「え、えっと…よく、わからなかったです…」
「なんだよ、分からなかったのか。じゃあもう一回食べるか?」
「い、いえ!もう大丈夫です!これ以上は流石に限界です…」
そう言って耳まで真っ赤のまま黙ってしまった。
どうやら作戦は上手くいったようだ。屈辱で雨宮は黙ったようだしな。
こうしてお店での意地悪は成功を収めたのだった。
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