意思疎通は大事
「うむ?……話していなかったか?実はな、お主に頼みたいことがあるのだ。その頼みを聞いてくれるのであれば、我にできる限りの便宜を図ろう」
「た…頼みって、なに?魔王を倒せとか、この世界を救えとか言われても、ただの女子高生にそんな力はないと思いますけど…?」
「いや、そんな事は頼まないから安心するといい。勿論お主がやりたいと言うのなら止めはしないが」
「いっ、いえっ、結構です!やりません!そんな怖いこと無理ですから」
「そうか、ならば話を戻そう。我がお主に頼みたいのは、この世界に咲いている花を見つけて欲しいのだ。その花を見つけたら、町にある神殿に供えて欲しい」
「花?」
神様たってのお願いだと言われたから、とんでも無いことをお願いされるんじゃ無いかと戦々恐々としていたんだけど、聞いてみたら拍子抜けしてしまった。だって、花を探せって…。
それとももしてかしてとんでもない花なのかしら?
「花を探して供えればいいの?」
「ああ、そうだ」
「それって、探すのが凄く大変で、魔物と戦ったりしなきゃいけないとか?」
「まあ残念ながら魔物の跋扈する世界じゃからの。魔物と遭遇しないとは言い切れんが、そんなに危険な場所でなければ咲いていないわけではない」
「でもそんな程度のことなら、この世界の人でも良かったんじゃないですか?」
話を聞く限り態々違う世界で消えかけた魂を拾ってくる必要はなかったんじゃ無いかと思うんだけど、そんなことを思いながら神様を見上げれば、困ったように視線を彷徨わせていた。
「それがお主でなければ見つけられんのだ。この世界で生まれ育ったものは、大気の中に神の気が混じっていることを知っている。それゆえ、人も動物も植物も神気を吸って育っている、故に神気が宿った花があっても見分けがつかんのだ。だが、魔法も神気もない地球から来たお主なら、我の気を見分けられるのだ」
どうだ!と言わんばかりのドヤ顔で踏ん反り返られても、どうしたら良いんでしょう?
とりあえず私には神様の、エーヴァルト神様の神気を見分けられるってことで納得してしまおう。うん、これ以上説明されても理解できそうにないし。
7割くらい諦めの極地でハイハイと頷いて見せると、神様もそれ以上説明のしようがなかったのかこの話はこれで終わりとばかりに、別の話題に移ってしまった。
「さてどこまで話していたかの。……ああそうだ、加護の件だったな。話が戻るが、お主には我の神気を宿した花を探して旅をしてもらわねばならぬ。それ故旅に出るに当たって不便をしないよう、最大限の配慮を約束しよう」
「え?いや、あんまり異常な力とかは…」
さっきの超美少女事件の事といい、この神様悪気はないんだろうけどやりすぎな感じがするんだよね。
加護も程々でお願いしたい。ありえないチートはいらないのだ。
「生活魔法は基本として、多少の怪我は治せるように治癒魔法だろ、後は最低限身を守るための攻撃魔法。それから、各地を旅してもらわねばならぬからな、地形探査に気配探知、あとは無限収納あたりかの?」
「えーと、なんか凄いんですけど。これってこの世界の人に知られたら大変なことになったりしませんか?」
過剰なチートは要らぬトラブルを招きかねない。
そりゃ知らない世界で苦労するよりは楽できた方が嬉しいけど、それで面倒なことになるのは嫌だな。
「今与えたものはこの世界で活躍している者達ならば持っている程度の力だ、お主が持っていてもそう不審がられることはあるまい。むしろ今から与える加護の方が希少だな」
「うーん、それなら良いんですが、出る釘は打たれるっていうし、あんまり目立ちたくはないんですよね」
「心配するな。我の与える加護は知識だ。この世界におけるお主の知りたいことを教えてくれる知識を授けよう。いでよ、ソニキア!」
私の心配をよそに、優雅に手を挙げた神さまが名前を呼ぶと、空からひとひらの花びらが舞い降りてきてその手にそっと落ちた。神様の手のひらに落ちた花びらはクルリと小さく渦巻くと、白い光を放ちながら回り続け真っ白な子猫の姿に変わった。
「わっ、可愛い」
エメラルド色の瞳をした白い子猫、超可愛いんですけど。手乗りサイズなのがまたたまらなく可愛い。
「ソニキアは知識の賢者、カルダナの弟子だ。お主は今、この世界の子供で10歳といった所だから、ソニキアにこの世界のことを学びながら、しばらくは子供として暮らすが良い。お主の準備ができたら花を探しに出かけてくれると助かる」
「え?今すぐ出かけなくて良いんですか?」
読んでくださってありがとうございます。