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第6話 先住動物

鳥を捌く表現が後半にございますので苦手な方は注意してください。

「さてと……」


 俺は夜が明けるとすぐにホープの倉庫をはじめ、船内を漁ってサバイバル生活に必要な道具を船外へと運び出す。

 倉庫から持ってきたホープ内の物資を確認して、現状に出来ることできない事、必要な行動などを割り出していかないといけない。


「なかなか、厳しいな……」


 ほとんどの物資をホープを修理するためにミケル、カイル両名が利用してしまっている。

 緊急用の資材と、いくつかの生活用品以外残っていないというのが現状だ。

 最新のマシンはほとんどマイクロマシンを流用しているため、古典的な道具以外使用が出来ない現状を考えると、本当に限られた物しか使えない。 


「まずは何よりベース作りだな」


 それでも、軍時代はこういう状況は何度も訪れているし、訓練も重ねてきた。

 全ての装備を外した行軍服一丁で、山岳地帯や森林地帯、砂漠地帯を越えるような常軌を逸した訓練や命令をこなして今ここに立っている。

 その時に比べれば天国のようだ。


「まずは森の一部を利用してベースを作るぞ」


 流石に湖畔に人工物をドーンと建てるわけにもいかない。出来る限り隠匿性を持たせる必要はある。

 まだこの星がどんな星かわかっていない。もしかしたら深刻な敵が存在している可能性も考慮しなければいけない。


「ツリーハウスにするか」


 うっそうと茂った森の木々を利用して、樹上の家を計画する。


「こんなに立派な木、道具がなければどれだけ苦労したか……」


 枝に石を括りつけて石斧を作って木々を加工した過去の記憶がよみがえる。

 もう消えたはずの大量のマメが痛んだような気がした。

 俺はブレードを起動して木に当てる、まるでバターでも切るように木の中にブレードが吸い込まれていく。少しだけ残してブレードで切れ目を入れて、少し力を入れてやれば自重によってメキメキと木が折れ、倒れていく。

 同じ要領で木の表面の皮を削いで、ただの丸太を木材へと変えていく。

 

「気持ちいい~~」


 スルスルと剥けていく皮は実に気持ちいい。

 この皮も屋根材や壁材の下地にしたりとしっかりと利用していく予定だ。

 超高速で振動している刃によって自由自在に切り出せる木材は、ほぞと言われる加工によってくみ上げていく。木々に木材を貫通させる穴をあけて複数の木の間に木材による足場を作り上げる。

 ツリーハウスと言っても野生動物からの身の安全を確保するために高所に作るだけで、地面からは2m程も高ければ十分だ。

 かなりの重労働にはなるが、ここで妥協すると枕を高くして眠れないのでここは頑張っておく。

 もう全身の筋肉がパンプアップして悲鳴を上げるが、おじさん、頑張るよ。

 辛いときは周囲の警戒をしてくれているちょこちょこと歩き回っている子犬と子猫を見て気持ちを奮い立たせる。


「し……しんどい……」


 体の働きを補佐するマイクロマシンも、パワーアーマーもない状態での肉体作業に体の節々、特に腰が悲鳴を上げ始めたので、休憩と昼食を取ることにする。

 軽く地面を掘って、周囲に風よけを組む。空気の通り道をしっかりと下から上へ流れるように作る。

 小枝を組んで火種を移して少しづつ大きな木材へと移していく、この作業は、中毒性が高い。

 

「火を起こすだけで、どうしてこんなに楽しいのだろう……」


 湖の水を煮沸し、ろ過装置に注いで飲料水を作っておく。

 今日のメニューはフリーズドライされているパックにお湯を入れて戻して、それを直火で軽く焼き目をつけただけの保存食だ。

 しかし、これが旨いんだ。

 保存食の質も高いのもあるが、直火であぶるだけでなぜかうまい。

 さらに外で食べることによって、まるでリゾート地で優雅にキャンプしているような気持ちになる。

 

「自然豊かな森をバックに美しい湖を眺めながら食事、贅沢だなぁ……」


 インスタントのコーヒーを飲みながら現状の優雅さに酔いしれる。

 これだけの自然の残った場所はよほどの金持ちでもなければ縁がない。

 俺のような一般人は立体映像や、人工的に作られた場所で楽しむ意外ない。


「ま、自然由来か造り物かなんて、俺にはわからないが……

 せっかくの環境をたっぷり楽しませてもらおう」


 いろいろな物が自動化している世の中、逆に人の手でいろいろなことをやる行為が娯楽になっているんだから、人間ってのは根本的には頭が悪いのかもしれないな……


「ワンワンワン!」


 コーヒーの香りと景色を楽しんでいるとカイルがズボンをかじって引っ張っている。


「どうした何かあったのか?」


 その姿が微笑ましくて目じりが下がるが、どうやら何かを発見したらしい。

 カイルがなるべく音を立てないように指示してきたので、出来る限り静かにカイルの後を追って森へと入っていく。

 その先にはミケルが身を潜めていた。

 尻尾で指される先には、鳥がいた。

 キジに似ている……大きさは目算で50㎝程、茶色い羽根の波のような紋様が美しい。

 倒木の上に立って隣の木々に生っている小さな果実をついばんでいる。

 この星にも当然生命体が住んでいるとは思っていたが、自分の知っている生物と非常に近くて驚いた。

 同時に、あれは食えるのではないかという疑問が頭をよぎる。

 いくら食糧がある程度備蓄があっても、いずれ尽きる。

 農業はやるつもりだが、やはり動物性たんぱく質は欲しい。

 俺は、鶏肉が好きだ。

 そーっとバックパックから武器を取り出す。小型の銃だが慎重に狙いを定めて引き金を引く。


「ギッ!」


 短い悲鳴を上げてその鳥は倒れていく、マイクロマシン補正がなくてもなんとか当てることが出来た。


「血の色は……赤いんだな……」


 動かなくなった鳥を持ち上げてなんとなく口から出た言葉はそんなセリフだった。


「二人ともありがとう、とりあえず少し調べないとな……」


 血抜きのために首を落としてさかさまに木の枝につるす。

 ちょうど近くに蔦状の植物があったので使わせてもらう。

 鳥を捌くのであれば水場の側がいい、ベース予定地にまで戻ることにする。

 火種は残っていたので木をくべて大量のお湯を用意する。

 お湯が沸いたら鳥の体を短時間でいいのでつける。

 こうすることで体毛を抜くことが楽になって綺麗に剥ける。

 毛をはいだら首元の消化管を剥離しておく、そして排泄孔を腸を傷つけないように周囲から剥離して、排泄孔ごと内臓を引きずり出していく。

 腸の部分は怖いので食用には使わない。

 

「構造もほとんど同じだな、砂肝に石などもある。

 ここまで似る物か?」


 小石や砂を飲み込んで、食べたものをすり潰す臓器である砂肝部分、異なる星の生物が人間の故郷である星に似ているというのはとても不思議だ。

 開拓した星で生態系に考慮しながら持ち込んで増やしたりした星は知っているが、この星はまだ誰も訪れていない星のはずだ。


「もしかして、ワープ事故で誰かの星に落ちた可能性もあるか……」


 判断をするには情報が足りな過ぎた。

 とりあえず今は得られた食糧をいろいろと調べてみる。

 遭難パックには原始的な検査キットも入っている。

 光発電パネルとバッテリーセットもすでに稼働させてある。

 温冷保管庫もあるから肉の保存も可能だ。

 検査の結果は十二分に食用可能。危険な寄生虫や細菌ウイルスもいないという結果だった。


「夜は決まりだな」


 午後の仕事は、めっちゃ頑張った。

 

 

 


 


 


 



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