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第29話 垣間見える闇

 いずれ旅に出る。

 そうみんなに伝えるとキョトンとされた。

 メリナ以外は特になんともなく受け入れてくれた。

 個人主義と言うか、旅立ちたいなら旅立てばいい良い旅を! みたいな感じらしい。

 もちろんまだすぐに旅立つわけではないが、少しホッとした。

 

「ぜーーーーーったいに私もついていくからね!!」


「あてもない旅だぞ?」


「関係ないわ! ワタリは私の町を潰してくれた責任を一生かけてでもとってもらわないと!」


「メリナ嬢はワタリとの婚姻を求めているのだと推測します」


「ち、ち、違うわよ!!」


 ホープと仲良くなっているみたいで良かったが、旅に同行させるとなるともう少し鍛えないとな……それに……


「ホープ、メリナに打つのは作成可能か?」


「はい、メリナ嬢のデータはすでに収集済み、調整した個体を創ることは可能です」


「え? なに、なんかとっても恐ろしいことを話されている気がするんだけど……」


「メリナ、これから本気で毎日鍛えることと、ナノマシンを打つなら同行してもいいぞ」


「え……ナノマシンもなにかわからないから嫌だけど、本気で鍛えるって、今よりきつくなるの?」


「ああ、今の毎日が天国と思えるくらいにはキツイ」


「うぐ……い、良いわよ! 何でもするわよ! だから絶対に一緒に……ってホープだっけ?

 私の腕を持ってなにしてるの? ちょっ、微動だに出来ないんですけど!!」


「大丈夫ですよ、痛いのは最初だけ、すぐに気持ちよくなりますから……いけない子ですねぇ……

 ミケルカイルお願いします」


 その後3人に完全に掌握されたメリナはナノマシンを打たれ3日ぐらい熱を出して寝込んだ。

 みんなが通る道だから我慢してほしい。

 それとホビ達上級者な戦士たちも同じように特訓してほしいとお願いされた。

 この村を俺に頼らず守っていくために必要だと言い出してくれた。

 よーし。オニーサン張り切っちゃうぞ!


 訓練に次ぐ訓練に明け暮れる俺、新しい体の調子はすこぶるいい。

 まるで現役時代に戻った、いや、それ以上の感覚だ。

 教育関連の書籍の作成なんかもホープが一手に担ってくれた。

 俺がいなくても学べる設備と道具をしっかりと残していく。

 そのうち帰ってくることも有るだろうからな。

 とにかくホープが復帰したおかげで雑務がとんでもないハイレベルでこなされていく。

 俺は訓練に集中することが出来たことには感謝しか無い。

 メリナは新たな力を得たことで明らかに別次元に強くなった。

 本気の俺と戦える数少ない兵士、じゃない、一般人だ。

 ホビたちにも一応マイクロマシンを利用するか聞いたが、答えはノーだった。

 医療用のマイクロマシンは万が一のためにストックして置いていくが、誇り高い彼らは使わないかもしれないな……


 こうして時間は飛ぶように過ぎて行く。

 訓練の最終段階として総当たりの組手を行い、その最高成績者は俺と戦うことになる。

 現在全勝同士の最終戦、メリナとホビリンの試合中だ。

 マイクロマシンを利用しているメリナと互角以上に戦っているホビリンには正直驚いた。

 メリナもツールに依存せずよく鍛えている。なかなか見ごたえのある試合だったが、流石に長期戦になると支援をうけているメリナが有利になり、最終的にはメリナが勝利した。

 メリナは今が一番成長する時期だ、この先が楽しみだ。

 見た目的には女性と呼んでいい姿だが、精悍な顔つきは戦士のそれだ。

 成長したらきれいになるだろうなと思っていたが、まさかホープと姉妹といっても通用するような美女になるとは思わなかった。柔のホープと剛のメリナで俺の中では甲乙つけがたい。戦う女性は美しいってやつだな。


「さて、メリナ。俺に勝てたら何でも言うこと聞いてやる」


「言ったわね……絶対に勝ってやるんだから」


「それでは私がジャッジをさせていただきますね。

 くれぐれも相手を殺さないでくださいね、完全な致命傷だと流石に助けられませんよ」


「……意識はしておく」


「いい目だ……俺も本気でやらせてもらう……」


 精神を統一して深く深く自分の体と語り合う。

 ここまで本気になるのも久しぶりだ。


「それでは、はじめ!!」


 以外にもメリナは突っ込んでこなかった。

 こちらの様子をじっと見ながら牽制程度の動きしかしてこない。

 中距離の打ち合いはほぼ互角、もちろん肉体の差で地味ーに追い込んでいってもいいがソレもつまらない。一旦少し距離を取る。

 今まで散々鍛えてきて、お互いの手の内は読めてるから……


「少し、仕掛けるか……」


 ここまで完璧だと……()()()()なる……

 俺は構えを解いてまるで散歩でもするようにメリナに近づく、突然の戦闘から日常への変化にほんの僅かメリナに動揺が走る。手のひらを広げて一瞬だけメリナの目線を切る。

 手のひらは微動だにさせずしゃがむと言うよりは落ちるように体を倒し、一気に大地を蹴ってメリナの背後へ飛ぶ。

 流石に目の前に手のひらが現れれば意識を戦闘に戻したメリナは、背後へ飛ぶ。

 その結果、目の前から消えた俺がメリナの背後へ先に飛んでいるという状況ができる。

 あの状況から俺が消えれば確認しなければいけない方向は上と左右と考えるだろうが、すでにチェックメイトだ。素晴らしい反応と動きだけど、これで()()()だ。

 俺は静かにメリナの首と頭に手をかけようとして……


「はいそこまで」


 ホープに背後から羽交い締めにされた。


「だから完全な致命傷はだめだって言ったじゃないですか。入りすぎですよ……

 完全に()()()()()()よ」


「あー……すまない、止めてくれて助かった。

 悪いなメリナ、あまりによく動くから入り込んでたみたいだ」


 メリナは答えること無くその場に座っていた。


「大丈夫か?」


「ヒッ!」


 肩に手をかけるとメリナは体をビクリと揺らして真っ青な顔をこちらに向けた。


「……あ、アレが……ワタリの本気なの……」


「あー……その、すまんな……」


「殺気だけで……死んだかと思った……」


「ほんとにすまん……」


「やだ、許さない……今日怖くて眠れないから一緒に寝てくれたら許してあげる……」


「……わかったよ、俺が悪かったらそれくらいなら聞いてやる」


「うん……あと、ちょっと一人にして……」


「わかった」


 そういったメリナの肩は震えていた。


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