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第19話 いつの間にか人が増えた

 村の人的被害は少なかったが、建物の被害は甚大だった。

 7割近い建物が破壊され、畑も半分ぐらいがめちゃくちゃになっている……


「せっかくだ、基本から作り直そう。木造建築から卒業するぞ」


 鉄類の鋳造、そして石灰を用いた原始的な鉄筋コンクリート造りを本格的に導入する。

 カイルとミケルによる正確な測量と図面作成、それに基づく一大建築プロジェクトの始動だ。

 ホブホビに変化してから皆の知識も手先も圧倒的に進化しており、俺の言うことも正確に理解してくれている。カイルとミケルによる教育もいつの間にか高等教育からホビによっては大学でやるような専門的な学術を学んでいるものもいるそうだ。


「まずは外壁だ。これから人が増えることも考えて広く確保する。

 内部で農業畜産工業も全て行うからねー」


「人口に対して大きすぎると思うよ」


「いいんだよ、大は小を兼ねる! ホブホビたちは働き者だし、きっとうまくいく!」


「やるよー! 頑張るよー!」


 カイルの言うことは常識論として正しいけど、俺達はやれるはずだ!


「気合と根性だ!」


「気合! 根性!」「うおー!」「おー!」


 外壁と並行して生活場所の復興が急がれる。

 皆、外で雑魚寝しててもへっちゃらなんだけど、寒くなってくる前には完成させたい。

 すでに真夏から暑さが薄れている今、ちょっと急がなければならない。

 全員総出で土を掘り木枠をはめて土台に鉄骨を立ててコンクリートを流し込む。

 固まったら木枠を延伸して高さを出していく、地道にこの繰り返しだ。

 時間はかかるが、完成すればあのオーガ達だってそう簡単には突破できないはずだ。

 

「そういえばアイツらはまた襲ってきたりしないよな?」


「減らしたからしばらく食事余裕出るから平気だと思う」


「ああ、なるほどね」


「あんな多いの見たこと無い、増えすぎて遠出してきたんだと思う」


 なるほどね、アレ程の大飯食らいが増え過ぎればあっという間に周りの食材を枯らしてしまうんだろう……だったらバラバラに行動すればいいようなものなのだが、群となってうちの村にたどり着いてしまったのか、お互いに運がなかったな。


 ホブホビ達の作業は想像の遥か上を行っていた。

 予想よりも遥かに早く作業は進み、作業を進めるために様々な道具を次から次へと作り出すその創造性の高さは俺たちを驚かせた。

 原始的なコンクリートはいつの間に木から取り出した繊維質を混ぜ込んだ高強度なものになっていたり、速乾性をもたせてみたり、俺の想像が追いついていかない。

 

「なぁ、気のせいかもしれないけど……人が増えていないか?

 人っていうかホビット、それに、あれ、何?」


「周りのホビットに会ったから声かけた。

 あれはゴブリンとコボルト、ご飯あげたら手伝ってくれるって、あと一緒に住みたいって。

 だめ?」


「だめではないけど、喧嘩しないようにね」


 懐かしいホビットと一回り大きい緑の小人、それに犬が立って歩いているようなコボルトが、俺の知らない間に仲間入りしていたぞ。

 ホブホビットに比べると弱い種族らしく、昔のホビットたちと同じようにひっそりと村で生活をしていた弱者側の仲間らしい。

 まだ全然話せないが、ホビたちがいろいろと教えているからそのうち意思疎通もできる様になるだろう。

 どう聞いてるのか知らないけど、俺を見ると土下座してくるのはやめてほしい。

 あと、コボルト触りたい。


「アインズたちも、なんか柄が違うのと猫みたいなのがいるね」


「見つけたから従えたって。だめ?」


「だめじゃないけど……仲良くね」


 狼っぽいアインズの後ろに犬っぽい集団と猫っぽい集団がついて回って、まるで施設を案内しているかのようだ。ミケルとカイルに率いさせたら面白そうだけど、二人は怒るだろうな。


 こうして、なぜか住人がどんどんと増えていった。

 オーガじゃないが、人数が増えれば食料が必要になる。

 食料設備の拡充も急ピッチで進められる。

 湖の漁業もとうとう養殖という概念が生まれている。

 ホープから少し離れた場所で、生簀が組まれて養殖が開始されている。

 生ゴミなどを利用したエコなシステムで廃棄物の処理にも一役買っている。

 農業にも畜産にもそういった考えが浸透している。

 物資が限られる生活からそういった知恵が生まれていくさまは本当に素晴らしい。


「ワタリ、現状の街の進行状況を模型で作ったわ」


「驚異的なスピードだね、人力だけでこれだけの速度で建築が進むとは思わなかった」


「ふふん、私の生徒たちは優秀だからね~」


「僕の生徒も、正直ココまでやるとは思わなかった。

 新しく来た子たちも日々成長している。この星の生物は学習に対する効果が凄いな」


 ミケルとカイルはよほど嬉しいのかしっぽをふりふりしてご機嫌だ。


「周囲の地図もかなり広くなってきたなー、それにしてもこの森は広いな……

 山岳地帯もまだまだ続いていそうだし、それら全てが手付かずなんだからとんでもない星だよなぁ」


「ホープももう少しで会話が可能になりそうよ、人が増えると作業効率が跳ね上がるわね」


「ホープの宇宙船としての機能回復は?」


「それは、試算では50年以上って出ている。

 ホビット達の科学技術の進歩を上方修正しての数値だから、それ以上にはなっても以下にはならない」


「そっかぁ……ま、仕方ないね。俺の人生はこの星で終えそうだな」


「ワタリ……」


「あ、いや。全然後悔とかないよ、むしろこの星と出会えて俺はすげー幸せだと思ってるから」


「そうか、僕たちもできる限りワタリの人生を豊かなものにできるように手伝うよ」


「ありがとう、これからもよろしくね」


 こうして、俺達の街は高度成長期を迎えるのであった。

 





 

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