第14話 交流
それからホビット族はすっかりと俺たちに慣れてくれたようで、第二拠点に遊びに来るようになった。
俺は第二拠点に家を建ててホビット用の家具を置いて歓迎した。
そして時間は必要としたが、ホビット族を過去の村から第二拠点へと移住させることに成功したのだ!
「おはよー」
「おは!」
農作業をしているホビットに挨拶をする。
子どもたちがわーっと集まってきてあっという間に俺とワンコは囲まれてしまう。
ワンコもやれやれと子どもたちの相手を始める。
俺も子供を肩に乗せてやって第二拠点改め、ホビット族の村を見て回る。
ホビット族の知性は俺の予想を遥かに超えて高かった、嬉しい誤算だった。
こちらの伝えたいことを身振り手振りで説明すると、かなりの理解を示してくれて、今では農業や動物の世話も行えるまでになっている。
流石に細かいところまでは教えるのは無理だが、ただ食べるだけではなく、育てればより安定して食事を得られる。という事実がわかってくれただけでもホッとした。正直理解させるのは無理かなと思っていたが、畑からとったものを調理して食べさせると、すぐにその有効性がわかったみたいで、想像以上に高い知恵、知性を持っていることが伺えた。
手先も器用で木材の加工道具の扱い方はいろいろと試しながらすぐに覚えた。
正直異常な教育速度と言っても過言ではない。
スポンジが水を吸うがごとくあらゆることを吸収していく。
言語に関しても、すでにコチラの言うことをかなり理解している。
虫という外敵がいるために、少し戦い方というものも教えているが、こちらもびっくりするほどの素質を持っている。正直、体が小さく俊敏で、戦うとしても厄介だ。
「あぶな!」
眼の前を木剣が通り過ぎる。今日も危うく一本取られそうになって必死に相手をすることになっている……
「あぶっ! あぶっ!」
周りで見ている子どもたちが俺の言葉を真似しながら身をくねらせる。
可愛らしいが、こっちは結構必死になっている。
小柄なホビットたちがうまく俺の足元、死角を狙って攻撃を仕掛けてきてこちらは下からの攻撃を防御して反撃しなければならないが、下方向への攻撃というのは非常に困難だ。
とうとう俺は足をかられて倒されてしまった。
「だ!!」
俺に剣を突き付けて勝ち誇るホビット族の男。
「とうとう取られたかー……」
「やっ! やっ!」
俺から一本取ったホビットは仲間から熱烈な祝福を受けている。
俺は勝利の証として鉄製のナイフをそのホビットに贈呈する。
「かっ!! かっ!!」
「危ないからな、使い方は気をつけるんだぞ!」
「わかっ! わかっ!」
どうやら嬉しくて仕方が無いのか何度も鞘に入れたり出したりしている。
周りのホビットたちもそれを羨ましそうに見つめていた。
このように剣の扱いも含めて鈍器、弓矢なども器用に使えるようになっていく。
「無理するなよ、確実な場所から攻撃しろ!」
虫の襲来は何度かあった。俺はホビットやアイン達と協力して撃退する。
人手も増えて随分と楽になっている。
アイン達の子供もホビットたちといい関係を築けている。
移住してきたホビットたちは順調に子を産み育てて人口も増えていく。
結局3年もすると第一拠点と第二拠点を繋ぐほどの街になっていた。
「一年でほぼ成人するんだから、ほんとにホビットたちは凄いな」
「ワタリ! おかげ! ワタリ! おかげ!」
「ゴハン! うまい! みずタクサン!」
すでに意思疎通は何の問題もないレベルで行えるようになっている。
狩りも犬たちとホビットたちがチームを組んで行うようになっており、俺は、本来の素材集めを中心に日々を過ごすことが出来るようになっていた。
「ワタリ! これ!」
「おお、鉄鉱石だな! どこにあった?」
「こっち! こっち!」
谷の露出した鉱石採掘が最近の仕事だ。
ホビットたちの大きな目は薄暗い谷の中でもしっかりと鉱石を見つけてくれる。
足場を組みながら安全第一の採掘作業、以前一人でやっていたころに比べると段違いの効率になっている。何よりも大きいのは、鍛冶をホビットが学んでくれて、採取した鉱石類から鉱類を抽出してくれることだ。やっぱり人口が多いというのはそれだけで力になる。
「ワタリ! おおもの! おおもの!」
4人のホビットが担いできたのは大きな猪によく似た動物だ。
豚と違って大きな牙とこちらに突進して攻撃してくる暴れん坊で畜産には適さない。
少し癖のある味わいだが、非常に美味でごちそうになっている。
「おお! 凄いな! 今日は宴だな!」
「うたげ! うたげ! ひゃっほい! ひゃっほい!」
「ひゃっほい! ひゃっほい!」
獲物を下ろすと4人は両手を上げて楽しそうに踊りだす。音楽のような独特のリズム、すぐに周りにホビットたちが集まって手拍子と足踏みで踊りだす。俺も混ざって踊りだす。
大漁の舞だ。
興奮が落ち着いたらすぐに巨大な獲物を捌き始める。
慣れた手つきで屠畜場につるされる猪。滑車を利用したもので何人かのホビットがピョンピョンと反対側の紐に捕まって猪がつるし上げられていく姿は少し可愛いらしい。
ホビットたちは与えられた包丁やナイフを使って器用に猪を解体していく。
血抜きの仕上げから皮を剥いで、内臓を処理して、各部位に分けていく。
流れ作業のようにみるみる猪はその姿を変えていく。
こうして分けられた肉と一部の内臓、これが今日の宴のメインデッシュとなるのであった。
毎日更新、無理でした……




