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散策する午後

「さて、と。何をするかな」


 部屋に入って荷物を降ろした俺は次に何をするか考える。夕食まではまだ3時間以上時間が空いている。流石に部屋で過ごすには長すぎる。


「図書館にでも行ってみるか」


 空いた時間で少しでも情報を収集するのが得策だと思えた。白魔術師の説明によると図書館には数万冊の本があり生徒なら自由に持ち出せるそうだ。そうと決めた俺は足早に図書館へと向かう。


 しばらく歩くとどこか古めかしい洋風の建物が、見えてくる。俺は扉を開けて中にへと入る。


「すごいな、こんなに本が並んでいるのは見たことがない」


 俺はつい小さい子のように感心してしまったが、元の世界では本とは無縁の人生を送ってきた俺はここまで本が並んでいるのを見たことが無かった。

 5階層の吹き抜けには本棚がこれでもかと並び、天井のステンドガラスからは暖かい光が入ってくる。


「さて、何を調べるべきか?」


 周りを見渡しながら考える。図書館では何人かの人が熱心に本を読んでいた。

 邪魔するのは悪いので静かに本棚を眺めることにする。

(さてさて、ゆっくりチェックしていこうかな)

 俺が右からゆっくり本を眺めていると、誰かが吹くを引っ張ったような気がした。

(ん?)

 目をやればそこには茶髪で小柄な子がいた。

 格好や髪型は中性的で性別はよく分からなかった。


「あの本………取ってくれない?ボクじゃ手が届かなくて」

「どの本だい?」

「あの『探索と暗殺』って本」

「分かった」


 俺は手を伸ばして本を取って彼?に手渡す。


「どうぞ」

「………ありがとう」


 本を受け取った彼?は机に座って本を読み始める。


「さて、俺も本を探すか」


 …………もっとも探す物も決まっていないのだが。

取り敢えず『ロレスビュートの街並み』という本を読んでみることにした。


「どれも中世ヨーロッパの街並みみたいだな。リュロイレンもそんな感じだった」


(とすると大体文明のレベルは中世ヨーロッパくらいか?でも魔法で技術を補っているようだからもう少し上かもしれないな)

 風呂は問題無く使えたし、と思い返す。

(駄目だサッパリ分からん。また後で来るか……)

 俺は図書館を後にする。図書館を出ると夕日が目に飛び込んでくる。

 どうやら大分時間が経ったようだ。

 俺は食堂へと向かうことにした。


 食堂へ入ると妙な違和感を感じる。

 やけに人が少ないのだ。学校ならもっと人がいて活気があるものだと思うのだが。

(そういえばこの世界の食事ってどういうのなんだ?)

 俺はこの世界に来てからミラリアの料理しか食べていないので、この世界の一般的な料理がなんだか分からなかった。

 どんなものかと悩んでいたが、その心配は杞憂に終わったようだ。見覚えのある料理の名前が並んでいる。白魔術師によると料金はタダのようだ。


「天津飯一つで」

「かしこまりました」


 俺は料理を受け取ると椅子に座る。

 久々に食べるのだがこれは俺の知っている天津飯なのか?そう思いながら口に入れると知っている天津飯の味がした。


「うん。美味しい。それにしてもさっきの人、あんまり声に感情を感じなかったな」

「まあ魔法人形(ゴーレム)の一種だからね」

「うおっ!?なんだ、貴方ですか」



 またしても白魔術師に出会う。夕食はラーメンのようだ。


「出来る事を絞って回路を組まれているのさ」


 白魔術師は美味しそうにラーメンをすすりながらこっちに話しかけてくる。その帽子外さないのだろうか?

 そもそも軍隊の隊長がこんなにフランクな感じで良いのだろうか?


「ところで」


 白魔術師は急に真面目な顔になる。

 先程までと同じ人物とは思えなかった。


「どうしてここにいるんだ?」

「どうしてって、軍隊に入る為ですよ」

「何故軍に入る気になった?君は何を成したい?」


 白魔術師に問われて考える。何かを成したいと思って軍に入った訳では無いのだから。

 しかしこの人には本当の事を言っても良いような気がした。


「ミラリアを放って置けなくて」

「成る程、彼女が大切なのか。守ってやれよ?」



 先に食べ終えた白魔術師は食器を戻して食堂を出て行く。

 あの人の隊に入ってみたいと思った自分がいた。


「俺も戻るか」


 食器を戻し食堂を後にする。外はすっかり暗くなっていたが、所々に設置された街灯が幻想的な雰囲気を醸し出していた。

(寮に帰る前に寄るところはあるか?)

 寮に向かいながら考えるが、考えているうちに寮に着いてしまった。


「大人しく寝ろってことかね」



 俺は部屋に戻る。大浴場もあるようだが今日は部屋の風呂に入ることにしよう。しばらくして風呂から上がり、ベッドに入る。

 明日から始まるであろう学校生活に想いを馳せながら。

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