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鉄塊と魔術師

「今日も良い日だな!」


 俺が異世界に来てから今日で7日になる。

 俺はミラリアと共にメキメキ実力をつけていった。


「今日も狩りに行きますかねぇ!」

「さーんせーい!」


 いつものように狩りに出る。

 だが―――何か様子がおかしい気がする。

(気のせいだといいんだが)

「ドゴォォォォン!!」


 響き渡った爆音に俺たちは動きを止める。


「なんだ!?」

「ハイド君!前!前!」

「なんだ………こいつ………?」


 一言で言えば鉄塊だった。

 二人を視認した鉄塊は何の迷いもなくその腕を振り下ろす。


「ぐわっ!!」


 先程まで自分が踏んでいた地面が粉々に砕けクレーターが出来る。


「ハイド君!」


 地面に気を取られていた俺は目の前に迫る鉄塊への反応が一瞬遅れる。

 まるで鉄の壁が迫って来るかのような突進。

 俺はギリギリそれをガードする。が、威力を殺し切れずに吹き飛ばされる。


「!!!なんだこの出鱈目なパワー!?」

「《強射(パワーショット)》!!」


 矢は鉄塊の頭にあたる部分に命中する。しかし矢は鋼鉄の体に弾かれる。


「弾かれた!?なんて硬さなの!」


 鉄塊は矢を放った主を見つけると口を開く。

(なんだ…?赤い……?光線か!)


「ミラリア!」


 俺の声に反応しミラリアは木から飛び降りる。


「きゃあ!」


 その直後赤色の光線は先程までミラリアが立っていた木を消し炭にする。

 まるで紙くずを燃やすかのように。


「こいつ……魔法人形(ゴーレム)ってやつか?」

「多分ね。さっきまでの動きを見る限り相当性能が良いみたい」

「気を引けるか?」

「やってみる」


 俺は目の前の魔法人形(ゴーレム)に向き合いミラリアは一歩飛び退く。魔法人形(ゴーレム)は再びミラリアに向かって光線を放とうとする。


「今!《速射(ラピッドショット)》!!」

 高速の矢が光線を放とうと魔法人形(ゴーレム)が開けた口に撃ち込まれる。

 収束されかけていたエネルギーは行き場を失い爆発する。


「まだだ!《鋼鉄破壊(メタルブレイク)》!」


 俺は態勢を崩した魔法人形(ゴーレム)にトドメの一撃を叩き込む。

 《鋼鉄破壊(メタルブレイク)》は対魔法人形(ゴーレム)用のスキルであり魔法人形(ゴーレム)が相手なら絶大な威力を有する。

 相手が普通の魔法人形(ゴーレム)ならの話だが。

 ――その一撃は分厚い装甲に阻まれる。


「なっーー!!?」


 俺の腹に拳が撃ち込まれそのまま近くの木に叩きつけられる。


「ゴハッッッ!!」

「ハイド君!!!」


 ミラリアは魔法人形(ゴーレム)の顔面に矢を放とうとする。

(目が……赤い……!)

 次の瞬間には魔法人形(ゴーレム)の目から放たれた光線がミラリアの腹を貫いていた。


「あっ―――がはっ!」


 ミラリアは大量の血を吐いてその場に崩れ落ちる。

 無慈悲にも魔法人形(ゴーレム)は彼女にトドメを刺そうと近づく。


「ミラリアが……!助けるんだ……!」


 俺は剣を支えにして何とか立ち上がる。

 ミラリアを殺させる訳にはいかなかった。しかし意思に反し全身に上手く力が入らない。


「助けるんだ……!ミラリアを……!」


 俺は全身を引きずって魔法人形(ゴーレム)を止めようとする。

 だが間に合わない。巨大な拳がミラリアに振り下ろされる。


「ミ……ラリ……ア………!」


 ――次の瞬間俺が見たのはミラリアが押し潰される光景では無かった。

 魔法人形(ゴーレム)の腕が吹き飛ばされる。目の前には白いローブを纏い帽子を目深に被った魔術師が立っていた。


「よく頑張った。もう大丈夫だ」


 魔法人形(ゴーレム)は顔の半分が吹き飛び片腕を失ってなお目の前の魔術師を排除しようと動く。


 ――不運にも魔法人形(ゴーレム)は知らなかった。目の前に立つ男の力を。


「《輝光の柱(ブライトネスピラー)》」


 目の前に巨大な光の柱が降り注ぎ容赦なく魔法人形(ゴーレム)を消し去る。一瞬の出来事に俺が呆然としていると魔術師は俺達の方を向いた。


「二人とも大丈夫か?いや怪我をしているな」


 魔術師はミラリアの前でしゃがむと治癒薬(ポーション)を取り出し傷にかける。みるみる内にミラリアの傷が塞がっていく。


「あ、ありがとうございます!」

「そっちの少年はどうかな?」


 魔術師は俺の前に立つと同じ様に治癒薬(ポーション)を振りかける。

(凄いな。一瞬で楽になった)

 だが俺には一つ気になることがある。

 それを聞こうとすると魔術師が口を開く。


「少年、私に質問したそうな顔をしているな。もしかして私が何者かということか?」


 俺は黙って頷く。

 こんなところにいきなり現れた怪しげな男を信用するなど以ての外である。


「詳しくは言えないが私は軍隊の人間なんだ。いきなり目の前に現れた怪しげな男を信用しろとは言わんがな。一応隊長ということになっている。何処の所属かは言えんが」


 魔術師はロレスビュート軍の紋章を見せながら言った。


「と、とにかく助けてくれて本当にありがとうございました。あなたが居なかったら今頃私達は死んでいたでしょう」

「気にする事は無い。ところで君たちはどこに住んでいるんだ?家まで送って行こう」

「良いんですか!本当に?」

「勿論だ。どっちの方向だ?」


 俺達は魔術師と共に家へと向かう。

 森はさっきの騒ぎが嘘の様に静まり返っていた。

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