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吹雪の騎士達

「《爆風一閃(ブラストスラッシュ)》!」

「《台風の矢(テンペストアロー)》!」


 目の前の魔法人形(ゴーレム)を倒してもすぐに別の魔法人形(ゴーレム)がやってくる。これではキリが無い。


「……はぁ……はぁ……」

「大丈夫かヘーゼル!?鬱陶しい!《冷球(コールドボール)》!」


 動きの鈍くなったヘーゼルを襲おうとした魔法人形(ゴーレム)をオルトルトが氷漬けにする。


「キリが無いよ!」

「くそっ!!《治癒加速(ヒーリングブースト)》!」


 全身の筋肉痛が酷く、体がうまく動かなくなってくる。吹雪による体温の低下も深刻だった。

 限界は近い。誰もがそう感じていた。


「危ないヘーゼルちゃん!」

「……光線……!!」


 ミラリアの声に反応しヘーゼル魔法人形(ゴーレム)の光線を回避する。吹雪のせいか森で見た時より威力が落ちているように見えた。


「……《霧の幻影ファントム・オブ・ミスト》!!」


 幻惑効果を持つ霧がヘーゼルを中心に展開される。普通の霧なら吹雪で散ってしまうだろうが、魔法によって作られたこの霧が散ることは無かった。

 霧から騎士の幻影が出現し魔法人形(ゴーレム)の襲い掛かる。いくつかの個体の剣の部分は魔力を帯びており触れると本当にダメージを受ける。

 実際何体かの魔法人形(ゴーレム)は騎士の幻影にかかりきりになっている。精神系の耐性があればダメージを受けずに幻影を打ち消せるのだが幸運にも魔法人形(ゴーレム)は精神系の耐性を持っていないようだった。


「まだまだぁぁぁ!!」


 気迫のこもった叫び声を上げながら俺は魔法人形(ゴーレム)と打ち合いを続ける。

 その一方で俺は疑問を抱く。理性の部分では圧倒的な劣勢であることは分かっていた。撤退も視野に入れるべきであることも。それでも意思は理性に反し立ち向かうべきと訴えかけてくる。目の前の敵から仲間を守るべきだ、と。

 俺は魔法人形(ゴーレム)を突き飛ばし距離をとる。その上で首を横に振り余計な考えを振り払う。思案しても答えは出ない。大体今はそんなことを考えている場合では無い。


「矢が……!だったら!《作成矢(クリエイトアロー)》!」


 ミラリアの手持ちの矢が全て無くなった。これまでは補給したり使った矢を回収し再び使用していたが今はそんな暇も無い。そこで魔法で矢を作り出すという手段に出る。一見便利な魔法のように見えるがダメージが落ち魔力の消費が激しいため普通の矢を使用する者の方が多い。この魔法が活躍する時は正に今のような矢が切れた時だ。


「数が多すぎるな」

「このままじゃ……!」

「ぐぅっ!!」

「……くぅぅぅ」


 俺の両腕は魔法人形(ゴーレム)と打ち合うたびに悲鳴を上げ、ヘーゼルは魔力の枯渇から来る頭痛に苛まれる。

 そんな中ヘーゼルの探知魔法に引っかかる反応があった。


「……何か近づいて来る……!!」

「また新手か!?数は?」

「……30から40だと思う」

「本格的に不味いんじゃない!?」

「何してるハイド!前を見ろ!」

「――!!くっ!」


 間一髪の所で魔法人形(ゴーレム)の攻撃を受け止める。だが俺はこの危機的状況にも関わらず僅かな間魔法人形(ゴーレム)から目を離した。


 ――音が聞こえたのだ。俺達とは全く別の方向から何かが飛来する音が。


「なんだ!?」


 それは気のせいでは無かった。目の前の敵が一瞬にして無数の光の矢に貫かれたという現実がそれを物語っている。


「君たち!大丈夫か?ラルアス!すぐに怪我の具合を見てやれ!」

「了解です副隊長」

「副隊長!残りの魔法人形(ゴーレム)はおよそ150体です!」

「一体残らず殲滅しろ!勿論命が最優先だからな?危なくなったら遠慮無く引け!」

「「了解!」」


 俺は突如として現れた騎士達が魔法人形(ゴーレム)を殲滅していくのを呆然と眺めていた。

 そこにラルアスという若い男が近づいてきた。

「君たち怪我は?少し見せてみてくれ」

「あ、あなた達は一体……?」

「北方守備隊だ。主に北部戦線の防衛をやっている」

「北方守備隊……!あの白魔術師さんが隊長の!?」

「隊長のこと知ってるのか?」

「以前命を救われました」

「……そうか。取り敢えず今は傷を見せてくれ」

「……はい」


 俺達が傷を見せるとラルアスが的確に応急処置をしてくれた。そして一通り傷の処置が終わる頃には魔法人形(ゴーレム)の殲滅も完了していた。


「副隊長!魔法人形(ゴーレム)の殲滅完了しました!」

「分かった」


 頃合いを見計らって副隊長の男が話を始める。


「さて、君達にはひとまず砦に来てもらう。君達の仲間も先程保護した。大柄な少年とエルフの少女だ」

「ガリアとアルトが!?」

「すまないが歩けるか?」

「はい、大丈夫です!」

「分かった。じゃあついてきてくれ」


 俺達は北方守備隊の隊列に先導され吹雪の中を進んでいった。


「この先に砦がある。着いたら少し休むといい」

「ありがとうございます!」

「気にするな。おっと、着いたぞ」

「!!!!」


 吹雪の中心、長い長い道のりを抜けた先にスノーマウント・グレイス砦はあった。

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