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無数の鉄塊

「ハァ!!」


 ガリアと魔法人形(ゴーレム)の激しい攻防が続く。微妙にガリアが押してはいるが肝心なところで他の魔法人形(ゴーレム)の邪魔が入り仕留めきれない。


「《七炎槍撃セブンランス・オブ・フレイム》!!」


 七本の炎槍が魔法人形(ゴーレム)にそれぞれ深々と突き刺さる。しかし魔法人形(ゴーレム)はそんな事はお構い無しと言わんばかりにアルトに攻撃を繰り出してくる。


「くっ!?硬すぎます!《炎球(ファイアーボール)》!!はあ……はあ……!」


 炎球を放ち魔法人形(ゴーレム)を撃破するが、この三日間の連戦で既に魔力はほとんど残ってはいなかった。その上この猛吹雪で体力もほぼ限界に近く絶対絶命と言っても過言では無かった。


「があっぁぁぁ!!!」

「ガリア!!」


 バキバキと腕の砕ける音が聞こえる。拳撃を喰らったガリアの右腕はへし折れハルバードも吹き飛ばされる。


「まだ……左腕が残っとるわ!!」


 ガリアは急いでハルバードを拾い上げ魔法人形(ゴーレム)の拳を迎撃し左腕だけで魔法人形(ゴーレム)の攻撃を防ぐ。


「はあ……はあ……!まだまだ負けんぞぉ!!」

「《炎球(ファイアーボール)》……!!」


 炎球が正確に魔法人形(ゴーレム)の頭部に命中する。しかしその爆炎に加え魔力不足から来る目眩で横から迫ってきた魔法人形(ゴーレム)への反応が遅れる。


「しまっ!?セブンラン――きゃあ!!」


 魔法人形(ゴーレム)の剛撃がアルトの横腹に決まる。アルトはその衝撃で吹き飛ばされ地面に叩きつけられる。拳が決まる際に僅かに身体を捻っていなければあの世行きだっただろう。だがそれでも肋骨が折れ呼吸がままなら無い。


「ヒュー………ヒュー……ハァ……ハァ……がはっ!」


 血を吐きその場に倒れ伏せる。動かなければ殺される。頭がそう必死に訴えかけて来るが全身が言うことを聞いてくれない。目の前には巨大な壁が迫る。


「……はあ……はあ……くうぅぅ!!嫌だ!死にたくない!」

「アルトぉ!くっ!!邪魔だぁぁぁ!!!」


 必死に立とうとするが身体は動かない。見ればガリアも多数の魔法人形(ゴーレム)に囲まれ身動きが取れない。


「私は……まだ……!!」


 奇跡でも起こらない限りアルトの生存は絶望的だった。それでも彼女は諦めない。決して引くことはない。


 ――奇跡か必然か、彼女に助けの手が差し伸べられる。


「撃てぇぇぇ!!!」

「叩き潰せ!!」


 数十人の騎士が怒号をあげ魔法人形(ゴーレム)を破壊して行く。先程までアルトの目の前にいた魔法人形(ゴーレム)は全身に光の矢を受けその機能を停止していた。


「二人共大丈夫か!?」


 自分に近寄り容体を聞いてきた騎士。その光景を最後にアルトの意識は途切れた。


「副隊長!二人共重症を負っています!」

「すぐに手当てを!絶対に死なせるな!」

魔法人形(ゴーレム)の殲滅完了しました!」

「なら次だ!まだまだ仕事は残ってるぞ!カーリアス!二人を砦に送り届けて手当てしてやってくれ!」

「了解っす副隊長」

「あ、あんた達は……?」

「北方守備隊だ。安心してくれ、私達が来たからにはもう安心だ」

「まだ……仲間が吹雪の中におるんじゃあ!」

「分かった。今から保護しに向かう。君はゆっくり休むんだ。その腕ではもう戦闘は無理だ」

「……分かりました。儂の仲間達を頼みます」

「任せろ」

「さあ行くっすよ。副隊長!何人か借りるっすよ?」

「好きに連れて行け」

「おいっす」


 二人は砦に運ばれて行く。二人は知るよしも無かったが、彼らが助けに来たのは偶然では無かった。彼らは魔法によってこの吹雪の中の動体を検知し魔法人形(ゴーレム)を討伐しに来ていた。当然交戦している者がいることも知っていた。


「あと四人、人命救助が最優先だ!行くぞ!」

「「了解!!」」


 騎士達は吹雪の中へと消えていった。


「おーい!!ガリア!アルト!いたら返事をしてくれ!!」

「……前が見えない!」

「寒い!二人は大丈夫かな!?」

「前だハイド!!」

「うぐぉ!?」


 俺の目の前に巨大な壁が現れた。俺はそいつの攻撃を間一髪のところで回避する。

 その攻撃で思い出される苦い記憶。


「くそっ!こいつ魔法人形(ゴーレム)かよ!?」

「また……レイラリアスの魔法人形(ゴーレム)なの!?」

「……こいつのこと知ってるの?」

「知ってるも何も以前こいつに殺されかかったんだ!」

「あの隊長さんが来なかったらどうなっていたか……」

「そのトラウマが何十体も見えるんだが!?」

「……不味いね」

「ああ不味い。あいつはかなり強いぞ」

「倒すだけだ《突き立つ氷柱(アイシクルフィールド)》」


 無数の氷柱が魔法人形(ゴーレム)を串刺しにする。何体かの魔法人形(ゴーレム)は氷柱にその身を貫かれ機能を停止していた。


「こいつ森のやつより遅いよ!」

「これなら行けるか!?《獄炎斬インフェルノスラッシュ》!!」


 何体かの魔法人形(ゴーレム)が機能を停止したにも関わらず一向に数が減っていない。むしろ数が増えている。


「まだまだぁ!!」


 潰せども潰せども増える。それでも俺達は無数の鉄塊に立ち向かっていった。

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