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霧の森の幻影③

「ハアァァァ!!」

「《獄炎斬インフェルノスラッシュ》!!」

 俺が六本の鎌を引き受けガリアが本体を相手にする。

 二人がかけてくれた強化魔法の効果は凄まじかった。先程まで圧倒的に押されていた戦いが俺が裂傷を負っている事を差し引いてもほぼ互角になったのだ。


「………オオオォォォ!!?!」

「まだまだァァァ!!《重砕撃(クラッシュインパクト)》!!」

「《爆風一閃(ブラストスラッシュ)》!!」


 少しずつだが俺達が押し始めている。だんだんと死神の動きが鈍くなってきた。

 それは死神の方も感じ取っていたのか次の手に出た。


「ガッ!?」

「ガリア!!」


 死神がガリアを強引に弾き飛ばし俺の方へ接近してくる。二人同時に相手をするのは無理と判断したようだ。

 流石に今の俺でも六本の鎌に加えて本体は相手に出来ない。


 だが今俺は二人で戦っているんじゃない。


「そうはいかんよ《氷結双刀(ツインアイスブレード)》」

「ハイドには近づかせない!《七炎槍撃セブンランス・オブ・フレイム》!!」

「《台風矢雨テンペストアローレイン》!!」


 三人の攻撃で死神が後ずさって行く。


「……《瞬斬(クイックブレード)》!!」


 六本の鎌の内二本をヘーゼルが引き受けてくれていた。

 勝敗を決する時は今だと自分に言い聞かせる。


「《獄炎突(インフェルノスタブ)》!!」


 残る四本の鎌を振り切り俺は本体に追撃の突きを繰り出す。

 獄炎纏う高速の突きが死神に突き刺さる。だがそれでもまだ死神は倒れない。突きというのは威力は大きいがそれ故に隙が大きい。死神はその隙を逃さなかった。体勢を崩した俺を両断しようとする。


 ――それは大きな間違いだったようだが。


「やっと捉えたぞォォォ!《大地砕く剛撃(ガイアクラッシュ)》ゥゥゥゥゥ!!!」


 完全に無防備になっていた死神の背後からガリアの大上段からの剛撃が振り下ろされる。


「ォォォォォォォォォ…………」


 死神は俺を両断する前に両断され消え去って行く。それと同時に残りの六本の鎌も動作を停止する。

 少しの間を空けたのち俺は恐る恐る口を開く。


「勝った……のか……?」

「うん!勝ったんだよ私達!」

「……強かった」

「やった!!やりましたよ!!」

「ふぅー。久々に疲れたのぉ!!」

「………がっ!」

「大丈夫かオルトルト!?」

「しっかりして下さい!!」

「……息はあるみたい」


 突然オルトルトが倒れる。昨日から一睡もしていない上に、連戦をこなしたのだ。疲れが溜まっていたのだろう。


「取り敢えず少し進んでから全員で休もう」

「じゃあ夕食は野草かなぁ」

「仕方ないのぉ!」


 ガリアがオルトルトを背負い俺達は歩き始める。

 二日連続での死闘だ。流石に精神が持たない。後でゆっくり休もう。


 班のメンバーが去ってしばらくした後、七本の鎌が再び動き出す。その先にいたのは巨大な鎌を持った紳士然とした老人だった。


「彼らなかなかやりますね。いくら出力を大幅に下げたとはいえ、《七鎌の幻影セブンシックルファントム》を倒してしまうとは。さてと、(わたくし)の任務は彼等を襲うこと、それは既に達成されました。殺す殺さないまでは言われていませんし撤退するとしましょう。それにしても素晴らしい才能達だ。彼等の未来が楽しみです」


 スーツを着た老人は不敵な笑みを浮かべながら七本の鎌と共に森の中へと消えていった。


 しばらく森を進んだあたりで今日は野宿をする事にした。

 因みに夕食は野草だけのスープだった。苦過ぎる。


「ああ〜疲れたよ〜」

「本当ですね。二日連続で死ぬかと思いました……」

「痛たたたた」

「……大丈夫?」

「ただの筋肉痛だよ。多分大丈夫だと思う」

「にしてもオルトルトはまだ寝とるのかのぉ?」

「相当疲れが溜まっていたのでしょうか」

「無理も無いよ。本人は黙って置いてくれと言っていたんだが、オルトルトは昨日の夜一睡もしていないんだ」

「えっ!!?」

「……見張りか……」

「それは負担を掛けてしまったのぉ!」

「じゃあ今日はみんなで交代でやりましょうよ!」

「賛成!!」


 焚き火を消し交代で眠りに就く。俺はアルトと見張りについていた。


「少し緊張しますね」

「そうだな。夜の森って不気味だしな」

「いかにも何か出そうですね」

「怖いこと言うのやめろよ」

「ハイドは意外と怖いもの苦手なんですね」

「悪いか?」

「良いと思いますよ」

「なあアルト」

「どうしたんですか?」


 俺はオルトルトの言葉を思い出しながらアルトに言う。


「何か悩んでることがあれば遠慮しないで言えよ?力になるから」

「…………………ありがとうございます」

「気にすんなよ。俺達仲間だろ?」

「ふふっ、そうですね。………!!!!」

「どうした?何かあったか?」

「ひ、ひひひ……人魂……!!」

「何?………!!!!!」


 丁度オルトルトが寝ているあたりに淡い緑色の光が見えた。


「な、なんですかねあれ!?」

「見に行こう」

「……………なーんだ。腕輪が光ってるだけじゃ無いですか」

「本当か?本当だ。あーびっくりした」

「でもどうしてオルトルトの腕輪か光ってるんですかね?それに片方しか付けてないですし」

「……さあ?起きたら聞けば良いんじゃ無いかな?」

「それもそうですね!」

「ほら、そろそろ交代だ」


 俺達は交代の三人を起こしてから寝袋に入った。

 余談だがミラリアを起こしたときに顔面に思いっきり頭突きを食らった。死ぬ程痛かった。

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