校外遠征
「はい!今日の授業はここまでにしたいと思います」
今日でこの学園に入ってから4ヶ月になる。あれから俺は剣術や魔法の知識など様々な事を教わった。仲間との絆も深まったはずだ。
「なあこの後どうする?」
「食堂で昼食を食べる事を提案する」
「相変わらず堅苦しいのぉ!」
「たったの4ヶ月で喋り方が変わるか!」
「……お昼を食べるのは賛成だよ」
「私も賛成!!」
「私の頭の中はもうラーメンでいっぱいなのですが……」
俺達が午後の予定を相談していると、キューハイトが急に真面目な顔になる。
「……まだ話は終わっていませんよ?あーゴホン!今日は皆さんに重大なお知らせがあります」
「重大な?」
「お知らせ?」
「学校外班別行動をやります」
「「えっ!?」」
「先生!具体的に何をやるんですか?」
「具体的に言うと、北にあるスノーマウント・グレイス砦に行って紙を受け取って帰って来てもらいます。勿論五班それぞれが別々に行動します。明日からしばらく学園に戻れないのでしっかり身支度を整えて計画を立てておいて下さい。明日の朝この教室に集合して出発します。あ!勿論徒歩ですよ?それでは解散!」
(北か……あの隊長に会えるかな?)
「さぁて!どうするんだハイドぉ!」
「俺か?こういうのはオルトルトの領分だと思うんだが」
「私もそう思います」
「……ボクはハイドの方が向いてると思うけど」
「私も!」
「私は全員で考えるべきだと思うがな」
「俺もその意見に賛成だな」
「じゃあ全員で考えようか!」
「取り敢えず図書館に行って地図を借りてきた方が良いと思う」
「じゃあ図書館に向かおう!」
「あのぉ……」
「どうしたアルトぉ?」
「うわぁ!?相変わらず大きな声ですね!それでですね、実は……その……お腹が空きました!!」
「「確かに!」」
俺達は食堂でお昼を食べた後図書館に向かった。
「で、どこに地図があるんだ?」
「……二階の端だったと思うよ」
「流石じゃのう!」
「えーと?何々――」
本にはロレスビュートの大まかな地図と気候が記されていた。
俺達はそれを見ながら計画を立てる。
「草原を抜けて、谷を抜けて、森を抜けた先にあるのがグレイス山みたいだね」
「スノーマウント・グレイス砦の辺りは夏でも雪が降ると書かれているな」
「この距離なら行きだけで速くても2日は掛かるのぉ!」
「この谷はちょっと迂回した方が良いんじゃないかなぁ?竜が出るみたいだし」
「………なら森の方を通れば良いんじゃないかな」
「私も賛成です。流石に竜と連戦するのはちょっと………」
「この間、どんなモンスターでもぶっ飛ばしてやりますよって言ってた人の言葉とは思えないんだが」
「それはそれです!!オルトルトだって竜くらい軽くひねるって言ってたじゃないですか!」
「そんなこと言ったかな?」
「あー!!汚いです!!」
「悪いが後にして貰えるか?」
「すみませんでしたぁ!」
「じゃあ谷は通らずに森を通るルートで行くってことで良いのか?」
「「異議なし」」
「よし!じゃあそれぞれ部屋に戻って明日に備えよう」
俺達はそれぞれ部屋に戻って明日の支度をする。
「北か……あの白魔術師の隊長のいる所か……。そういえばこの世界に来てからもう4ヶ月とちょっとか……長いなぁ……。おっとと、それより明日の支度をしなきゃな」
オルトルトは部屋に戻り支度を始める。
「さてさて、どの魔法道具を持って行くべきかな、あんまり持って行きすぎるのも良くないしな……最低限必要になるであろうものを持って行くとしよう」
それぞれが初めての学園外活動でウキウキしながら、あるいは起こるかもしれないハプニングを心配しながら一日を終えた。
「はい!皆さんおはようございます。もう皆さんお気づきかと思いますがこの学園外班別行動は危険です。一瞬の気の緩みが思わぬ事故に繋がります。くれぐれも油断は禁物です。皆さん!気をつけて行ってきて下さい!それでは班ごとに出発して下さい!」
「じゃあ出発しようか」
「全員準備は出来ているか?」
「……問題ないよ」
「私はいつでも大丈夫だよ!」
「勿論私も準備は整っていますよ」
「儂もだ」
「なら出発しよう」
俺達は校門へと向かう。あの門を潜るなんて入学前日以来だ。こんな時になって緊張してきた。
「ふわぁ………」
「眠そうだねオルトルト?」
「まあな……昨日あんまり寝ていなくてな」
「どうしたんですか?普段冷めてるオルトルトでもウキウキして眠れない事があるんですね!!」
「別にそういう訳では無いんだが………まあそういう事にしておこう」
「………張り切ってるね、ガリア」
「おうよ!久々にこのハルバードを使う時が来たんじゃからのう!」
「昨日使ってた気がするんだが?」
「気のせいじゃろう?」
「みんなみんな!校門を出たらどっちへ向かうの?」
「北だな」
「北ですね」
「そうじゃなくて!リュロイレンを出た後だよ!」
「昨日決めた通りだよ。草原を抜けて、森を通って砦に向かうんだ」
「モンスターとか出るのかな?」
「多分出ると思います」
「じゃあ気をつけなきゃね?」
校門を出て北の砦に向けて全班が出発する。どの班もやる気に満ち溢れていた。
「なんだか胸騒ぎがしますね。何も無ければ良いのですが」
教室に一人残ったキューハイトは静かに呟いた。




