研究室
「散らかってるから足元に気をつけてくれ」
「す、凄い!!!見たことも無い魔法具がいっぱいあります!!」
「アルトちゃんが興奮してるよ」
「確かに凄い量の道具だな」
「試作品ばかりだがな」
「こ、これはなんですか!!」
アルトが手にしていたのは青く輝く球体だった。
なんだか段々青くなっていっているのは気のせいだろうか?
「ちょっと待て!それは………!!」
「え?」
オルトルトが慌ててアルトから球体を取り上げようとするが時すでに遅し。
次の瞬間、俺の目に映ったのは氷漬けになったアルトの姿だった。
「ア、アルトちゃん!?」
「ま……またし……ても……氷……漬けに……」
「おい!大丈夫か!?」
「停止せよ《氷結球体》」
「はあ……はあ……死ぬかと思いました……」
「これ一体何なの?」
「実はな、夏に温度を調節する道具を作ろうとしたんだが冷却率を間違えたんだ」
「そしたら周りが凍るレベルになったと」
「そういう事だ。あんまり不用意に触るんじゃ――」
「こっちは何ですか!!」
「そっちも駄目だ!!その赤いのは……!」
「きゃあああああ!!?!」
「今度はアルトちゃんが燃えてる!?」
「停止せよ《燃焼球体》!全く……言ったそばから……」
「本当にすみませんでした………」
「まあ構わんよ。次から気をつけてくれればな」
(この部屋、だいぶ危険じゃないのか?)
その時部屋の片隅にあった紫色の球体が目に入った。
「オルトルト、あの紫色の球体は一体何なんだ?」
「あれか?ああ、丁度良かった。ちょっと触れて見てくれないか?」
「えっ?大丈夫かあれ?毒になったりしないだろうな?」
「あれは《識別の球体》と言ってな、能力の判別が出来るんだ。まあやりたくなければそれでも良いんだが」
「いや、やってみたいな」
「私もー!」
「ちょっと待っててくれ。起動せよ《識別の球体》」
オルトルトが魔法陣を描くと目の前の球体が輝き始める。まるで吸い込まれるような光だった。
「どっちから使うんだ?」
「はい!はーい!私から使ってみたい!」
「ミラリアか、じゃあ触れてみてくれ」
「分かった」
ミラリアが恐る恐る球体に触れると、球体の輝きが一層強くなった。それを見たオルトルトが再び魔法陣を展開すると球体の上に文章が浮かび上がった。
「なんだこの文字?読めないぞ」
「魔法文字だと思います。術者にしか読めない暗号文のような物です」
「ミラリアの能力は――狙撃者だな。遠距離攻撃の威力が上がるらしい」
「へえー!そんな事まで分かるんだ!」
「まあな」
「俺も良いか?」
「少し待っててくれ」
オルトルトはさっきと同じ手順を踏んで準備を整えた。
「大丈夫だ、触れてみてくれ」
「分かった」
さっきと同じように輝きが強くなり文字が浮かび上がる。だがオルトルトの様子がおかしい。
「どうした?」
「……なんだこれ………?」
「どうしたの?」
「………結論から言うと何の能力かよく分からんな。精神強化系の能力だと思うんだがイマイチ詳細が読み取れない」
「どういう事だ?」
「分からない、こんな事初めてだ。《識別の球体》の不調かも知れん。役に立たなくてすまん」
「大丈夫だ」
「他に何か気になる物はあるか?」
「あの結晶は何?」
「あれか?」
「そうそう」
ミラリアが指差した先にあったのは、大きな結晶であり、様々な色に変化していた。
「なんか神秘的だな」
「触れるなよ?」
「触れたらどうなるの?」
「吹き飛ぶ」
「マジかよ……そんな危険物置いといて大丈夫なのか?」
「多分問題ないだろ」
(絶対に駄目な気がする)
「その緑色の球体は何ですか?」
「これか?これはな《治療の球体》と言ってな多少の傷を治せるんだ」
「触れて見ても良いですか!」
「構わんが……健康な人が触れても何にもならんぞ?」
「それじゃあ失礼して……きゃあ!?」
アルトが触れた瞬間に《治療の球体》が黒色に変わった。それと同時にアルトの右肩の辺りが発光し始める。
「何これ!?!!」
「止まれ!《治療の球体》!!!」
オルトルトが全力で叫ぶと《治療の球体》は元の緑色に戻った。
「アルトちゃん!大丈夫!?」
「………はい、大丈夫です……」
「すまないアルト、故障していたようだ」
「アルト、さっき右肩が……」
「何でもありません!!!」
「ど、どうしたんだ!?」
「あっ!す、すみません、動揺してつい……」
「故障の影響だろうな、右肩もおそらくその影響だろう。本当にすまなかった」
「私、そろそろ帰ろうかな!」
「じゃあ俺も」
「なら私も帰ります」
「そうか、気をつけてな。今日は侵入者があったしな」
「忘れてた!」
「ええ!?狙われたのはミラリアちゃんですよね!?」
「さっきから色々あったし……」
「取り敢えず帰ろうか」
「じゃあな、また明日」
俺達3人はオルトルトの研究棟から出てそれぞれの寮へ向かった。
「あの右肩………」
3人が出て行った後オルトルトは一人部屋で考え込んでいた。




