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現代剣士の異世界放浪記  作者: 烏帽子
2/3

目覚める勇者

ゆっくりと投稿しますよ~


平次は普通のサラリーマンだった。

仕事場から家に帰る途中で事故に巻き込まれ、走馬灯の途中で神に会った。


神は自身の世界が外部の神にあらされ困り果てているという。

何でも、彼女の世界はまだできたばかりで格も低くまともに戦うのが難しいとの事だった。


「いいぜ、だれかが救われるなら」


平次は根っからの善人だった。

それも超が付くほどのお人よし。


『すまんのう。すまんのう。』


ニコニコしながら目の前で笑っている白い幼女はどう見ても人間に見える。

だがその中身は神だ。

そしてあたり一面何もない白い空間も神の力で作り出したものだという。

にわかには信じられないが、どうやら目の前の幼女が言うことは本当のようだ。

なぜなら自分の生まれ故郷や今の仕事、ドはまりしている趣味まで当てられてしまった上に目の前で微妙に浮いている。

文字通り、浮いている。


「それで、俺はどうすればいいんだ?

 何にもできない普通のサラリーマンだったんだぞ」


そうだ、俺は普通のサラリーマンだったはずだ。

こんな状態で異世界に言ったところで殺されるのは目に見えている。


『心配するでない。おぬしが一番使いやすく、熟知しておるやり方で我が世界を救ってもらいたいのじゃ。

 なに、敵をバッタバッタとなぎ倒せば良い。

 おぬし、”ゲーム”は得意であろう?』


幼女(神)の言い草にピンと来た。

俺が熟知していてかつ敵をバッタバッタ倒せるものなどそう多くは無い。

ましてやゲームだ。それなりに限られてくるってもんよ。


「そうか、ゲームで俺が得意なものだな」


『うむ。分かりが早くて助かるぞよ』


「俺にサッカーで世界を救えってんだな!」


ズコーと音が聞こえるくらい幼女(神)は盛大にこけた。


「野球の方だったか?」


『違うじゃろ!』


ガバっと起きた幼女(神)は怒りでだろうか髪が逆立っている。

こんなところでボケなくても良かろうに、と独り言が聞こえたがあえて無視した。


「分かっちゃいるが神様よう、俺はステルスゲームが得意なんだよ。

 当然剣を振り回すのも銃をぶっ放すのも好きだけど、やりこんだのはステルスゲームなんだ」


そのとおり、俺は某ステルスゲーム大好きなのだ。

確かに某白髪で大きな剣と銃で悪魔を斬る主人公のゲームも好きだが、圧倒的にこちらが好きだ。

敵の目をかいくぐり、行動を指定して先読みし出し抜く事こそが重要なのだ。

ホールドアップした後に出てくるアイテムなぞ二の次なのだ。


『おぬしもなかなか意地悪じゃの』


ぷくーと頬を膨らませる幼女(神)。こうやって見ているとかわいいだけの幼女なのだが後々怖そうなのでこの辺にしておく。


「分かっているって。”コードオブデステニー”だろ?」


コードオブデステニーとは俺がドハマリしていた異世界ファンタジーゲームだ。

主人公はさまざまな魔法や剣を使用して大陸を駆け巡るアクションゲーだ。

主人公キャラクターは職業を持ち、その職業ごとに使用できるエフェクトが異なる。

しかしこんな世界規模で見て全然プレイヤーのいないゲームをあえて押してくるとは....


『そうそう、それじゃ。やっと素直になってからに』


うりうりと指で突っついてくるが、幼女なので腹を突っつかれる形となっている。

ぶっちゃけくすぐったい。


「ひひひっ、やめろって!

 で、そのゲームの何を使えばいいんだよ」


くすぐってくる幼女(神)を回避しつつ本題に入る。


『そうじゃのー、しいて言えば全部じゃ。ついでにそなたの言ったゲームの特性は全て受け継ぐ事ができるぞ。

 どうじゃ、全部ほしいじゃろ』


えっへんと無い胸を張る幼女(神)。どうやっても俺にゲームまみれの能力で自分のところに来てほしいらしい。

その言葉にちょっと考えが浮かんだので黙っていると、見る見るしょんぼりとしてこちらを伺ってきた


『も、もしかして今更嫌になったのではないかの!?ダメじゃぞ!

 もうこちらに魂を寄せてるから戻せんのじゃ!』


小さな両手を握りながら力説してくる。なんと愛らしい姿なのか。

一生懸命ガチな状態なので庇護欲が掻き立てられる。

もとよりこの神様を放り出して行こうとは思わない。俺なんかでこの世界の役に立つなら死んでもかまわない。

てーか元の世界だと死亡扱いなんだけどな。


「もちろん、協力させてもらう。あと引き継ぐゲーム環境は2,3個で良いぞ。

 どうせそんなあったって使いこなせないしな」


平次はやるとなるととことん腰をすえてやるタイプだったがいかんせん1個にはまってしまうとほかの物に興味が向かなくなる。

単純に言えばやり方を忘れるのだ。

使っていれば思い出すが、その間レベルアップしたキャラクターにあわせて魔物も強くなるのでなれない内に殺されてしまう。

なのでやれる範囲も絞ったものとしておきたかった。


『清いのは魂だけではなくその心もであったか。

 うむ、承知した。

 ほかには無いかの?そろそろ転送が始まってしまうのでな』


平次の体がだんだんと透けてきていた。


「ああ、では......」







こうして平次はこの世界に召喚される事となった。

召喚先の王宮では何十年ぶりかの召喚で何人もの魔術師・神官・亜人が立ち会い、平次の姿を見るや一瞬ひるむも歓喜に沸いた。

今の装備は戦国時代の武士そのものだ。


(今は幼女(神)の言うとおりに事を進めるかね)


平次は召喚された時の装備をあらかじめ幼女(神)に伝えて自身が持つ最強装備にしてもらっていた。

加えてこちらの世界の装備も渡されていたが、収納されているところが異空間なのでどうにも実感がない。


平次は嬉々として迎え入れようとする王族に対し柔和な笑みで答えつつも、その胸に輝く紫のアミュレットを強く握り締めた。





幾何学模様がいたるところに刻まれた部屋に平次の眠る棺はあった。

その周囲には淡い光を放つ魔方陣が浮かび上がっており魔方陣は一定周期で変化している。

棺が一瞬光り輝いたかと思えば、次の瞬間大理石でできた棺の扉が開き、中から水色の液体があふれ出た。

その棺の中から平次がむくり、と起き上がる。

胸には紫のアミュレットが輝き、淡く輝き続けている。

平次の眠っていた棺の中にもう一つ真紅の宝玉が輝いている。その宝玉を手に取ると、ボロボロと散ってしまった。


「キール....すまない壊しちまった」


砕け散った宝玉にかつての朋友へ思いを馳せていると、不意に扉が開く音がした。

平次は全裸の状態で上半身だけ棺から出ている。間違いなく人が見たら卒倒するだろう。

どうやってこの説明をするかと考えつつも注意深く開いた扉の方を見ると懐かしい顔が見えた。

2人の胸元にある首飾りが一際大きく輝く。


「......」


平次が起きているのを確認すると、その2人は凄まじい勢いで飛びついてきた


「「お帰り!!!平次(様)!!!」」


目の前には2人の女性、一人は金髪に青い瞳、長い耳を持つ美しいエルフ、もう一人は褐色の肌に白銀の髪、金色の瞳を持つ妖艶な魔族だった。


「ああ、随分待たせたみたいだな....ありがとう二人とも....ありがとう...」


不意に平次の目から涙がこぼれる。なぜか溢れ出る涙は次々に頬を伝い落ちる。


「うぅっ.....なんで平次が泣くんだよぅ......私が...私が泣きたいのにっ!!!」


アリスは前見たときはお転婆な少女のイメージだったが、いまや威厳すら感じられるハイエルフへと成長していた。たぶん。

目はキリリとし、背も伸びた。凛とした雰囲気にますます磨きがかかった感じだ。

.....胸の事は触れないでおこう。

今は美しい顔が涙でぐちゃぐちゃになっているが、もう少ししたら落ち着くだろう。


「平次様.....懐かしゅうございます....」


こちらも負けずに成長したイルザは前よりも背も伸び、胸の成長もなかなかのようだ。

腰周りなど言葉にできない。長いまつげを涙にぬらし、そのか細い手は細かく震えている。

ぷるぷるとした唇からもれる吐息は艶かしく平次の胸を打つ。

しばらく二人が落ち着くまでそのまま抱き付かれておいた。

両手で彼女達を包んでいるが、2人が離すまいと強く抱きしめるので逃げられないといった状況だった。


落ち着いてきたところで2人が平次の股間を凝視してきたので何か着るものを要求した。


「...もうちょっとだけ...」


わけの分からない事を言い出したアリスはおいておき、いそいそとイルザから渡された衣服を纏う。

それは、平次がかつて愛用していた”獄炎ねずみの衣”だった。


「懐かしいものを....」


驚きながら平次はイルザを見るが、イルザはやさしく微笑むばかりだった。

このアイテムは実は平次からイルザに渡されたもので、火山の王と戦う時に装備していたものだ。

外見はいわゆる平安貴族の着物の象徴である文官束帯だが、その外皮は熱を一切通さないもので炎属性攻撃は全て無効になるチート装備である。

異世界におけるゲームアイテムの1つだったが、当時はイルザのレベルが低かったのでお守りとして渡していたものだった。

ゲーム時代の影響で着る者の性別により姿形が変化する優れものだ。


「ねぇねぇ!私はこれ!」


元気よくアリスが渡してきたものは


「おいおい、エルフ族の宝を簡単に渡すなよ」


エルフ族に伝わる腕輪で名を”デフォンサアブソル”といい相手の害意に反応して防御してくれる。

意識の外ですら防御でき、その能力は絶対防御。

これはエルフ族の秘宝で、その宝を求めて攻めてきた北の軍勢を退けたこともある。


「いいの!もう後悔したくない...絶対に離れないんだから。

 できる事は全部しておこうって決めたの」


言いながらも腕につけてくるアリスの目は真剣そのものだった。

そっか、と二人を抱き寄せる。

二人の鼻腔をくすぐるにおいを楽しみつつ平次は自分の考えを再度まとめなおした。

次こそは、二人と共に幸せな日常を求めるために。


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